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2020.09.05 スカート10周年記念公演「真説・月光密造の夜」というSF

スカート、始動10周年を記念したライブが東京日本橋三井ホールで有観客で行われた。昼夜の2部構成、夜公演の配信をアーカイブ(9/20まで)で観た。


澤部渡(Vo/Gt)がステージインし、まずは1stアルバム『エス・オー・エス』より「ハル」を弾き語る。元々は4月に予定されていた公演ゆえの選曲だろう。過ぎ去りし春を想い出しているうちに、岩崎なおみ(Ba)、佐藤優介(Key)、佐久間裕太(Dr.)、シマダボーイ(per)が加わって同じく1stより「ゴウスツ」でじっくりとアンサンブルを重ねてゆく。そして「静かな夜がいい」で一気にグルーヴが花開いてゆく、、昂ってくる熱い気持ちを「視界良好」でカラッと爽やかな高揚感へと運んでゆく、、、とことん浸透度の高いオープニング。


MCではマスク姿の観客で埋め尽くされた佐久間が「こういうSFを見てるみたい」と語り、澤部は「スカートはなんてことない暮らしや少しのズレを歌ってきたつもりだけど、今は逆にこっち(歌の世界)がSFみたい。懐かしい近未来みたい」と続ける。ややウケと語っていたMCだけど非常に象徴的。「何回も裏に回ったSF」という前口上で歌われた「トワイライト」の光景はいつも以上に感傷的。クライシスに対峙するつもりのなかった、切ない風景が今より輝度高く見えてくる。"君がここにいない"ことを歌った後で「君がいるなら」を歌われると堪らないです。当たり前の中にある柔らかな祈りが鳴る。


12月に10周年記念のリテイクアルバム『アナザー・ストーリー』のリリースを予定しているだけあり、仕上がりきった演奏で初期曲が多く届けられていた。「月の器」の普遍性、「ストーリー」の凛々しさ、本編ラストを飾った「月光密造の夜」の軽妙さ、ずっと一貫したグッドメロディたち。リテイク版には入らない「ラジオのように」や「ポップソング」といったさりげない曲たちも等しく並べられる耐久性を思い知れる。最新ナンバー「駆ける」の力強さもずっしりくる。ことさらにエールをくれる曲というわけじゃないけれど、その決意の瞬間を切り取った描写にはどうしたって元気が湧くのよ。


アンコールでは4月に終曲として演奏する予定だった「遠い春」も披露。”春“という言葉が違うニュアンスを帯びている今、ちょっとどうかしてるくらい泣けて仕方なかった。スカートにはバンド然とした物語性ってあまり感じてなかったけれど、こうやって5人が寄り集まって良い音を紡いでいること、それ自体が劇的なことなのだと思う。ダブルアンコール「返信」での熱烈な演奏を観ると、バンドという形態がSFのように扱われるような未来なんてきっと来ないと確信できる。スカートはやはり日々における奇跡であって欲しい。平穏な夕暮れに沁みながら聴き続けたい。


<setlist>
1.ハル
2.ゴウスツ
3.静かな夜がいい
4.視界良好
-MC-
5.トワイライト
6.君がいるなら
7.ストーリーテラーになりたい
8.月の器
-MC-
9.魔女
10.ずっとつづく
-MC-
11.ラジオのように
12. CALL
13.ストーリー
-MC-
14.駆ける
15.回想
16.月光密造の夜
-encore-
17.遠い春
18.ポップソング
-double encore-
19.返信

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