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ノート

2年前の11月、大学3年生の私は「就活ノート」をつくった。冬の間に、珈琲を片手に1日中自己分析に勤しむ日を設けたかったのだ。実際にノートが活躍し始めるのは3月である。

自由なノートだった。エントリーシートの下書きをちまちま書いているかと思うと、東京遠征のときの観光スケジュール、「カフェにいるペッパー君が面白い」など不定期な日記まで書いてある。全く後輩の参考にならない。

就活が終わると、残ったページは後ろから教育実習のメモになり、幻の卒業旅行の旅程になり、引越しの段ボール内訳になり、1週間の献立表になった。そして今日、ゴールデンウィークのやりたいことを書こうと思って取り出したが、白いページは残っていなかった。

恥ずかしくなったり胸が締め付けられたりしながらノートを読む。思いを書き連ねた御社たちとは結局違うところに就職し、もう気合を入れて献立表を作らなくてもなんとかなることを、当たり前だがこのときの私は知らないのだ。

ノートをつくったときから随分遠いところまで歩いてきたのだなぁと実感し、ここからまた思いもよらないところまで歩いていくことを考えると、今いる場所をしっかり心にとどめておきたくなった。

#エッセイ #物書き #note #就活

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