ひうら まどか

書けるもの少ない系

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最近の記事

前髪について

美容院のおねえさんに勧められて、人生で初めて前髪を伸ばし始めた。 それはすなわち長い「前髪鬱陶しい期」との戦いを意味する。今まで、鬱陶しいと感じたらすぐに自分で前髪を切っていた私にとって、修行のような日々である。 . 半端な長さの前髪をどうにかするにあたり、3年前に友人から譲り受けたヘアアイロンを使っている。恥ずかしながら日常的な使用はこれが初めてであり、高校や大学で前髪と向き合ってこなかったことを少し(ほんとうに少し)後悔している。旅行や合宿にヘアアイロンを持参している友人

    • 雑記

      最近、自分に対して「だめだな〜」とか、「できてないな〜」とか思うことがとても多い。仕事などにおける「できるようになるべきこと」に対してというよりも、日々の生活においてである。部屋がうまく片付かないとか、仕事終わりにご飯を作る気力がないとか、趣味としてやっていることに対してとか。 恐ろしいことに一旦このモードに入ると、ずっとこれでいる方が楽になってしまう。 下手くそだから...だらしないから...才能がないから...。 最初に諦めておくことでかける保険みたいなものだ。そしてこ

      • カレー

        肉を買い忘れたという理由で2日くらい保留していたカレーを、今日、ようやく作ることにした。 . そもそも野菜を切り始める頃には体内のエネルギーはすっかりなくなっていて、今夜はレトルトカレーにしようかなとか一瞬頭をよぎったけれど、ぐっと堪えて、3日はなくならなさそうな量の具材を煮込むところまでこぎつけた。 . ああ、私、おつかれ。みんな、おつかれ。ちょっと冷や汗かいただけで汗くさくなっちゃう季節になったな。仕事の進捗、よろしくないな。ああ、よろしくない。うう、ああ、はあ。牧場に行

        • 秋の引き出し

          今日、大学のときによく利用した地下鉄の駅から地上に出た途端、風にもみくちゃにされた。髪が大変なことになった。 . 山から吹きおろす風が、地の底からではなく顔に直接ぶつかってきたこと、冷たい空気のなかでも陽の差している部分はちゃんと暖かいこと、冬に向かう秋のにおいがしたこと。 . 自分の中の秋という引き出しの中身が、ガチャガチャ騒いでいた。これだこれだ!と歓声をあげていた。無意識に地道に引き出しを増やし補強してきたことに感謝した。 . 最近、なんだかよくないスピードで日々が過ぎ

          書きたくなる。

          書きたくなるとき。何か、書きたくなるとき。文字におこしたくなるとき。 小学校のとき、完全オリジナルの大河物語を書いていた。学校に行く直前でも、休み時間でも、宿題の後でも、寝る前でも、いつだって書きたいことがあって、そしていつだって書けた。人生で1番の集中力と、途切れない創造力があった。 中学、高校とあがるにつれて、人間関係の構築や、教科書のお勉強や、ブルーライトの時間なんかが日常生活を占めるようになって、たまに思い出したように日記を書いた。書き残したいという欲求は実に衝動

          書きたくなる。

          西日を浴びたので、すこし。

          梅雨の洗濯物のしゃっきりしない乾き具合に早くもうんざりして、もう夏が来ればいいのにと思っていたが、いざカラリと晴れた今日は今日で、予想していなかった暑さに戸惑った。 西日を全身に浴びていると、なぜかガリガリ君の水色の姿が脳裏にチラついた。ついでに、ガリガリ君を求めて駆け込むコンビニのよく効いた冷房が、肌を包む感覚がした。ついでに、コンビニで涼む高校生の、シーブリーズのにおいがした。 自分の五感には、思っているより「夏」のストックが眠っているらしい。それが、こんな西日に当た

          西日を浴びたので、すこし。

          蕁麻疹が痒くて痛くて眠れない夜に。

          一人暮らしの不摂生か、学生時代のアクティブで健康的な日々を失ったからか、歳なのか。この一年、「120%健康!」みたいな時期がほぼなかった。季節の変わり目やらPMSやら貧血やらブルーライトやら花粉やら、常になにかが身体に忍び寄ってきて、だらしなくしなだれかかってくる。「あ、今元気な時期!」て思ったら急に歯が痛くなるし、足を痛めるし、めばちこができる。あるいは蕁麻疹が止まらなくなって、布団の中で唸りながらのたうちまわったりする、そうちょうど今夜のように。 「大丈夫、気合

          蕁麻疹が痒くて痛くて眠れない夜に。

          えいやっと言葉にした抱負。

          “真っ白なノートのページが物語の続きを待つ。筋書きはない。誰が伝説を作るのか。” 私の中学卒業を前に、恩師がたまたま本の中で見つけ、付箋にメモして渡してくれた言葉である。何かが始まる前はいつもこの言葉を思い出して、奮い立つ。 学生という魔法の時間から抜け出し、社会人としての生活をスタートさせた2020年は、ひたすらに真っ白なページの上を進む日々だった。 大学での4年間ももちろん先の見えない波乱に満ちていたが、この時期に部活の本番があって...とか、この時期には就活や卒論

          えいやっと言葉にした抱負。

          素敵なあの子のこと。

          すっかり疎遠になったお友だちの話である。 小学校2年生のとき、マンガを描く女の子と同じクラスになった。ハキハキしていて勉強もできる彼女を見て、漠然と「将来、えらいひとになるんだろうな」と思っていた。彼女は休み時間のたびに白い自由帳を広げ、自分でコマ割りをして、当時流行ったゲームのキャラクターたちを自由に遊ばせていた。 同じ班になったのをきっかけに私はその子と仲良くなった。毎日お手紙を交換して、休み時間はずっと、彼女がマンガを描くの眺めていた。マンガを描く、それを見る、それ

          素敵なあの子のこと。

          3:00 a.m.

