ハラハラドキドキ!笑って泣ける!80年代王道のジュブナイルホラー「ドラキュリアン」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(591日目)
「ドラキュリアン」(1987)
フレッド・デッカー監督
◆あらすじ
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1987年、善の世界と悪の世界のバランスを司る石を手に入れるべく、ドラキュラ伯爵が100年ぶりに復活を果たす。狼男や半魚人、ミイラ男、フランケンシュタインと次々と仲間を復活させたドラキュラ伯爵は石があるとされるアメリカの田舎町に襲来。ドラキュラたちに偶然出会ってしまった怪物同好会のショーンたちはドラキュラたちが狙う石の存在や過去の出来事を知り、ヤツらを再び封印するべくドラキュラたちを迎え撃つ。
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これぞ80年代ど真ん中の王道ジュブナイルホラーではないでしょうか。そこまで知名度は高くありませんが、今でも根強い人気を誇るのがよく分かります。
お約束のベタな展開(もちろん良い意味で)あり、胸熱バトルあり、そして随所に光るコメディセンスや魅力たっぷりのオールドスタイルのモンスターたちが作品を彩り、「90分弱でこのボリューム?」と言いたくなるほどに満足感が得られる素晴らしい作品でした。
『クラスの隅っこにいるような少年少女たちが100年の眠りから復活したドラキュラたちと熱いバトルを繰り広げる』
というプロットだけでもう既にワクワクしますし、ホラーと言っても「ゴーストバスターズ」や「ビートルジュース」のようなコメディ要素多めの怖くないホラーなので、安心してご家族揃って見ていただけると思います。
ベタな展開は多いものの、逆にそれがすごく落ち着きます。シンプルにハラハラドキドキしながら笑って見られて最後はホロッとしてしまう映画って最近ないよなぁとなんだかエモい気持ちになる素晴らしい作品で、めちゃくちゃ面白かったです。
監督を務めたフレッド・デッカー氏は携わった作品は少ないものの、「ロボコップ3」(’92)の監督や「ザ•プレデター」(’18)では脚本を務めています。
ちなみに今作「ドラキュリアン」でデッカー氏と共同で脚本を担当したシェーン・ブラック氏は、先程の「ザ•プレデター」(’18)では監督と脚本を担当しており、デッカー氏と31年ぶりにタッグを復活させています。
特殊効果には「スター・ウォーズ」シリーズや「ゴーストバスターズ」でおなじみのリチャード・エドランド氏が、特殊メイク•モンスター造形には「プレデター」(’87)、「シザーハンズ」(’90)などのスタン・ウィンストン氏がそれぞれ担当しています。
現在、配信などはないようです。私は浜田山のTSUTAYAでレンタルさせていただきました。
◇100年ぶりに復活を果たしたドラキュラたちが狙うは善の力を凝縮した不思議な石。そんなドラキュラたちに遭遇した怪物同好会のショーンたち。
という、「子供たちVSモンスター」の構図の作品に外れなしです。しかもその子供たちがどちらかというとクラスの隅っこにいるような子だったり、イジメられていたり、年下だったり、妹だったりと一見バラバラなのにしっかりと友情が築かれているのがすごく良いです。
さらにそこに一匹狼の不良中学生•ルディが加わるというのもめちゃくちゃ良いんです。
小学生から見る中学生像そのままというか、すごく大人びていてちょっと怖いけど、怪物同好会に入るためにモンスターにまつわるクイズを真面目に答えたりとお茶目なところもありつつ、ライフル片手にモンスターと互角に渡り合うなど終始大活躍です。
また、まだ小さいからと仲間はずれにされがちなショーンの妹•フィービーはフランケンシュタインと仲良くなれる純粋な心の持ち主で、そのおませな性格や5歳児とは思えない頭の回転の早さでクライマックスでのモンスターたちとの戦いではMVP級の活躍を見せてくれます。
さらにはラストのフランケンシュタインとの別れがすごく切なくて、私は思わず泣いてしまいました。
