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生物学

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要約:なぜわれわれは死ぬのか 12章

第12章
寿命を延ばす技術の進歩は社会的影響と切り離してはならない

現在、先進国では高齢者の割合が20%近くに達しており、世界の多くの地域では現在から2050年の間に倍増すると予想されている。寿命延長がもたらす社会的影響は計り知れない。こうした措置は、一般的に人々が定年後数年しか生きられなかった時代に導入されたものだが、今では定年後20年は生きられる。

罹患率(不健康に生きている人と時間の割合

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要約:なぜわれわれは死ぬのか 第11章

この章と次章はアンチエイジング技術や産業が社会に与える影響について議論している。

不老不死は人類の長年の夢であった。エジプトのミイラや現在の精子や卵子の凍結保存はその例である。死後に人体を冷凍保存して、後に解凍するというクライオニクスも考えられている。しかし、死の直後に細胞は生化学的な変化を起こし、生きている状態のままではいられない。特に脳のニューロンのつながりを維持あるいは再現することは難しい

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要約:なぜわれわれは死ぬのか 第10章

遺伝子から、その遺伝子がコードするタンパク質、そしてそれらが細胞や動物全体の機能に影響を与える。これらのレベルはすべて相互に関連しているため、タンパク質や細胞の状態は、どの遺伝子がどのように発現しているかに影響し、それがまた遺伝子に影響を及ぼす。

炎症の原因のひとつは、細胞が老化したり傷ついたりすることによる。DNAが損傷すると細胞はがん化する危険性がある。そのため、損傷が軽度であれば、修復する

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要約:なぜわれわれは死ぬのか 第9章

細胞内には数十から数千ものミトコンドリアがあり、これらは常に融合と分裂を繰り返している。細胞が分裂するときにミトコンドリアも分裂しますが、オートファジーと呼ばれるプロセスによって欠陥のある部分が分解されることもある。

ミトコンドリアは細胞内でフリーラジカルと呼ばれる化学的に反応性の高い分子種が大量に生成される場所だ。これらのフリーラジカルは細胞内の他の構成要素を傷つけ、細胞の機能低下や老化を促進

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要約:なぜわれわれは死ぬのか 第8章

今回はChatGPTに手伝ってもらって、超短縮した。

老化と遺伝子の関係に関する研究では、デンマークの双子を対象にした研究から、ヒトの寿命の遺伝率が25%であり、遺伝子の影響が小さなものの積み重ねであることが示された。しかし、線虫を用いた実験では、特定の遺伝子の突然変異が長寿をもたらすことが判明しました。例えば、age-1やdaf-2といった単一の遺伝子の突然変異が、線虫の寿命を通常の2倍以上に

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なぜ私たちは死ぬのか 第4章要約

(1961年にアメリカのWistar Instituteにいた)ヘイフリックは培養細胞を無期限に増殖させることができないことに気づいた。細胞は有限の回数分裂した後、停止する。特定の種類の細胞が分裂できる回数は、現在ではヘイフリック限界と呼ばれている。ヘイフリックとムーアヘッドは、細胞が停止し、それ以上分裂できなくなったこの状態を表すために、老化senescenceという言葉を作った。

1970年

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書評:なぜ私たちは死ぬのか

Ramakrishnan, Venki (2024) Why We Die: The New Science of Ageing and the Quest for Immortality. Hodder & Stoughton, Hachette. 320ページ, Kindle版$15.99, Amazon.co.jp 2625円

2009年にノーベル化学賞を受賞したRamakrishnan,

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ヒトはなぜ死ぬのか:プレリュード

ヒトは皆死ぬ。なぜ死ぬのか。いろんな説明がある。たとえば自動車は長年乗っているとタイヤや他の部品がすり減ったり調子が悪くなる。それと同じように体の組織が劣化していくのだ。この考えには問題があって、ヒトの細胞は常に新しくなることができる。また、寿命は動物によって異なりハツカネズミは最長で6年、チョウザメは152年と大きく異なる(https://honkawa2.sakura.ne.jp/4172.h

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集団のために自己を犠牲にするのはなぜか:群淘汰説の起源

国際競技大会で知り合いがいるわけでもないのに自国のチームを応援することが多い。国のために命をささげる人もいる。こうした行動はヒトあるいは生物の進化の中で獲得されたのだろうか。すなわち、自分が属すると思われる集団のために自己をある程度犠牲にする行動は、種にとって利益があるという自然淘汰によって生じたのだろうか。

自然淘汰のレベルの問題は、進化生物学における基本的な問題である。ダーウィンは『種の起源

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自然淘汰

人間の目は1個の光子を検出することができ、暗い夜、十数km離れたところにあるマッチの火を見ることができるそうだ。サケは、生まれた川特有の分子の濃度差を識別することができ、片方の鼻でとらえた分子がもう片方の鼻の分子より多いことを感じる。コウモリは、発した鳴き声の100万分の1以下の大きさの反響音を感知し、不規則に飛ぶ昆虫の位置動きを解読することができる。自然淘汰によって、単純なメカニズムがこのような

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自然淘汰、適応、適応度:概要

Princeton Guide to Evolution 3章1節要約

1. 自然淘汰による適応

複雑な生物学的構造が効率的に機能することは驚異的だ。人間の目は1個の光子を検出することができ、暗い夜、16km離れたところにあるマッチの火を見ることができる。回遊するサケの鼻孔は、母川の分子の濃度差を識別することができ、片方の鼻孔の分子がもう片方の鼻孔の分子より多いことに対応する。コウモリの耳と

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読書メモ:Rereading Darwin's Origin of Species

Rereading Darwinʼs Origin of Species: The Hesitations of an Evolutionist, by Richard G. Delisle and James Tierney, 2022. Bloomsbury Academic, London. 176 pp. ISBN: 9781350259577

本書は、奇妙な質問から始めている「チャール

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読書メモ:進化とは何か?

2014年に出版された"The Princeton Guide to Evolution"の冒頭、"What is evolution?"を「生命の歴史は繰り返すのか?」の著者Jonathan B. Lososが書いている。"The Princeton Guide to Evolution"の全体像を紹介しつつ、本人の進化の見方を述べている。以下は要約。

約 3 億 7500 万年前、サンショウ

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映画「素晴らしき哉、人生!」と進化学者

1946年に公開された映画「素晴らしき哉、人生!」(It’s a wonderful life)を観た。この映画を知ったのは、1989年にスティーヴン・ジェイ・グールドが執筆した「ワンダフルライフ-バージェス頁岩と生物進化の物語」という本に触れられていたからだ。本のタイトルは映画への敬意を込めて付けられた。

主人公ジョージ・ベイリーは街の人々の幸福を願い、建築貸付組合を運営してきた姿が描かれてい

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