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#アート

[理系による「アート」考察] 物理ミクロ世界を描く仏教曼荼羅図

仏教美術にある曼荼羅ですが、仏様の世界や悟りの境地を描いたもの、の意味のようですが、一般的に見かけるのは、中心の仏から円上、もしくは四角上に広がる仏の羅列を描いたものになります。 ゴリゴリ理系からすると、これらの絵は、美術的鑑賞対象ではなく、原子の電子配置、および原子の結合図にしか見えないのですよね。 原子核が発見されたのは1911年なのですが、東洋哲学である仏教にて曼荼羅図が描かれていたのはもちろんそれより前であることより、仏教にて悟りを開いた高僧は実はミクロ世界である

岡本太郎の原稿がよみがえる新刊『誰だって芸術家』制作の裏側!

(以下、本書より) 芸術はマニアの占有物ではないし、スノッブの教養でもない。ビジネスの商材でもなければ、金庫に溜め込む資産でもない。芸術とはあくまで民衆(ピープル)のものであり、無償無条件でエネルギーを放射し続ける太陽のようなものであって、日々のくらしのなかに生きるものだ。 そう考える岡本太郎は、膨大な作品群を制作する傍らで、数多くの著作を社会に送り出しました。芸術論、文化論、人生論、社会論……、ジャンルはさまざまなれど、想定読者はあくまで市井の人々。だからいずれも平易な

未知なるカオスに向かって走れ

先日、探検家・作家の角幡唯介さんと大船のポルべニールブックストアで「越境」をテーマに公開対談した。私の文庫『空をゆく巨人』の解説を角幡さんに書いていただき、それがきっかけに今回の対談が実現。 (アーカイブは7月31日まで見られるそう) ぶっちゃけた話をしてしまうと、わたしは、角幡本だったらノンフィクションだろうとエッセイだろうが書評だろが、愚直なまでに全て読んできました、ええ、そうなんです、という熱心なファンであり、ファンが憧れの作家と対談して良いのか、マジでそんなのいいの

原始美術ってなに? オーリニャック、ラスコー、アルタミラなどの洞窟絵画と造形の特徴

と、まぁいきなり酔っ払ってみましたが、私は真剣に「西洋美術って難しく書かれすぎじゃねぇか」と思っとりますよ。なんかもう「大谷翔平ばりにワインドアップで振りかぶって書きました!」みたいなね。重い。もうどの書籍も官僚がしゃべっているような文章で、イラストたっぷりのかわいい本でも、ちょっと小難しく見えちゃいますよね。ちいかわの横で、岸田首相がしゃべってんですよね。 この連載ではもっとおしゃべりするような感覚で、でもしっかり内容がある感じでやっていきます。「大学の講義」というよりは

暮らしの中にこそ、アートは必要だ。

アートを買える場所が増えたなと思う。服屋さんやインテリアショップ・カフェ・書店でも展示・販売しているのを目にするし、ウェブで買えるサイトも増えていて、手に入れやすくなりました。 最近、雑誌などメディアでアート特集が組まれたり、スターバックスで若手アーティストのアートが買える店が出来たり。特に現代アートが面白い。 私は5年ほど前から、インテリアに色でアクセントを入れるのを目的に「買える」アートをみて回るようになりました。その中でも一度にたくさんのアートに出逢えるアートフェア

再開館の国立西洋美術館へ。松方コレクションに、改めて感謝を

 上野・国立西洋美術館のリニューアルオープン記念展「自然と人のダイアローグ」(9月11日まで)を鑑賞してきた。ドイツのフォルクヴァング美術館の協力を得て、印象派、ポスト印象派、ドイツロマン主義~現代までの100点超が展示されている。常設展で観られる作品も多いため迷っていたのだけれど、行ってよかったというのが感想だ。 ■画家が捉えた自然の美しさに浸る  はじまりは、ブーダンから。「モネの先生・・・」というささやきがあちこちから漏れ聞こえてきて(ブーダンは、若き日のモネに屋外

マテリアルに新しい意味を見出し、時の流れを緩やかにする

240 cm 四方のガラスでできたキューブが暗闇に浮かび上がっている。小さなガラスが組み合わされ、一つ一つのガラスには植物標本が入っているかのよう。黒い床に映り込んで無限の広がりを感じます。2022年5月13日〜15日に恵比寿で行われたMEET YOUR ART FESTIVAL 2022で展示された佐々木類さんの『植物の記憶– Subtle Intimacy-』という作品です。 ガラスを記憶を刻むマテリアルに 『植物の記憶– Subtle Intimacy-』は、ガラス