ちなみにフランケンシュタイン役のトム・ヌーナン氏は多くの映画でモンスター役を務めていましたが、DVDに収録されたインタビューにて「モンスター役はこれが最後だ」と発言していました。
モンスターたちもすごく魅力的で、シンプルに強いドラキュラ、人間の時はただの優しいおじさんの狼男、可哀想過ぎる殺られ方をするミイラ男、着ぐるみ半魚人、ノロマだけど力持ちで心優しいフランケンシュタイン等など、派手さはないものの一切の無駄がありません。
ショーンたちとモンスターたちとのバトルも激アツで、銀の銃弾や木の杭が弱点などの王道要素は抑えつつ、狼男に金的攻撃が通じたり、ニンニクの代用でニンニク入りのピザをドラキュラの顔面に押し付ける等ちょいちょいギャグっぽいところのバランスがすごく良いです。
また、おデブちゃんのホレスが半魚人をライフルで撃退し、いじめっ子たちを見返したり、この騒動を経てショーンの両親の関係性が修復されたりするところもベタっちゃベタなんですけど大好きです。
ストーリーの根幹となる部分は割と情報が一気に出てきます。
◇たまたまショーンの母親が購入したドイツ語の古書を読み解くと、その不思議な石の存在や100年に一度善悪の均衡が崩れてその石が壊れやすくなること、その「100年に一度」が明日の夜であること、ドラキュラたちを倒すためには古書に書かれた呪文を処女に唱えさせて出現させた辺獄の穴に吸い込ませる必要があることなどを知る
と、情報過多になりそうではありますが、流れ的には自然ですし、すんなり入ってくるのでまったく気になりませんでした。正直なところ、この辺りがあんまり理解できていなくてもストーリーは全然追えるので大丈夫です。
このドイツ語の古書を読み解くにあたり、ショーンたちは近所に住む初老のドイツ人宅を訪ねます。無口だし怖い人かと思いきや、喋ってみると案外優しいし博識で、なんだったらモンスターたちとの戦いにまで参戦してくれます。第一印象で怖い人と勝手に決め付けてビビってるのも子供らしくて可愛いです。
ここで、おじさんの腕に数字の刺青があるのが分かるんですけども、本編では特にそれが何なのか言及されることはありません。おそらくおじさんはドイツ人ではなく、ホロコーストを免れたユダヤ人なんだと思われます。これが本編には直接関係は無いものの、物語の背景に厚みを持たせています。
こういう細かいところに監督や脚本家の思いが込められている作品って本当に素晴らしいですね。
そして、不思議な石とともに重要になってくるのが呪文を唱えるための処女の存在です。
何を隠そうショーンが手に入れた古書の著者であり、100年前にドラキュラたちを封印しようと試みたヴァン・ヘルシング博士も処女の女性に呪文を唱えさせるも、とあるハプニングで自分が辺獄の穴に吸い込まれるという大ポカをやらかしていたからこそ、100年経過した現在でショーンたちが事件に巻き込まれたというわけなんです。
ショーンたちも小学生なのでまだよく分からないながらも、とりあえずルディに「処女紹介して!」と言ったり、パトリックが自身の姉に対して「お姉ちゃんって処女?」と尋ねたり、このあたりのギャグパートもキレキレです。
結局、パトリックのお姉さんが自称処女だったので呪文を唱えてもらうも辺獄の穴は開かず、パトリックから「処女じゃないじゃん!」と詰め寄られた際には「同級生と練習でヤッただけだから、あれはノーカン」と言い張ったりとモンスターに囲まれてめちゃくちゃピンチの状況でそういった会話をするあたりも緊張と緩和の基礎を押さえていてとても面白かったです。
しかも最終的には『ショーンの妹•フィービー(5歳児)に呪文を唱えさせる』という、今であればフェミニスト過激派がブチギレそうな展開になりますが、その後の絶体絶命のピンチで助けに来てくれるフランケンシュタインとの絆を含め、流れとしては完璧なので目をつぶっていただきたいです。
ちなみに「レザーフェイス-悪魔のいけにえ-」の脚本を務めたセス・M•シェアウッド氏が今作「ドラキュリアン」のリブート版の詳細を明らかにしたそうですが、いつ頃公開なのかはまだ未定のようです。気長に待ちましょう。
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