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2021.05.22 山口一郎(サカナクション)「NF OFFLINE FROM LIVING ROOM」

サカナクションのフロントマン山口一郎が、自宅兼事務所のリビングから届けるオンラインライブ。インスタライブの発展形という触れ込みで、最初は事務連絡をしているような山口の様子が映し出される。たっぷりと時間をかけたセッティングの間、こちらもすっかりリラックスしてしまう。挨拶代わりの「新宝島」は原曲の熱量をそっと涼ませた温かな決意の曲に。昨年8月にオンラインライブの金字塔を打ち立ててしまって以来の有料配信ライブだが、今回はアコースティック形式という全く異なるアプローチを仕掛けた。

元々アコースティック寄りの「セプテンバー」で更に感傷を募らせた後、青春の薫り漂う「夜の東側」も弾き語りで。原曲は軽快なエレクトロポップだがこちらも装いをがらりと変える。フォークソングへと大変身を遂げた「忘れられないの」に続いてこれまた原曲に忠実な「フクロウ」と、印象を変えて届けるものと、原曲の滋味を堪能できるもの、その両方をアコースティック1本と歌、そして最小限の照明だけで見せるミニマルなライブが続いていく。ところが、次なる「ネプトゥーヌス」でライブ自体が一変していく。

部屋一面が青い光で満たされ、ぽこぽことした泡の音とともに演奏中の山口の姿が揺蕩うように動いていく。部屋を深海に喩えて歌った楽曲ゆえ、その世界観を体現したかのような演出だ。これは対面ライブでは醸し出すことのできない説得力だろう。そして、山口一郎が別席に移動して始まったのは草刈愛美(Ba)がリミックスを担当した「ユリイカ」。アンビエントかつ曲の輪郭も曖昧な仕上がりのこの曲を普段のライブ同様、バックスクリーンの映像演出で魅せていく。一室とは思えないスケール感までも表現しているのだ。

「茶柱」のリミックスでは、音に呼応する映像が瞬き、リアルな部屋鳴りを再現するバイノーラルなサウンドというテクノロジックな演出でトリップ感溢れる時間を創出。「ナイロンの糸」のリミックスでは水面がゆらめくように画面にエフェクトがかかる。波の音に包み込まれているような心地になる没入感の高い時間に突入。ホーンパートから徐々に開放に向かっていく様は凄まじいカタルシスだった。また「シーラカンスと僕」ではAR技術によって部屋がバーチャル深海へと変貌。全然、普通の弾き語りライブじゃねえ!

総合演出:田中裕介、カメラマン:奥口睦、Rhizomatiks 真鍋大度、計良風太らの座組が2週間かければここまでのモノができる、感嘆せざるを得ない。結局今年もオンラインライブを更新するのはサカナクションだ、ということになってしまう。今回は何気ない一室から驚くべきライブ体験を届けてくれた。終盤、「白波トップウォーター」のリミックスではソファ後ろに出現した画面の中でメンバーも登場し、これがあくまでサカナクションのクリエイションであることを強調。ラストはオフボーカル音源にアコギと歌を載せる「グッドバイ」でエンドロールが流れシメ。この公演のリアルライブverが6月に控えているのだから期待せざるを得ない。どこがどうなっちゃうんだ。

<setlist>
1.新宝島
2.セプテンバー
3.夜の東側
4.忘れられないの
5.フクロウ
6.ネプトゥーヌス
7.ユリイカ
8.茶柱
9.ナイロンの糸
10.シーラカンスと僕
11.白波トップウォーター
12.グッドバイ


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