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【ライブラリ】notes

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記事一覧

つくることを通したリサーチへ —感覚で探る人類学的リサーチとデザイン プログラム紹介(Poietica 奥田 宥聡)

はじめに この記事は、2024年11月2-4日に行う、合同会社メッシュワークとPoieticaの協働プログラム(共催:山梨県立大学)『複雑さを捉える—感覚で探る人類学的リサーチとデザイン』の背景についてお伝えするものです。プログラムへの参加を悩んでいる方はぜひお読みいただいて考える材料にしてもらえればと思います! つくることとリサーチの関係性 私たち合同会社Poieticaは「つくることを通して新たな知を産みだす」というメッセージを掲げて活動するデザインスタジオです。

国立国会図書館デジタルコレクション個人送信サービスで読む歴史学書籍【西洋史】

 国立国会図書館デジタルコレクション個人送信サービスで読むことのできる日本の西洋史家の一覧をまとめた。 1950年代から1970年代頃までに活躍した西洋史学者が中心。 共著・共編著などの場合は、筆頭者あるいは重要とみなした著者の項目に分類した。 「こぼれ話」や「雑学」系の書籍、教科書・学習参考書類はおおむね割愛した。史論やエッセイについては含めてある。 無数にある唯物史観的な著作の多くは割愛した。 随時、追加する(初版は2024/06/01時点、2024/06/02

『悪は存在しない』と対称性の論理――下書きめいた小論

Ⅰ濱口竜介の監督最新作『悪は存在しない』(2023)は、すでにその特殊な製作の経緯が明かされているように、長編の前作『ドライブ・マイ・カー』(2021)で音楽を担当した石橋英子のソロライブパフォーマンスのための映像(こちらは『GIFT』というもっと尺の短いサイレント映像となった)が元になって、またそれと並行して制作された。そして、劇映画としての本作の物語は、信州の奥深い集落「水挽町」で暮らす父娘を主人公に、その集落に東京の芸能事務所が「グランピング」(ホテル施設を備えるキャン

#1 谷川嘉浩『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)の紹介をしていきます

こんにちは、京都在住で職業哲学者をやっている谷川といいます。 この度、学位論文をもとにした『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)を上梓します。2021年2月19日、発売予定です。 この本について紹介していくマガジンをぼちぼち書いていこうと思います。 1. 本の基本情報以下、基本情報と内容紹介です。 「過去を取り消せないが、未来には働きかけられる」。他者と状況から学びつつ思考したデューイは、保守的かつリベラルな未来志向の哲学を構想した。

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ローカルコミュニティガイド!らこって2024年5月号より活動をご紹介!

NPO法人市民協働ネットワーク長岡と、長岡市と協働で運営する「ながおか市民協働センター」では、地域で活動する人や団体を紹介する「ながおか市民活動情報誌 らこって」(A3サイズ2つ折り)を毎月発行しています。 この番組では「らこって」の取材・編集をしているコーディネーターが、活動する人たちの魅力や、取材のこぼれ話などを語ります。 ローカルで生き生きと活動する人々や団体の活躍が広く世の中に知られるようになることを願っています! <らこって2024年5月号目次> 活動ピックア

SDGsは、誰がどうやって決めたのか? 【SDGsとは一体、何だったのか?】第4回

SDGsは「欧米の白人たち」が決めた?  「SDGsは "欧米の白人" が決めたもの」という言説がある。  それって、本当なのだろうか?  今回は「SDGsは、誰がどうやって決めたのか?」という3つ目の問いについて、策定時の経緯をふりかえりながら考えていくことにしよう。  とくにクローズアップするのは、OWG(オープンワーキンググループ)と、政府間交渉の過程だ。  両者のなかでどのような議論がもちあがったのかをみることで、SDGsへの理解を深めていきたい。 策定のプロセ

国立国会図書館デジタルコレクション個人送信サービスで読む歴史学書籍【西洋史・海外翻訳書】

@MasakiUetaさんを承け、歴史学系の書籍を作成してみました。 このほど新規に搭載される以前からあったものも含みます。 おおむね20世紀後半以降の著作が中心。 随時追加します(2024/05/21。2024/06/05 トインビーなどを追加。) アードーズ,リチャード リチャード・アードーズ 著 ほか『大いなる酒場 : ウエスタンの文化史』,晶文社,1984.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1218

