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監督の変態性ダダ漏れ!アルジェント流“オペラ座の怪人”「オペラ座/血の喝采」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(601日目)

「オペラ座/血の喝采」(1987)
ダリオ・アルジェント監督

◆あらすじ
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不幸を招くという言い伝えのある舞台劇「マクベス」を前衛演出家のマークが手掛けることになった。しかし稽古中に主演女優が事故に遭い重傷を負う。新人女優ベティが代役に抜擢されて公演は成功を収めたが、彼女は何者かに付きまとわれるようになる。拘束され目蓋を閉じられないように目の下に針をはりつけられた彼女の前で、恋人が、関係者が、次々と容赦なく痛めつけられ…。(DMMTVより引用)
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“イタリアの鬼才”ダリオ・アルジェント監督が手掛けた※ジャッロホラー映画で、フランスの作家ガストン•ルルーの「オペラ座の怪人」をアルジェント節を混じえて自己流にアレンジした作品となっています。

※ジャッロとは
イタリアの20世紀の文学や映画のジャンルの一つ。フランスの幻想文学、クライム小説、ホラー小説、官能小説などに密接している作品のことで、スリラーなどと同義として扱われることもある。日本ではジャーロと呼ばれることも。

ダリオ・アルジェント監督
(ダリオ・アルジェントWikipediaより引用)

今までにもアルジェント監督作品は何作か見てきましたが、個人的には今作がぶっちぎりで好みでした。実際のところ製作費800万ドルに対して、興行収入は全国で72億ドル超えと爆発的な大ヒットを記録しており、今なお愛され続けている作品となっています。

現在DMMTVとLeminoにてレンタル(DMMTVでは440円)が可能です。ちなみに私は浜田山のTSUTAYAにてレンタルさせていただきました。

こんな素晴らしい祭りが開催されていたんですね。
行きたかったです。(映画.comより引用)

◇新進気鋭の演出家マークが手掛けるオペラ「マクベス」にてマクベス夫人を演じる予定だった大御所女優が本番の数時間前に交通事故に遭う。急遽代役として抜擢された新人のベティは日頃の努力の成果を遺憾なく発揮し、公演は大成功を収める。しかしそれからというもの、彼女は何者かに付きまとわれるようになり、演出助手を務める恋人、衣装スタッフ、マネージャーなど彼女の周囲の人物が次々と命を奪われていく。

という流れになっており、展開自体にそこまで意外性はなく『犯人が誰なのか?』という部分ではそこまでハラハラドキドキしませんでした。

しかし!

アルジェント監督の異常性や性癖みたいなものがダダ漏れになっている殺害描写は出色の出来で、そういうシーンが多いうえにその一つ一つのインパクトがべらぼうに強いため鮮烈に脳内に刻み込まれます。

特に有名なのが下記画像のように

『犯人がベティの周囲の人物を殺害する際、その殺害する様子をベティに見せつけるために、まずベティを拘束して目の下に数本の針をテープで貼り付けて目を閉じられなくする』

映画.comより引用

という常軌を逸したサディスティックな拷問はアルジェント監督自らの発案だそうで、自身の映画の恐怖シーンで観客があまりの怖さから目を逸らしてしまうことに以前から腹を立てていた監督は『目を逸らさないように目の下に針をテープで貼り付ける』という方法を冗談ではあるものの思いついていたそうです。その冗談を作品内で実現させてしまうのがまたアルジェント監督らしいですね。

しかもそういった殺戮シーンでは、作品のテイストには到底そぐわなそうなメタルミュージックが爆音で流れるという演出がバチボコにハマっており、視聴者の恐怖や緊張を煽っているかのようで私は感動すら覚えました。犯人が自分の手がかりとなるアクセサリーを取り出すために衣装さんの喉元を裁ちばさみで開くとことかもエグかったです。

映画.comより引用

そして、そういった殺害描写と同じくらい印象に残ったのが縦横無尽のカメラワークです。ドローンでも使っているのかと錯覚してしまうほどの斬新すぎる角度や高さ、そして動きは当然のことながらマネできるようなものではありません。またカラスの視点や眼球越しに映る映像も相当インパクトがありました。こういった撮影技術は同職の方からするとかなり勉強になるのではないでしょうか。

映画.comより引用

あと、『オペラの本番中に犯人を見つけ出す』という終盤のシーンが特に私は好きで、ぜひともまだ未視聴の方には見ていただきたいんですけども

『本物の生きたカラスを公演で使用する』という斬新な演出のためにカラス数十羽を劇場で世話し続けていたものの、中盤で犯人はベティの衣装を切り裂き、さらには檻を開けて暴れるカラスを数羽殺害していました。

このことから演出家のマークは「カラスは頭の良い鳥だから犯人の顔を覚えているはずだ!」と犯人をあぶり出すためのある作戦を思いつきます。

「ベティに対して異常なまでの執着を見せる犯人は必ずその日の公演にも来るはずだ」と踏んだマークは、まさに今ベティが圧巻の歌唱力を披露している本番中に突如壁を突き破りカラスの入った檻を舞台上に投入。全観客、オーケストラ、事情を知らないスタッフがポカンと口を開けている中、檻の中にいたスタッフがカラスを劇場内に解き放ちます。劇場内を飛び回るカラスたちはマークの踏んだ通り客席にいたとある人物を襲撃し、犯人をあぶり出すことに成功します。

このシーンが内容だけ見ると非常にかっこよくてもちろん好きなんですけども、実際には檻を開け放ってもカラスが全然外に出ないのでスタッフさんが足で蹴って物理的に出そうとするという映像的な詰めの甘さを露呈していますし、そもそも犯人をあぶり出すために1ステージを台無しにする演出家のマークも完全に頭おかしくて好きなんですよね。

めちゃくちゃプレイボーイで完全にベティのことを狙っており、ベティもベティで恋人が殺されたばかりだというのにマークにちょっと惹かれており、二人揃って舞台やお客様よりも犯人特定を優先するあたりがよくよく考えるとヤバいヤツらだよなぁと思いつつもシーン自体がめちゃくちゃ壮大なので非常に面白かったです。

あと、このシーンもそうなんですけど観劇に来た
お客さんの衣装にもぜひ注目していただきたいです。大勢いるにも関わらず、まったく衣装被りがなく、個性豊かなんです。いうなればエキストラなので手を抜こうと思えば抜けるところにも関わらず、とてつもないこだわりを感じられます。

映画.comより引用

そのあとのベティと犯人のやりとりでは、散々っぱら自分の犯行をベティに見せつけていた犯人がベティに目隠しをして「私を見ないでくれ」と印象的なセリフを言うのもすごい良かったですし、ラストの映像が美し過ぎるシーンなど語ろうと思えばいくらでも語れるくらい素晴らしい作品でした。オススメです!

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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