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つくることを通したリサーチへ —感覚で探る人類学的リサーチとデザイン プログラム紹介(Poietica 奥田 宥聡)

はじめに

この記事は、2024年11月2-4日に行う、合同会社メッシュワークとPoieticaの協働プログラム(共催:山梨県立大学)『複雑さを捉える—感覚で探る人類学的リサーチとデザイン』の背景についてお伝えするものです。プログラムへの参加を悩んでいる方はぜひお読みいただいて考える材料にしてもらえればと思います!

つくることとリサーチの関係性

私たち合同会社Poieticaは「つくることを通して新たな知を産みだす」というメッセージを掲げて活動するデザインスタジオです。


普段の業務では、新規事業のコンセプトメイキングからブランディング、ゲームデザイン、3Dプリントの制作補助支援などデジタルからハードまで越境的な領域への関わりがありますが、通底するのはつくることを通して仮説や問いを変化させていくという役割を担うことにあります。

下記のnoteは筆者の奥田が学部の卒業制作で行った実験の様子です。


一般に、デザイン/デザイナーという役割は仕様やターゲット、制作するものが決定したあとに発生するものとして扱われがちです。しかし、実際には制作するものの当てが外れていたり、仮説が正しいとは限らないのがビジネスの常。そこで私たちは仮説や暫定のコンセプトを踏まえてプロトタイプをつくることで、仮説そのものを問い直したり、狙いとする対象や事業の組み方を変化させていくということを試みています。
これらのプロセスを専門用語で「デザインリサーチ」と呼びます。

デザインリサーチとは何か

デザインリサーチという言葉は最近すこしずつ聞かれることが増えていますが、歴史はそれなりに古く1960年代から始まった研究手法・領域です。
デザインリサーチとよく比較されるのはマーケティングリサーチです。
一般的な区分をすると、マーケティングのリサーチは、誰にどう届けるのか?といった具体的な出口を定めていくリサーチになるのに対して、デザインリサーチの場合は、そもそも何を作ればいいのか?他の方向性はありえないのか?といったような、進みながら問いを作るようなリサーチであると言えるかと思います。
デザインをする場面でリサーチという言葉が出てくるときに、多くの場合指しているのは、「良いデザイン」つまり「より良いもの」を作るための調査や研究、あるいは調べ物が含まれます。 今となっては一般的な言葉ですけど、「ユーザーリサーチ」もその一つです。例えば家電をデザインする場合、使う人がどこで誰と、どういう状態でそのプロダクトを利用しているか調べるというのも、デザインリサーチが意味しているリサーチ対象の一つになります。

デザインリサーチを解説するWebの情報は増えていますが、株式会社INFOBAHNのDESIGN LABチームが執筆した下記リンクの記事による理解を推奨します。

なぜデザインと人類学が結びつくのか?

今となってはすっかりお馴染みになった、デザイン思考の生みの親であるトム・ケリー(IDEOの共同創業者)が書いた『イノベーションの達人』という本があるのですが、この本の中にイノベーションのために重要な10人のキャラクターで一番最初に出てくるのが人類学者です。

これは人類学がこれまで積み重ねてきた、どこか他の場所に行って、その状況を観察し、ある理解のフレームを示すということが先ほど述べたデザインリサーチで考えたい、そもそも何をすればいいのか?別の捉え方はないのか?といった問いを生み出すことと非常に親和性があるということに理由があると思います。
一方で人類学とデザインの組み合わせにおいて、デザイン側として重要視していることは「プロトタイプをする」ということにあります。プロトタイプをすることで、既存のものを観察して理解することから、それを置いて、使ってみることで変化や再構築のされ方を観察することができ、思いもしない発見につながることがあります。
すなわち、「試してわかる」というプロセスの精度を上げるためにデザインと人類学が結びついてきた今日までの状況があるわけです。

手を動かしながら考える方法を学びたい方へ

つくることを通してリサーチする、プロトタイプするというこのプログラムは、普段企画や計画を考えるときにあまり手が動かせない方や、あるいはプロトタイプはやっているけれど、そこからの検討の仕方が漠然としていて困っている人には、いいエクササイズになるのではないかと思います。
一方で、いわゆる改善型と呼ばれる、ある目標に向かってどんどん機能を満たしていくという意味での、つくって試すというプロセスは多くの企業や組織がすでにやっているところかなと思います。
しかし今回は、問いを再考することであったり、つくったものから考えを深めるというプロセスを人類学の目線からも行うことで、当初の自分の思いつきとは全然違うと仮説を立てる価値や面白さを共有できるのではないかと思っています。

合同会社メッシュワークとPoieticaの協働プログラム(共催:山梨県立大学)『複雑さを捉える—感覚で探る人類学的リサーチとデザイン』では、本記事にて言及したことについて、参加者の皆様と実験・実践していきます。
ぜひ、ご参加ください。


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