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タトゥーを入れても私はワタシだった

私の身体にはタトゥーが2つ入っている。
きっと今後も増えていくと思う。

それにしても私らしいと思うのが、服を着て見えるところではなく
きちんと隠せてしまう場所に入れているということ。
いつかタトゥーが何かの足かせにならないかと、心のどこかで引っかかっているんだろう。
最近ではワンポイントタトゥーが流行っているし可愛いデザインが多くて、
小さいものをポツポツ入れるのが個人的に良いなぁと思っている。

さて、私がタトゥーを入れた経緯だが、20歳になったら入れようとずっと思っていた。
だけど、ホスピタリティ業界で就職が決まりお客様の前に出て仕事をすることになり、私はなかなか入れることが出来なかったのだ。
(制服で隠れるところならバレないのに、この時の私はなんてイノセントなのっ)

そして、仕事を辞めて私の身体は晴れて自由に描かれる予定だったが、
コロナのお陰で目星をつけていたタトゥーショップが休業した。
もう入れるな!ということなのかと諦めていた。

月日が経つにつれてタトゥーのことなんて忘れかけていた。


「私、仕事やめてフリーで活動していくから」
私は自分を、そして自分の未来を信じて当時していた仕事を辞めた。

どうしても何者かになりたくて、もう「普通のOL」には耐えられなくて、
変わりたくて、頑張りたくて。

私は自分を信じて仕事を辞めた。
だけど、信じれば信じるほど失敗が怖くなる、負けたくない、
そんな気持ちが大きくなっていくばかりで私は私を見失った。
頑張れば頑張るほど理想の自分からかけ離れていく。
その現実だけが異常にリアルすぎて怖くなった。
私はフリーになる夢をいったん保留にすることに決めた。
(辞めたと言いきれないのが私の意地なのかもしれない)

それと同じタイミングで大好きだった彼と別れることにもなった。
それでも腐っていられない、と自分のお尻を叩き泣く暇なく私はまた就活を始めた。

すると海外拠点の企業に内定を貰い、全てが理にかなったような気がした。
あぁ、こうなる為の試練だったのね。

と、思っていた矢先にビザの関係で内定がキャンセル。
私は晴れて無職へと舞い戻った。今度はもう泣きわめくしかなかった。

この時、本当になにもかもがどうでも良くなった。
仕事、恋愛、夢、、、もう、なんでもいいやって。


「で、なんでタトゥー入れようと思ったんですか?」
機械が出すウィーンという音に、ブリーチした眉と鼻に付けたピアスがとても似合うタトゥーアーティストの高い声がかぶさる。

私はタトゥーショップのベッドで横になり答えた。
「なんか、自分の人生っていうか、運の風向きが変わればいいなって思って。最近いろいろ重なって結構きちゃってて」。

彼女は機械を止めることなく「そうですか」というと、会話はそこで終わってしまった。
私は肌の上で動く針の振動を感じながら、なんだかウトウトしてしまった。

どれくらい時間が経ったのか「お疲れ様でした」という声で現実に戻る。
施術してもらった足首を見ると、ずっと入れたかった蝶々と蓮の花と目が合った。


このタトゥーの後にもう一つタトゥーを入れたわけだが、
肝心なのは「タトゥーを入れて私の人生、運、そして私自身は変わったのか」というところ。

答えはもちろん「NO」だ。

タトゥーを数個入れたからといって急に有名人になったり、仕事が舞い込んできたり、理想の異性に出会ったり、そんなことは何一つなかった。
ただ、私自身+タトゥー2個。それだけだ。

だけど、タトゥーを見る度に私がタトゥーに込めた想いを思い出す。
なんせ20歳のころから決めていたデザインとそれに込めたモットーと想い。
それだけ温めてきたモノだからこそ、見るとなんだかほんのちょっとだけ前向きになるのだ。

タトゥーを入れて人生が急激に変わることなんて無かったけれど、
私はあの時に感じた想いを身体に刻み、そして何度も何度でも思い巡らす。

私も私の人生も、今でもそれなりにボロボロなのだが、さっきタトゥーを見て思い出した。


「時には自由に美しく飛び回る凛とした蝶々のように、
時には太い茎に大きな一輪の花を咲かせる堂々とした蓮のように」

なんだか泣きそうになった。

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