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#真相をお話しします 結城真一郎

いつかどこかでこんなことが起きてもおかしくない、と思うエピソードもあり、ゾワゾワした。
現代ならではのミステリー短編集である。

#真相をお話しします 結城真一郎

この本に収録されている「#拡散希望」という作品は第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞している。どのエピソードも面白かったが、ひとつだけ挙げるとしたらやはり「#拡散希望」が最後の最後まで面白かったなと思った。

現代とミステリ

「現代」が舞台のミステリ小説は、その時、その瞬間に読むと「まるで本当のような」迫真感が生まれ、物語の世界に引き込まれやすいのではないだろうか。
もちろん、時がたっても小説自体の価値が下がることはない。トリックに驚きながら「そうか、この時代はこんな様子だったのだな」と想像を膨らませたり新たな知識が得られるというのも本の面白さの一つだからだ。

#真相をお話しします は、今まさに今日この瞬間、日本のどこかで起きてもおかしくないような、そんな短編集だった。
各エピソードでキーとなるのは、どれも「今っぽい、令和っぽい」もの。
時代というパッケージがそのままこの瞬間にはまっているからこそ「真相」の展開に「あり得そうで怖い」という心理が働き、身近で起きた出来事のように感じてしまった。

「真相」がしっかり語られる

最近はミステリ小説を「一体どんなどんでん返しが来るかな?」と期待して読む楽しさにハマりつつある。

この本に関しては「真相」の説明がしっかりされているという点で、読み応えを感じた。
「実はこういうことでした」と最後の数行で種明かしがあり、残る謎は読者の想像にお任せ…というオチではなく、しっかり真相が語られるので最後まで読めば(ほぼ)事実が判明する、という形である。
もしかしてこういうことかな?と読んでいたら思わぬ方向に…という「騙された!」が詰まっていて、読んでいて楽しかった。


三角奸計というエピソードについては映像など目に見える形で見てみたいなと思ったのだが、漫画になっているようだ。
小説には小説の良さがあり、漫画には漫画の良さがある。
読み比べてみたらより深く「真相」を知ることができるかもしれない。


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