11.30 赤い公園 FUYU TOUR 2019”Yo-Ho”@福岡DRUM SON

2018年5月の新ボーカルとして元アイドルネッサンスの石野理子が加入してから早1年5カ月。ようやくの新作となった「消えない-EP」をリリースしてのツアー。新体制では福岡初ワンマンであり、実に3年5カ月ぶりのワンマンライブ。いやぁ待ったぞ。しかし何ゆえかキャパをワンサイズダウンしており、ソールドアウトでみっちみち状態。もっと自信を持った会場選定でもいいのに！それくらい、未来の明るさが約束されたようなライブだった。

パステルカラーで柔らかな配色の衣装を身に纏った4人(特にギター津野米咲のフリルの多さに驚く)が出囃子に乗って登場。しっとりした歌い出しは、前体制ラストアルバム『熱唱サマー』の終曲「勇敢なこども」。長旅のひと休みを描いたこの曲を久しぶりに鳴らしているこのツアー。新音源の完成を祝福するかのような選曲だ。1番を歌い終わってのボーカル石野理子の「赤い公園、始めます！」の宣誓でぐっと掴まれ、ふわふわした心地で堪能した。

耳をつんざくようなギターとドラムの乱れ打ちで始まる「KOIKI」で一気にギアを上げていく。夏フェスでも聴けた新アレンジの「NOW ON AIR」、90秒で駆け抜ける「絶対的な関係」と過去の人気曲を次々と投下。感情開放型だった前ボーカル佐藤千明と比べると、石野理子は無造作な前髪の隙間から除くクールな瞳で冷静に空間を見ながら的確にアジテートしていくパフォーマンス。その対比が見えて面白いし、ミステリアスな魅力も戻ってきている。

この日はセットリスト21曲中、未発表の新曲が7曲。四つ打ちが気持ち良い「ジャンキー」や、客席に向けて石野がビューティ、ビューティと客席を指さす「BEAUTIFUL」など、ぱっと聴いてインパクトに残る楽曲が多かった。石野理子の声、存在感に引っ張られながら新曲が生まれていると直近のインタビューで語られていたがまさしく、彼女の持つ瑞々しさやどこか飄々とした魅力が行き届いていた。中でも「夜の公園」は早急に音源化を願う名曲！

同時に過去曲のリアレンジにも強く惹かれた。原曲はエレクトロな「いちご」は切ないギターポップに、星野源「SUN」的な意匠が施されていた「黄色い花」は装飾を取り払ってさっぱりと、サイケだった「ショートホープ」はメロウなファンクチューンに変貌。同期音を排除し、ギター、ベース、ドラムのみで再編曲された新verは、石野の凛とした歌を際立たせると同時に津野米咲のギタープレイがより一層唸りを上げる激しいものになっていた。

現場やYou Tube上でじわじわと定着してきた「消えない-EP」の楽曲も既に高い浸透度を誇っていた。「HEISEI」はノイジーな音を乗りこなすように流麗なメロディが光る温かな1曲で空気を緩ませる。タイトなビートで踊らせてくる「Highway Carbriolet」の抑揚は今のライブ構成に欠かせない曲になっているのだろう。そして「Yo-Ho」では津野がサンプラー、ドラム歌川はパッドを用いる初の編成が。この思い切った変化もまた新体制ならではだ。

「Yo-Ho」同様にパッドを使ったチルでドープな新曲も披露したり、と思えば底抜けに明るい「石」たる楽曲(こちらは11/27のYou Tube Liveで披露)もあり、各方向に伸びる赤い公園の個性が迸っていた。そんな彼女たちの本質を射抜く「カメレオン」の爆発力は格別。歌川菜穂の繰り出すばっつばつのビートが興奮を煽り、原曲ではブラスが占めるイントロを津野のギターが埋め尽くす激烈なアレンジ。石野の煽りもどんどん素が剥き出しになっていた。

赤い公園の現在地をタイトルで示すような「凛々爛々」はこの日のハイライトであった。オリジナルメンバー3人の嬉々とした笑顔が印象的で、そんな温かな空気の中でも力強くバンドを牽引しようとする石野理子の立ち姿というバランスがあまりにも美しく逞しかった。所信表明であった「消えない」で見せた、「私こそが赤い公園」とさえ言いたげな石野の目には覚悟と風格が漂い始めていた。ニューヒロインの成長を直に食らえる100分間だった。

11.30赤い公園 FUYU TOUR 2019”Yo-Ho”@福岡DRUM SON  セットリスト
1.勇敢なこども
2.KOIKI
3.NOW ON AIR
4.絶対的な関係
5.ジャンキー(新曲)
6.HEISEI
7.BEAUTIFUL
8.ジーザス(新曲)
9.いちご
10.夜の公園
11.黄色い花
12ランドリー
13.ショートホープ
14.未来(新曲)
15.Highway Cabriolet
16.Yo-Ho
17.石(新曲)
18.僕らのように(新曲)
19.カメレオン
20.凛々爛々
21.消えない

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