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親知らずと日曜日。

昨夜、1つの邪念が頭のなかをぐるぐる回って休日の安眠を奪った。

はがいたい
歯が!痛い!

夢なのか、宇宙人からのテレパシーなのか、虫歯の咆哮なのかわからないまま朝を迎えると、下の奥歯のそのまた奥に、ちんまり白いものが頭をのぞかせている。

よかった虫歯じゃなかった、親知らずである。しかしまたこんな、病院に行くのが憚られる時期に。

上の親知らずを抜いてからもうすぐ1年になる。上の歯を抜くと、下の親知らずは戦意を失い歯茎の下に潜っていったのだが、昨夜眠りから覚めたようだ。

晩御飯に作ったすき焼き風の8割がもやしだったことに怒ったのか、友人に会えない寂しさを感じ取って会いに来てくれたか。その理由は掴めない。

とにかく、冷静に舌をころころしていると、痛いのは歯ではなく腫れた歯茎であること、口を動かしたり口角を上げると顎が痛いことがわかった。

こうなると、全神経が常に右顎の様子を伺う。本を読んでいても、映画を観ていても、ちょっと痛みを察知した途端に「あ、痛い」「痛いって」「痛いねん」という邪念におそわれて集中できない。食べものも引っかかる。何より1人でいるとはいえ口角をあげないと1日の素っ気なさが増す。

そうやって親知らず中心の1日を送っていたら、今日が終わろうとしている。親知らずのくせに母の日に出てくるあたり、きみにも何か思うところがあるのだろうか。歯医者に通える目処がつくまでどうか仲良く過ごせますように。

#エッセイ #物書き #親知らず #おうち

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