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【ショートストーリー】も書いてみた

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喜び、悲しみ、悩めるとき、そこにはショートストーリーがあったりなかったり🍀
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#恋愛

【ショートストーリー】39 等間隔

【ショートストーリー】39 等間隔

「空はこんなに青いのに、いつになったら私たちは外へ遊びに行けるんだろうね」

リコリスキャンディを口に含んだ君がつぶやく。

「例の伝染病が落ち着いたらかな」
ぼくは何となしに答えてみた。

「ねぇ、自由に外出できるならどこに行ってみたい?」
「そりゃあ、観覧車のあるドライブウェイなんか最高」
「うん、うん。私はね、鴨川を歩いて、洒落たカフェでゆっくり紅茶がいいかな」
「そういえば、君がくれた紅茶

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【ショートストーリー】27  星空を君はみたか

【ショートストーリー】27 星空を君はみたか

誰にもありそうな話だけれど、僕らの話も凡庸でありふれて、振り返れば赤面するような大学生の同棲生活だった。
 
君と出会ったのは共通のゼミだったね。

もう何を学んだかなんて全く覚えていないけれど、君がいつもギリギリに研究室にやって来る姿を思い出す。考えてみると、話す前から僕は君のことがすでに好きになっていたっけ。

今は花見なんて簡単には行けない世の中だけれど、当時はゼミ仲間で花見をしたね。

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【ショートストーリー】25  手紙

【ショートストーリー】25 手紙

ヤギは本当に紙を食べるんだろうか。

学校からの帰り道に、六年生の碧斗はクラスの美山理沙から手渡された手紙を空にかざし呟いた。

白い封筒にはシルバーの縁取りがされている。
宛名はない。

四年生にクラスの女子にもらったラブレターとは違った雰囲気だと碧斗は思った。

隣の席の美山は帰りの会の後、こっそり机の下に忍ばせながら「一人で見てね」と呟いた。長い髪からふわっとシャンプーの香りがして、なんだか

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