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連載 閉ざされた国 サウジアラビアをわかりやすく

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2017年夏、サウジ政府において、政策コンサルタントとして勤務。現在、アメリカの公共政策大学院に在学。サウジを中心とした中東情勢について、初学者向けにわかりやすく説明。問合せ先→…
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#石油

2-1. サウジの王族と政治のドロドロした仕組み

2-1. サウジの王族と政治のドロドロした仕組み

【3行まとめ】
・王位継承は、単純な年功序列ではなく、個人の実力で選出される
・能力が不十分な国王の場合、暗殺されることもある実力社会
・次期国王の皇太子は31歳と若く、実績作りのため急進的な政策を行う

2.内政
(1)政治:サウード家による絶対王制国家
・王室の歴史と王位継承プロセス
 第1章でサウジアラビアは絶対王制であることに言及いたしました。憲法において、「司法、行政、立法の三権は、国

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2-3. 石油が湧くサウジの苦悩 高い失業率

2-3. 石油が湧くサウジの苦悩 高い失業率

【3行まとめ】
・サウジは世界最大級の石油埋蔵量を誇り、国家権力の源となっている
・石油収入によって、国民の勤労意欲が低下し、失業率が高くなっている
・労働者は、教育水準が低く、かつ職を選り好みしている

(写真は、砂漠の中に突如現れる石油関連とみられるプラント。)

2.内政
(2)経済:石油依存経済のいまとこれから

・国家権力の源 世界最大の石油埋蔵量
 サウジアラビアを論じる上で、最も重要

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2-4. 外国人労働者がサウジを嫌う理由

2-4. 外国人労働者がサウジを嫌う理由

【3行まとめ】
・サウジ経済は外国人労働者によって支えられている
・外国人労働者の労働環境は過酷を極めており、人権侵害が課題
・サウジは政策立案から軍事まで欧米コンサルに依存しており脆弱な構造

(写真は、首都リヤドのインド・パキスタン系の外国人労働者が居住する地区。きらびやかな建物とは正反対。トラックに山積みの靴を路上で売っている。サウジに着いてしばらくは、この地区に住んでいました。)

・出稼

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2-5. サウジの王族がリッツ・カールトンに拘束された本当の理由

2-5. サウジの王族がリッツ・カールトンに拘束された本当の理由

【3行まとめ】
シェール革命によって石油価格が下落し、サウジの経済が悪化。政府のバラマキの額が減り、庶民の不満が高まっている。庶民の不満を解消するため、政府は王族を拘束。さらに、政府は王族の保釈金で財政赤字を補う。

・米国シェール革命による原油価格低迷の衝撃
 日用品から軍事まで、何でも海外に依存するサウジ経済は、石油資源による安定した収入があって初めて成り立っています。

 石油資源による安定

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2-7. サウジの石油はなぜ安いのか

2-7. サウジの石油はなぜ安いのか

【3行まとめ】
・サウジの石油産業は、採掘コストの低い油田に恵まれ、引き続き有望産業。石油相場が下落する中、失業対策には新たな産業が必要。石油以外の産業を育成するため、インフラ・建設などの分野が有望視されている。

 これまで、サウジの失業対策として、労働者側のアプローチ(労働供給側)に注目をしてきました。本稿では、企業側のアプローチ(労働需要側)について見てみましょう。

 さらなる雇用を創出す

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2-9. サウジと日本文化の意外な共通点とは?

2-9. サウジと日本文化の意外な共通点とは?

【3行まとめ】
最近のニュースを騒がせるサウジは、日本とは全く違う国だと思ってしまいますが、地縁・血縁が強い階層社会であることや、おもてなし精神がおおらかなところは、日本と似ていて、不思議な親近感を覚えます。

 サウジの政治・経済に続いて、次のトピックは社会・文化です。男女の不平等や失業問題など、現下の社会問題については、すでに紹介いたしましたので、本項では、もう少し長期的なスパンで見たサウジ社

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