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Shhhで話題になった美しいものの数々

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クリエイティブディレクション&デザインの会社Shhhで話題になった「静謐で、美しいもの」
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記事一覧

5月のShhh - In between

5月のShhh - In between

『ビッグ・リトル・ファーム』というドキュメンタリー映画を観た。映画製作者/カメラマンである夫と、料理家の妻がロサンゼルスのアパートを引き払い、カルフォルニアの郊外にある200エーカー(東京ドーム約17個分)の土地に引っ越し、新規農業を始めるところから映画は始まる。

まるで絵本に出てくるような農場を夢見て引っ越した先は、長年の干ばつに曝され荒れ果てた砂の大地。2人はミミズコンポストを作り、被覆植物

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4月のShhh - Be on the lookout

4月のShhh - Be on the lookout

文庫になっていた『暇と退屈の倫理学』を読んだ。
結論の章で映画論や美術論についても著したフランスの哲学者ジル・ドゥルーズのエピソードが次のように紹介されている。映画や絵画が好きだったドゥルーズは「なぜあなたは毎週末、美術館に行ったり、映画館に行ったりするのか? その努力はいったいどこから来ているのか?」という質問に答えてこう言ったことがある「私は待ち構えているのだ」と。

著者は、その発言には「動

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3月のShhh - 手触りを求めて

3月のShhh - 手触りを求めて

アピチャッポン監督の映画『MEMORIA メモリア』の公開にあわせて、これまでに同氏が制作した短編映画『BLUE』『ASHES』『THE STATE OF THE WORLD』といった作品を続けて観た。素直に面白かったり感動するといった映画ではない。素描とも呼べるような、これらの小品によって監督は一体どのようなアイデアを試みていたのだろう。ときには荒々しくも生の質感が残る日記映画的な手法で、ときに

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2月のShhh - 酩酊するほどの美に触れて

2月のShhh - 酩酊するほどの美に触れて

ここ最近、頭の中で太極図のようなイメージが離れない。調和と乱調、豊穣と腐敗、静寂と狂騒の間の、絶妙なバランスを保ちながら存在する傑作に次々と出会ったからだと思う。あまりの美の凄まじさに酔ったのか、思い返すだけでも少しクラクラしてくる。

今月は日本の作品を筆頭に、そんな美学が最大限に現れた作品が集いました。Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで

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1月のShhh - 余白に誘われて

1月のShhh - 余白に誘われて

以前、何かの本で「余白とはWhite SpaceではなくImagination Spaceである。」と書かれていて、余白という言葉を一歩深く理解できたような気がした。例えば積み木のようなシンプルな玩具には「余白がある」といったときに先述の「Imagination Space」とはどのようなことかよく分かる。受け手の想像性を刺激することで、より能動的な鑑賞・体験へと誘い、作品と受け手の間で、何かを生

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12月のShhh - 可能性のあるところ

12月のShhh - 可能性のあるところ

映画『エルミタージュ幻想』や『太陽』で知られるロシアの映画監督アレクサンドル・ソクーロフと、フランス文学者・映画評論家の前田英樹氏との対話を記した書籍『ソクーロフとの対話 ― 魂の声、物質の夢』の中でソクーロフ監督が面白いことを言っている。正確な引用ではないが「石と水、どちらが永遠の象徴だと思うかと日本人に聞くと、ほとんどの人が水と答える。なぜでしょう不思議です。水は常に新しいものの象徴であって、

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11月のShhh - からだと本

11月のShhh - からだと本

風邪をひいてしまい、先月から咳が止まらなかった。疲れを回復したり、からだを癒すこと以上に大切なのは、そもそも風邪をひくほど疲れないようにすること。ボディケアの実用的な知識を期待して手にとった本から、足を運んだいくつかの映画まで。共通して見えた関心軸は「意識する」「貫く」といった信じる力だった。

Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで話題になっ

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10月のShhh - 希望はどこからやってくるのか

10月のShhh - 希望はどこからやってくるのか

『これからの「正義」の話をしよう』で知られるハーバード大学教授マイケル・サンデルは著書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』の結論の章で次のように書いている。

機会の平等に変わる唯一の選択肢は、不毛かつ抑圧的な成果の平等だと考えられがちだ。しかし、選択肢はほかにもある。広い意味での条件の平等である。それによって、巨万の富や栄誉ある地位には無縁の人でも、まともで尊厳ある暮らしができるようにするのだ

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9月のShhh - 愛をどうするか

9月のShhh - 愛をどうするか

よかれと思い何かを働きかけること。それは多かれ少なかれ相手に愛情をかけるということ。しかし、相手にとってそれが受け入れたいものかどうかはまた別の話。

例えば、隣り合う人が自分の全く知らない文化や価値観をもつ場合、その愛情はどう渡すことができるのだろう。その愛はどう表出させるとよいのだろう。今回は、そんな答えのないことに向き合う作品が集まりました。

Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいも

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8月のShhh - ただ居ることの演出法

8月のShhh - ただ居ることの演出法

当事者性やエンパシーという言葉を耳にすることが増えてきた昨今、8月は「ただそこに居る」という表現の仕方に触れられる作品に出会いました。

そこにあるがままを肯定するという態度や行動を、私たちが本当にできていることはいったいどのくらいあるのだろう。

Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで話題になった美しいものの数々」。今月もどうぞお楽しみくださ

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7月のShhh - 軽み(かろみ)の美学

7月のShhh - 軽み(かろみ)の美学

世に起きる様々な事象を「そういうもの」としてそのまま受けとめ味わう、軽みの美学。ぱっと見なんてことないもの、とるにたらないものに宿る美質を見つける――それは、深みを追求しつづけた先に超然として生まれたものなのかもしれません。

Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで話題になった美しいものの数々」。今月もどうぞお楽しみください。

安西水丸と、松

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6月のShhh - コレクティブから生まれる創造性

6月のShhh - コレクティブから生まれる創造性

シスターフッド、ブラザーフッド、フレンドシップ、メンバーシップ。人と人が心を寄せ合い、連帯すれば、創造性と勇気をもって前に未来に進みつづけることができる。

今回ピックアップした作品に通じるのは、そんな連帯やコレクティブ(有機的に形成された集団)のもつ力だったように思います。

Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで話題になった美しいものの数々

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5月のShhh - 「ひとり」を見る

5月のShhh - 「ひとり」を見る

Shhhの定例会で共有された「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで話題になった美しいものの数々」。

「‘わたし’的なもの」「関係性の深さと移ろい」と特集が続いてきました。今回ピックアップした作品全体に通じるのは、「ひとり」に目を向け、隣に座って耳を澄ますように心を寄せることの重要性。

今月もどうぞお楽しみください。そして、共感したりおすすめがありましたら、末尾にてコメ

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4月のShhh - 関係性の深さと移ろい

4月のShhh - 関係性の深さと移ろい

Shhhの定例会でクリエイティブディレクター重松とデザイナーの宇都宮が共有した「静謐で、美しいもの」を、月ごとに編集・公開する企画「Shhhで話題になった美しいものの数々」。

3月は「‘わたし’的なもの」「流転する世界と屹立する美」といったテーマが浮かび上がりました。4月のコンテンツで広く共通したのは「関係/関わり」。

今月も、美しいものの数々をお楽しみください。

🤫

“すく”ことと関わ

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