2020.12.23 東京カランコロン 解散ライブ「ラストのワンマ ん」
様々な種類のオンラインライブを観てきたものの、まさか解散ライブまで完全オンラインで観ることになるとは、、という寂しい気持ちを抱えつつ、その終幕の時を目撃できるというのはありがたいことでもある。2010年代を駆け抜けたJ-POPバンド・東京カランコロンの解散ライブ、感慨深く観た。
1曲目「いっせーの、せっ!」の時点で色々思い出す。初めてライブで観たのは2013年3月。広島のサーキットイベント、真裏のBIGMAMAとマンウィズに入りきれずに流れてきた客に「知らない音楽でも楽しめ!(要旨)」と叫んでたいちろー(Vo/Gt)に驚きと頼もしさを覚えたこと。「マリメッコとにらめっこ」もその時アンコールでやらなかったかな?なんてヘンな展開の曲!と思った記憶。「恋のマシンガン」辺りはUstream(懐かしさ)で配信企画も沢山やってたなぁとか。2010年代がフェスとロックバンドの時代だったとするならば、そことつかず離れずで妙なポップスを打ち出し続ける姿が面白くて大好きだったバンドだ。ワイルドバンチフェスでもCDJでも浮きまくってた笑。
「ユートピア」の歌詞は今日すごく理解できた気がする。<やめちゃうのもいい、やめなくたっていい 巻き戻せないから、日々は愛おしい>という優しい真理がこの夜を強く肯定する。「泣き虫ファイター」でせんせい(Vo/Key)がちょっと涙ぐんでる一幕はあったものの、幸福感を撒き散らしながらライブは進む。岡村ちゃん風の前口上で突入した「フォークダンスが踊れない」ではいつも通り、いちろー&せんせーのダンスタイムも。5人が向かい合うセッティングでもちゃんとやってくれた。これ最初観た時だいぶ衝撃だった。
こうやって聴いていくと、恐ろしいほどに楽曲のバリエーションが多い。それも、どうやって取り扱うんだ?というようなトリッキーな品ばかり。歪み切ったフレーズが引っ張る豪快な「三毒」、ノスタルジックメロウな「スパイス」、EDM直系のドロップで踊らす「ALL OVER」、、、時期によってやりたいことをやり尽くしてきたバンドのように思う。分かりやすさが求められがちだった2010年代のシーンで浮きまくった理由はこの曲たちを聴けば明白で、そりゃフェスで浮く。だけれどもその試行錯誤や迷う姿すらも愛おしく思えるバンドだ。「笑うドッペルゲンガー」で黒い気持ちを曝け出した先でも、どこまでもポップスバンドで在り続けたことはあまりに素敵だと思う。
この日のMCではこの5人が集まった経緯などがラフな空気の中で語られた。おいたん(Gt)がいちろーとのセッションを熱望して始動したこと、佐藤全部(Ba)はファンとして「すげえいいバンドだ」と思っていたこと、かみむー氏(Dr)が最初のリハで全曲を叩けるようになっていたこと、、珍妙なインパクトを残す面々の素朴な人となりが知れる瞬間もあった。創出される音はヘンテコでも、その志にはこの5人の音楽を届けたいという気分があったのだと納得する。名バラード「指でキスしよう」や、初期からある大好きな泣き曲「×ゲーム」だと、そのメロディと歌は常に開かれ続けてきたのだ。その側面をよりストレートに届けるようになった2017年以降のTALTO所属時代の楽曲が沢山披露されたのも嬉しかった。人気曲が初期やメジャー期に固まってないって実は凄いこと。「どういたしまして」、一度は生で聴きたかった!
「改めて歪なバンドだな」「極端な5人が合わさったらなんか良かったね、ってバンド」「よう10年続いたな、って」と口々に東京カランコロンという存在に言及しつつ、ライブは終盤へ。ラストアルバム収録の「リトルミスサンシャイン」の輝きは飛びぬけていた。明らかにこれまでのカランコロンの音像とは異なるさっぱりとした楽曲は次に期待せざるを得ないものだったが、今聴くとバンドとして長い旅のひと休みを歌っているようにも聴こえて泣けてしまう。更に個人的に出会いの1曲である「少女ジャンプ」の無上なる幸福感たるや。当時のインディーシーン、不朽の大名曲だと思う。この2曲はリリースに10年近い差があり、それぞれへの"好き"は全く別ベクトル。こんな、全く違う方向で好きな曲があるバンド、自分の中では彼らしかいないです。
「16のbeat」の<ややこしいアレンジ 難解なフレーズ 僕らにぴったりでしょ!>という歌詞変更には胸が熱い。いちろーが自身の青春時代聴いていた音楽への愛を綴った曲のはずだが、いつしかこうして東京カランコロンを思う歌へと変わったのだ。最後の曲の前にいちろーが「年取って気が向いたらやりましょう」とメンバーに微笑みかけていたのが印象深い。こういう約束の言葉、どうなったって今聞けて嬉しいなと思う。ラストは初めてのライブでも聴いた「ラブ・ミー・テンダー」。完全に泣いてしまって歌えなくなったいちろー、噛み締めるように歌うせんせい、没頭するように弾きまくるおいたん、晴れやかな顔の佐藤、黙々と叩き続けるかみむー氏、全員の表情があまりにも沁みた。<だって出会ったそれは消せない>というサビの歌詞はこの日のためにあったのかな、と。完全な形でない、2020年に解散を選んだからこその形での終幕。惜しい気持ちもあるが、最後の約束通り、いつかもう1度戻ってくるために必要なオンライン解散ライブだったのかもしれない。そう思わせて欲しいなぁ。消せない出会いを抱えて、いつかまた、と。
<setlist>
1.いっせーの、せっ!
2.恋のマシンガン
3.マリメッコとにらめっこ
-MC-
4.ユートピア
5.ビビディバビディ
6.泣き虫ファイター
7.フォークダンスが踊れない
8.三毒
-MC-
9.サヨナラバイバイマルチーズ
10.スパイス
11.カラフルカラフル
12.MUUDY
13.ALL OVER
14.笑うドッペルゲンガー
-MC-
15.指でキスしよう
16.×ゲーム
17.ギブミー
18.どういたしまして
-MC-
19.トーキョーダイブ
20.リトルミスサンシャイン
21.true!true!true!
22.少女ジャンプ
23.16のbeat
24.ラブ・ミー・テンダー
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