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せとものについて話しましょう

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「せともの」の語源は「瀬戸で作られたり焼き物」。 その瀬戸市で代々陶器屋をやっています。 瀬戸焼について知ってほしいこと、楽しむためのヒント、瀬戸の街のことなど、ぼちぼち書い…
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#01 初めまして せとものについて話しましょう

#01 初めまして せとものについて話しましょう

note始めます

 2006年からメールマガジンを続けてきました。せともののこと瀬戸のことなど、毎週1回土曜日配信「瀬戸だより」として、17年間で870回を超す配信を行ってきました。我ながらよく続いたものだと感心します。
 ひとまず、当初書きたかったこと、やりたかったことは済んだんじゃないかと思い、そのメールマガジンは定期配信を終了することにしました。残された大量の過去の文章は何かの形で活かしな

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#32 皿をコンコン…でわかること

#32 皿をコンコン…でわかること

 よくテレビで骨董の鑑定人が古陶器を指でコンコンっとたたいているところをご覧になったことがあると思います。もっと具体的にいうと「開運!なんでも鑑定団」で、中島誠之助さんとかがやっているコンコンのことです。
  一般には「磁器のものは高い音がして、陶器など土物は低い音がする」と知られていると思います。でも一流の鑑定人がたたかなくては磁器か陶器か区別がつかない…なんてはずはありません。では、あれはいっ

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#31 瀬戸焼でテーブルコーディネート

#31 瀬戸焼でテーブルコーディネート

 前回(#30)も公募展の話でしたが今回もコンテストの募集の話題。

 テーブルコーディネートという器の楽しみ方があります(さらっと書いていますが私は数年前まで知らない世界でした)。

 テーマに沿って器などをテーブルに並べて食卓を提案する……という感じに自分は理解しています。そこに実際に料理がなくても、見た人がそれぞれに自分のイメージの中で盛り付けて楽しめます。
 よく料理人の方が「んーー、いい

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#30 瀬戸・藤四郎トリエンナーレ

#30 瀬戸・藤四郎トリエンナーレ

 瀬戸の街を歩いていると「瀬戸・藤四郎トリエンナーレ」作品の募集要項が置かれているのを見かけるようになりました。
 瀬戸の陶祖・藤四郎の名が冠された公募展は今回が5回目。トリエンナーレということですので3年に1回行われています。

 今も陶芸の公募展も多くあります。以前はもっといっぱいありました。失われた10年とか20年とか言われる不景気でずいぶん減ったという印象を個人的には感じています。そう考え

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#29 織部は風呂につかる

#29 織部は風呂につかる

 織部というのは瀬戸焼や美濃焼を代表する釉薬・技法なのはご存知の通りです。
 銅を含む釉薬を酸化焼成して得られる緑色の落ち着いた色調です。とても人気がある釉ですが、意外と知られていないのが織部は窯から出て、すぐに完成とはいかないのです。

 通常の釉薬の陶器は窯から出れば完成というパターンです(もちろん、出してすぐは熱くて持てませんが)。普段皆さんが手にする器の状態と変わりありません。ところが織部

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#28 織部の緑って何色あんねん?

#28 織部の緑って何色あんねん?

 織部って古田織部の「織部好み」が始まりだったって書きました。今は銅の緑色の釉薬を織部釉と呼んでいます。

 「白って200色あんねん」はアンミカさんの発言ですが、色というものの奥深さを言い表した見事な一言だと思います。
 織部好みを代表するこの緑の釉薬、織部釉ですが、じゃあみんな同じ緑かと言えば作り手によって違って同じではありません。
 不透明な重い緑だったり、明るい緑だったり、流れで濃淡が出や

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#27 年パスを買おうかいつも悩む

#27 年パスを買おうかいつも悩む

 ゴールデンウイークはいかがでしたか?

 近場で豊田市美術館に出掛けて来ました。「未完の始まりー未来のヴンダーカンマー」。展示のタイトルを見てもよくわからず、行くのを先送りにしていましたが、なんとかギリギリ見に行けました(5月6日で終了)。ヴンダーカンマー(驚異の部屋)は15世紀のヨーロッパで世界中のめずらしいもの、不思議なものを集めた部屋。美術館・博物館の原型とされています。
 豊田市美術館と

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#26 「織部」って織部さんの好みです

#26 「織部」って織部さんの好みです

 さて、織部と言えば瀬戸焼や美濃焼を代表する人気の釉薬です(唐突ですが異論はないとは思います)。
 緑色の釉。銅を含む釉を酸化焼成することで得られる色合いです。
 前回書いた春岱の織部もとてもステキでした。

 織部……もともとは釉というよりも織部好みの器全体を指していたようです。織部好み……この織部というのは戦国大名、古田織部のこと。武人であり、茶人であり、利休の高弟。その織部好みというスタイル

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#25 なんと春岱展は約60年ぶりだって!