歴史の中に埋もれた事象を発掘するアート

絵の描かれていない大きなボードが、美術館の壁に所狭しと掛けられています。Tokyo Contemporary Art Award (TCAA) 2020-2022 受賞記念展の藤井 光さんの展示です。 日本人が観ることのできなかった「日本の戦争美術展」 1946年8月21日から9月2日まで、上野の東京都美術館で「日本の戦争美術展」という展覧会が開かれました。アメリカ合衆国太平洋陸軍が主催した展覧会で、占領軍関係者のみが入ることのできる展覧会でした。ここで展示されたのは、藤

絵画の歴史 その1ラスコー壁画からルネサンス期まで

ちょっとアートを考えるにあたって、そもそも絵画の歴史を少し振返っておきたいと思います。そもそも過去はどのような思いでアート作品を作成してきたのかとか、アートに何が求められてきたのかとか、技術革新がアートにどのような影響を与えてきたのかなどを考えることは、自分の創作活動にも役立つような気もします。 最も古いアートはラスコー壁画?世界史の初めに勉強する人類(旧人類・ネアンデルタール人)の誕生が50万年前ぐらいと言われていますので、そのころから気が赴くままに落書きとかしていたと思

アートとハート

こんにちは、詩・絵書きとオンラインカウンセラーをやっている、入透(いりす)と申します! この記事では、私が運営するATELIER SUIの活動内容と、その目的についてまとめています。 はじまりは思いつきATELIER SUI(アトリエ スイ)は、もともと私が個人的に作品をまとめておくためにひっそり作った、作品庫のようなサイトでした。 そして、この作品庫と同時運営していたのが、オンラインカウンセリングルームAIRです。設立当初は認知行動療法を中心とした、言葉でのやりとりがメ

ポール・チャンと地政学と反戦活動

ポール・チャンと地政学と反戦活動ポール・チャン(Paul Chan,1973- /香港生まれのニューヨーク在住の現代アートのアーティスト、作家・出版) ポール・チャンのアートワークはそのポール・チャンのアートワークは、地政学、グローバリゼーション、それに対応する政治情勢、戦争文書、暴力、逸脱、ポルノ、言語、ニューメディアなどのトピックに関係している。 (註)地政学:地理学と政治学を合わせて、そのリスク要因等を分析する。 新たな視覚的言語Paul Chanの映像インスタレー

これから先の『音楽作品』の価値

音楽の歴史を事細かに調べて突き詰めるうちに、ますます疑問が募っていった。 過去の作品を網羅することに意味があるのか。どこまで網羅するのが正しいのか。作品が残るというのはどういうことなのか。それは価値があることなのか。 クラシック作品は録音メディアが無い時代に譜面や演奏会というシステムで選ばれたものが残された。録音メディアが誕生し、同時にクラシックが前衛化した20世紀後半からは、替わってポピュラーのレコードによる作品が残されたが、21世紀初頭の今それらを網羅する必要がある理

ヤンキーの時代|10年代とは何だったのか

未来の歴史からふりかえった時、"10年代"は時代の決定的な転換点とみなされるだろう。 それをより具体的にいうならば「メディアの変容」と表現したくなる、インターネット空間での大きな変化のうねりである。 インターネットが「時代の欲求」の先端的な表現媒体である点は、10年前と今でも変わらない。システムの原理も変わっていない。 変わったのは、ネットの画面越しに立ち現れる「虚像」が、見る者/配信する者の「今、ここ」と、より積極的に密接にリンクし始めたことだ。 SNSや動画配信は

間と余白

日本ならではの美意識を語るとき、侘び寂びと同じように、「間/Ma」と「余白/Yohaku」という言葉も欠かせないものです。「間」は、主に演劇や音楽、対人関係の中で意識されるもので、「余白」は美術やデザインのような平面的なものにおいて、頻繁に用いられる言葉です。では、これらの意識は、どのように日本で育ったのでしょうか。 何もないことは豊穣「間」や「余白」という意識には、仏教の「無」や「空」という概念が元にあると考えられます。キリスト教では、「無」とは「有」の対義語で、ただ何も