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2020.8.14 佐藤千亜妃「Streaming live "NIGHT PLANET”」


佐藤千亜妃、バンドセットでの初オンラインライブ。きのこ帝国を熱心に追っていたので、昨年リリースの1stアルバム『PLANET』の仕上がりには驚くばかりで、どんなツアーをするのだろうと思っていたのだから当然この代替公演は鑑賞。4人のバンドメンバーと向き合うセッティング、タイトル曲の「PLANET」から緩やかに開幕。夏夜にぴったりな涼しげでチルなムードを仕上げて、「Summer Gate」をプレイ。音源では打ち込み主体だが、ここでは絶品のグルーヴで再構築。特に超手練の種子田健が奏でるウッドベースの音があまりにも気持ち良い。じわじわと調子を高めながらの「Lovin'You」では、木下哲によるここぞ!なギターソロがフックを与える。適材適所で鳴る1音1音が粒立っていて美しい。佐藤のリラックスした様子も伝わってくる。

挨拶を挟んでの「You Make Me Happy」ではクラップを煽りソウルフルな歌声を聴かせる。音程を取ってハンドマイクで歌う姿など新鮮な振る舞いが多いが、今はこれが彼女の歌を最も健やかに届けるスタイルなのだろう。未発表曲「リナリア」は宗本康兵の鍵盤が光るポップスだ。ドラム神宮司治の在籍するレミオロメンや、ミスチルを彷彿とさせる王道の響きも今の彼女にはしっくり来る。メンバーに質問を交えながら紹介していく姿もとてもオープン。続く「橙ラプソディー」はコロナ禍でセッション動画が完成した楽曲。弾き語りも慈しみに満ちていた。アコギのままバンドと奏でた「転がるビー玉」もタイアップワークだが紛れもなく彼女の表現。彼女は様々な外的要素を経由し、自身の血肉とするシンガーだったと、ようやく最近気づいた。

不穏さと神秘さが漂う「面」、眩い恋慕がダンサンブルに煌めく「Spangle」など、『PLANET』はバリエーション豊富な楽曲が1つの特徴だが、このライブでは不思議なことに彼女の歌声と作られる流れによってするりと聴けてしまう(この日、演奏されなかった特に異端な「STAR」と「FAKE/romance」はまたの機会、、、)。佐藤が着席になって歌った「lak」の穏やかなムードを引き連れて、『PLANET』でも白眉な「空から落ちる星のように」へ。ここまで真ん中を飛んでいくバラードを彼女が、?と驚いたものだが今や嘆息するほかない名曲だと認知している。一切ブレないピッチにライブだということを忘れそう。きのこ帝国も時期によってアウトプットは多彩だったが、今の彼女は歌えないタイプの楽曲が存在しない境地にまで達しつつあるのかも。

「大キライ」では昂る感情をぶつけるように、「キスをする」では柔らかく包み込むように、全く異なるベクトルの楽曲がフィナーレを作り出した。しばしの余韻の後、佐藤1人で会場に戻り、アコギを抱える。「リクエストの多かった曲を、」と歌い出すのはきのこ帝国「春と修羅」!意外すぎる選曲に思わず声が出てしまった。きのこ帝国の中でもひときわ強い怨恨を叩きつけた曲、しかし佐藤はどこか優しげに歌う。そこに刻まれた怒りは消えないが振り返り方は少し違ってくるのだろう。年月を重ね、変化する表現者の姿を見た。ラストはきのこ帝国「夏の夜の街」でノスタルジーに浸らせてシメ。過去、現在、未来が交錯して編まれた80分。迷いなき笑顔が印象に残った。


-setlist-
1.PLANET
2.Summer Gate
3.Lovin’You
4.You Make Me Happy
5.リナリア
6.橙ラプソディー
7.転がるビー玉
8.面
9.Spangle
10.lak
11.空から落ちる星のように
12.大キライ
13.キスをする
-encore-
14.春と修羅
15.夏の夜の街


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