#25 なんと春岱展は約60年ぶりだって!

 土曜日から始まった瀬戸市美術館の「春岱 稀代の名工」展を見てきました(6月2日まで)。

 春岱は幕末から明治に活躍した瀬戸の名工として知られる方。尾張藩の御窯屋の家に生まれ、明治10年に没するまで製作を行っています。その作品は「瀬戸焼」の歴史を振り返るような展示では必ず見かけます。

 当店を始めた祖父は古陶器にとても目の効く人だったようです。戦後独立した当時は骨董商に近いような仕事だったよう

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#24 陶祖まつり。陶彦社まで案内しましょうか。

#24 陶祖まつり。陶彦社まで案内しましょうか。

 4月は「せと陶祖まつり」となります(令和6年は20日21日の土日となります。
 陶祖というのは加藤四郎左衛門景正で鎌倉時代に瀬戸に中国の進んだ製陶技術を伝えたとされる人です。瀬戸では藤四郎と呼ばれたりもします。
 その陶祖伝説については昨年ここに書きました。

 陶祖藤四郎は神さまとして瀬戸の中心「深川神社 陶彦社」に祀られています。瀬戸でせとものを扱っているからには陶祖まつりにここに参拝せずに

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#23 「となりのセトシ」…にも来てね。

#23 「となりのセトシ」…にも来てね。

 今週はジブリパークが全面開業するということで(令和6年3月16日)、先週あたりから地元テレビでもその話題が多くなっているようです。部分的なオープンからやっと全体が完成したということです。

 部分オープン以来、瀬戸市も尾張瀬戸駅周辺ではジブリパーク関連の飾り付けなども行われています。と言っても、ジブリパーク自体は瀬戸市のすぐ隣、長久手市の愛・地球博記念公園内にあって瀬戸にはないわけです。そこで「

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#22 わかりやすく釉薬について語ってみたい…あっ、色つけるの忘れてた(4)

#22 わかりやすく釉薬について語ってみたい…あっ、色つけるの忘れてた(4)

 釉薬について何度か書きました。

 ふと、気がつきました。釉に色を着けるのを忘れていました。
 染付の磁器に掛けられている透明な釉薬。釉薬の下に呉須で描かれた絵がきれいに見えます。でも多くの陶器に施されているのは何らかの「色」が着けられています。
 古くから、赤津七釉と呼ばれる灰釉、鉄釉、織部、黄瀬戸、志野、御深井、古瀬戸(赤津地区は瀬戸でも作家や窯元が多い地区)などはもちろん、他にも瀬戸は釉薬

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#21 今年も「おこしもの」を作った。

#21 今年も「おこしもの」を作った。

 1ヶ月以上の会期があった「陶のまち 瀬戸のお雛めぐり」のイベントもいよいよ今週末までとなります。

 瀬戸のひな祭りというと「おこしもの」をお供えする習慣があります。これは瀬戸周辺になるのでしょうか。うちの母は同じ愛知県内でも三河の出身ですが、まったく知らなかったようです。
 おこしものという名前は型を使って形を作る作業を作業を「型起こし」と呼ぶので、それから来ているかと思います。
 具体的な作

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#20 まだ寒いけど、瀬戸の「お雛めぐり」は始まりました。

#20 まだ寒いけど、瀬戸の「お雛めぐり」は始まりました。

 今週、尾張瀬戸駅前のパルティせとに福よせ雛の展示を見つけました。
 福よせ雛は役目を終えた雛人形を使って、いろいろな日常風景を表現するものです。自由で楽しそうなお雛飾りですね。毎年この季節に瀬戸のパルティせとに展示されます……えっ、なぜって?それは瀬戸の街が雛であふれる「第23回陶のまち瀬戸のお雛めぐり」が開催されているからですよ。

 毎年、1月の末から3月のひな祭りまでの期間(令和6年は1月

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