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前髪について

美容院のおねえさんに勧められて、人生で初めて前髪を伸ばし始めた。
それはすなわち長い「前髪鬱陶しい期」との戦いを意味する。今まで、鬱陶しいと感じたらすぐに自分で前髪を切っていた私にとって、修行のような日々である。
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半端な長さの前髪をどうにかするにあたり、3年前に友人から譲り受けたヘアアイロンを使っている。恥ずかしながら日常的な使用はこれが初めてであり、高校や大学で前髪と向き合ってこなかったことを少し(ほんとうに少し)後悔している。旅行や合宿にヘアアイロンを持参している友人たちを見ては「すごい!」と驚いていた自分をどつきたい。皆が積み上げてきた努力と経験の成果があの美しい前髪なのだ。頭が上がらない、ほんとうに。
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4月の前髪は会社に着く頃にはもうbeforeの状態に戻る毎日だった。最初は帰りたくてたまらなかったが、月末はプライドを捨てて堂々と変な前髪をしていた。何せ修行の身なのだから、仕方あるまい。
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そして連休中、毎日きっちり前髪を巻く練習をした。おかげで日中でもまあまあ保つコツを覚え、ヨシ!と思っていたのだが、休みが明けたこの1週間強、完全にスランプに陥り、前髪を「巻いている」状態にすらもっていけていない。むしろ初日よりひどい。自転車みたいに慣れたらできるものではないのか。体育の授業と似て、だんだん下手になる類のものなのか。おまえもか、前髪よ。
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仕方がないので、今はワックスで必死に左右に流している。人より広めのおでこを出すのにずっと抵抗があったが、そんなことより会社に行かなければならないため、テカテカの額を剥き出しにセンター分けである。だがこれで何とか形になるのも前髪がちゃんと伸びてくれている証だし、そもそも最終的にはおでこを出す予定なのだから、確実に目標には近づいているといえよう。
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理想の前髪に近づく時を待ちながらも、バッサリとオン眉にしたらさぞかしスッキリするだろうなぁぁとつい考えてしまう5月である。夏を彷彿とさせる陽射しがおでこにあたる。

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