          元々その予定だったみたいに、バチっと目が覚めた。寝る前のモヤモヤは全部すっきり晴れていて、気持ちの良い目覚めだった。あまりに部屋が暗いので雨なのかと思いながら時計を見ると、浮かび上がった蛍光色の針はまだ午前3時である。 いつもなら一瞬で睡眠の世界に戻れるのに、バチっと目を開けてしまったので、そのまましばらく天井を見つめていた。眼鏡をかけていないので目が慣れても何も見えない。真っ暗だ。 その3時には、音がなかった。上の階からの足音も、車やバイクが通り過ぎる音も聞こえない。む

          話せばわかる。

          作業中のパソコンが急に再起動したときは、まじか...と呟くのをこらえ、1秒でも早く終わることを心から祈るしかない。 どうしたら早く終わるのかわからないので、キーボードをなでながら、「がんばれ、がんばれ」「重くて大変だよね頑張って」「卒論も乗り越えたんだから大丈夫だ!」と、心の中で励ます。 --------- パソコンと同期しているはずのプリンターが全く反応しないときは、早く印刷して寝たいんだよぉ!と叫びたくなるのを飲み込み、辛抱強く待つしかない。 沈黙する本体をなでな

          話せばわかる。

          親知らずと日曜日。

          昨夜、1つの邪念が頭のなかをぐるぐる回って休日の安眠を奪った。 はがいたい 歯が!痛い! 夢なのか、宇宙人からのテレパシーなのか、虫歯の咆哮なのかわからないまま朝を迎えると、下の奥歯のそのまた奥に、ちんまり白いものが頭をのぞかせている。 よかった虫歯じゃなかった、親知らずである。しかしまたこんな、病院に行くのが憚られる時期に。 上の親知らずを抜いてからもうすぐ1年になる。上の歯を抜くと、下の親知らずは戦意を失い歯茎の下に潜っていったのだが、昨夜眠りから覚めたようだ。

          親知らずと日曜日。

          おふぃすかじゅある

          3週間ぶりの出社日が迫り、上司から「次から私服で来ていいよ」とのお達しがあった。それまでは研修中のためスーツだったのだが、そろそろ暑くなってくるので助かった。 久しぶりにクローゼットを開け、私服勤務日の最初に選ぶのはやはり安全牌、就活を共に乗り越えた彼女である。 所謂オフィスカジュアルというやつである。就活を控え「オフィスカジュアル 就活」「就活 私服」で何度も何度も検索したオフィスのカジュアルなアレである。 当時ただのカジュアルな服しか持っていなかった私は、○ニクロに

          おふぃすかじゅある

          ノート

          2年前の11月、大学3年生の私は「就活ノート」をつくった。冬の間に、珈琲を片手に1日中自己分析に勤しむ日を設けたかったのだ。実際にノートが活躍し始めるのは3月である。 自由なノートだった。エントリーシートの下書きをちまちま書いているかと思うと、東京遠征のときの観光スケジュール、「カフェにいるペッパー君が面白い」など不定期な日記まで書いてある。全く後輩の参考にならない。 就活が終わると、残ったページは後ろから教育実習のメモになり、幻の卒業旅行の旅程になり、引越しの段ボール内

          rとl

          私の高校には普通科の他に、国際科が設置されていた。英語が堪能なだけでなく、プレゼン能力、コミュニケーション能力といった、今日求められているカタカナの能力を備えた凄い方々の集まりである。 そんな学校なので年中行事として、有志による英語のスピーチコンテストがあった。原稿審査、校内予選、校内本選という茨の道を勝ち抜いた生徒は外部のスピーチ大会の出場権を得られる。つまり国際科向けの行事である。 高校2年生の夏、英語の発音がへったくそな普通科の私は、ヘラヘラしながらこのコンテストへ

          梅干し

          一人暮らしになってやっとひと月だと、「実家」と呼ぶのはなんだか背伸びをしている気がしてむずむずする。その実の家に帰省しないことを告げると先日、両親が物資を車に積み1時間半かけてやってきた。 引っ越しの日以来初めての来訪なので、小言を言われないよう念入りに部屋を片付け、シンクを磨き、時に少し押入れに隠したりした。 車から降りてきた母の第一声は、「痩せこけたなぁ!!」だった。そういう母も、運転席の父も、外出していないからかツヤツヤ丸くなっている。あくまで私は痩せたのではなく、