MDGsは、SDGsと本当はどういう関係にあるのか? 【SDGsとは一体、何だったのか?】第3回・後編

コロンビアはなぜSDGsを提唱したか  前回紹介したように、SDGsを提唱したのはコロンビアの外交官、ポーラ・カバジェロだ。  ことの始まりは2010年にさかのぼる。  国連がMDGsの時期開発目標を策定するため、リオ+20(国連持続可能な開発会議)という国際会議を2012年6月に開催することを決めた。  その準備のため2010年秋、各国政府に国連調査団がおくられた。これに対応するため、コロンビア政府が外務省経済社会環境局の新局長に任命したのが、カバジェロだった。彼女は「持

【ニッポンの世界史】#36 世界史が語る国際政治や文明の衰亡:高坂正堯と塩野七生

世界史化する時事論壇  1980年代以降、論壇誌や政府関係の刊行物、ビジネス系の雑誌に引っ張りだことなった女性がいます。  小説家・塩野七生(1937〜)です。  たとえば1989年に安田信託銀行調査部の発行した刊行物に塩野のインタビューが載っています。    もちろん塩野は国際政治の専門家ではありませんし、歴史学を修めたわけでもありません(先行は池田理代子とおなじく哲学)。本人がアイデンティティとするように、彼女は西洋をモチーフとする物語を編む作家です。  少し前の時代

東洋と西洋の狭間で――#6 ルイーズ・アードリック『赤いオープンカー』(1)

僕が「人文系ワナビー」だったころ  今ここではない世界に強く憧れていた。高校生のころ、浅田彰の『構造と力』(中公文庫)を読んでニューアカデミズムにはまり、その源流ということで、文化人類学者である山口昌男の『本の神話学』(中公文庫)や『歴史・祝祭・神話』(中公文庫)などを読んだ僕は、世の中にこんなに面白い学問があるのか、と思って圧倒されてしまった。とにかく80年代の山口昌男はものすごく輝いていた。世界中の有名な知識人と対談し、ありとあらゆる本を読み、様々なテーマを論じ、歴史学

フェデリコ・フェリーニ監督作『道』 特別解説:YouTube初無料公開記念

『道』     山下泰司   『道』(原題:La Strada)は、今からちょうど70年前、1954年の9月にヴェネツィア映画祭でお披露目された、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ(1920 – 1993)が監督した映画です。そのヴェネツィア映画祭では銀獅子賞を、1957年の3月には米国アカデミー賞の最優秀外国語映画賞に輝いた、彼の出世作です。  1954年というのは今でも「名作」と呼ばれる映画が世界中で数多く公開された年です。日本では黒澤明の『七人の侍』が4月、木下恵介

MDGsは、SDGsと本当はどういう関係にあるのか? 【SDGsとは一体、何だったのか?】第3回・中編

貧困撲滅のための「ビッグプッシュ」  さて前回は、第二次世界大戦後の国際開発規範の変遷が、1980年代に市場メカニズムを重視した構造調整プログラムが貧困を拡大させたことへの反省から、1990年代に「人間開発」の重視に舵が切られ、2000年代初めのMDGsに至って次の3点の要素を持つに至った、ということを確認した。  途上国の貧困撲滅を掲げ、MDGsの旗振り役を担ったのは、世界銀行のエコノミスト、ジェフリー・サックス(1954〜)という人物だ。  彼は次のように論じる。

MDGsは、SDGsと本当はどういう関係にあるのか? 【SDGsとは一体、何だったのか?】第3回・前編

 前回は「持続可能な開発」概念がどのような経緯で生まれたのかという問いに対して、その背景に途上国と先進国の対立や、その後の新興国の台頭といった国際社会の激変が関わっていたことを確認した。  今回は2つ目の問いである「MDGsは、SDGsと本当はどのような関係にあるのか?」について、考えていきたい。 MDGsとは何か  MDGs(エムディージーズ)とは「ミレニアム開発目標」の略称で、ミレニアム総会で採択されたミレニアム宣言と 1990 年代に連続して開催された会議での国際的

『源氏物語』の物の怪は「愛の亡霊」なのか?

『源氏物語論』吉本隆明 『源氏物語』の解説本というよりも吉本隆明が『源氏物語』を通して文学をどう読むのかという本であり、あとがきに古典の学者に細かいところを突かれていた。それは吉本が、原典主義者でもなく、また登場人物のモデル探しもしないというように、あくまでも『源氏物語』は文学として読むのであり、『源氏物語』を語りながら彼は文学を語っているのだ。 例えば『源氏物語』を勧めるのなら手に入り安い与謝野源氏が誤訳もあるがいいという。それは与謝野源氏が彼女の『源氏物語』を構築出来