見出し画像

【エッセイ】あなたは子供の「ドリームキラー」になってないですか?

生産性とは?

「日本人の生産性は低い」

皆さんもこの話しを一度や二度は聞いたことがあるのではないだろうか。
もしかしたら自分の会社の生産性が低いのではないかと感じているビジネスパーソンもいるかもしれない。

そういう私も自分でいうのもなんだが、昔は生産性が極めて低い人間だった。

いまから20年前、新卒で入社した会社の中でも自分は残業時間がトップクラスで多かった。営業の仕事をしていたので、クライアントへの企画の提案を作ったり、納品物を準備したりと、毎日とにかく死ぬほど働いていた。

ちゃんと計算していたわけではないが、多い月には残業時間で200時間を超えた月もあったように思う。さすがにそれだけ働けば部署で一番の営業成績をとったりもしていたが、同時に体もボロボロになり、通勤電車の中で気を失って倒れたこともあった。今から振返ってもあれはやりすぎだったと反省している。

私の生産性が低かった理由は、売上を上げる方法を一つしか知らなかったからだ。

当時私は「成果を出すには誰よりも長時間働くしかない」と考えていた。
学歴があるわけでも、能力が高いわけでもない自分が、優秀な同期や先輩たちを追い越すためには「時間」と「体力」が唯一の武器だったのだ。

そのため、私は入社と同時に一つの決意をたてた。

「誰よりも長時間働く」

そう決めてから、私は起きている時間の全てを仕事に注ぎこむようになった。そのため、当時の私に「生産性」なんていう概念はまったくなかった。長時間働くことだけが私の生存戦略だったのだから、早く帰ろうなんてことは一切考えなかった。

しかし、冷静に考えれば、これはかなり効率が悪い働き方と言わざるを得ない。

もし仮に100の成果を1の時間で出せる人がいれば100÷1で生産性は100ということになる。しかし同じ100の成果を2の時間を使って出せば100÷2で生産性は50ということだ。仮に人よりも1.5倍の150の成果を出していたとしても150÷2で生産性は75にしかならない。

つまり私が人の2倍の時間をかけて仕事をしていたなら、売上は2倍以上になっていなければ生産性は下がっているということになる。もし当時「生産性ランキング」というものが事業部にあったとしたら、私の順位は間違いなく下位の方であっただろう。

日本人の生産性の低さ

そしてこれが日本人の生産性が低い理由でもある。
日本人の全体の生産性で考えるために「一人当たりGDP」で考えてみたい

一人当たりGDPが伸びていれば日本人の生産性は上がっていると考えることができる。そうすると世界の中での日本のランキングは現在28位となっている(参照:世界経済のネタ帳)

過去を遡れば90年代の終わりには日本の順位は2位まで上がったこともあったが、そこから2000年代に入ってからは毎年順位が下がり続けている。正確に言うと、この20年間日本の「一人当たりGDP」は変わっておらず、その他の国の「一人当たりGDP」が伸びているため、相対的に日本の順位は下がっているのである。

ちなみに日本全体のGDPはアメリカ、中国に次いで世界第3位である。しかし、問題なのはアメリカと中国の一人当たりGDPは毎年伸び続けているにも関わらず、日本はこの20年間は殆ど変わらないということが「日本人の生産性は低い」と言われている理由なのだ。
(細かく言えば為替の影響や、人口減少など色んな要素があるのだが、ここでは詳細は省く)

日本のGDPが伸びていない理由の一つに企業の売上がアメリカや中国に比べて伸び悩んでいるという問題がある。皆さんも聞かれたことがあるかもしれないが、世界の時価総額ランキングで1989年の上位50社の中で日本企業は31社ランクインしていたが、2018年になるとトヨタ自動車1社しか入っていない。

時価総額とは「株価×発行済み株式数」なので売上がそのまま時価総額に比例するわけではないが、今後の将来性も踏まえて株価は決まるので、日本企業は世界の投資家から期待されなくなったと言わざるを得ない。おそらく日本企業は堅実ではあるが、イノベーションを起こして市場を一気に変えるような力はもうないと思われているのではないだろうか。

このように日本は世界から比べてどんどん取り残されていっているのである。

日本人に根付いているバイアス

実際に生産性が上がらない理由はいくつもあるかもしれないが、今回私は日本人が持っている「バイアス」について着目をしてみたいと思う。

「バイアス」とは人間が物事を判断する際に無意識のうちに行っている「思考の癖」のことである。

「バイアス」には多くの種類があるのだが、特に問題だと思っているのが「権威バイアス」と呼ばれるものである。

「権威バイアス」とは「権威のある人の言うことは間違いないと思い込む思考の癖」のことである。

例えば「あの上司が言うのであれば間違いない」とか、TVで専門家が言っていると「TVに出るくらいの人が言うのだから間違いないだろう」と盲目的に従ってしまうものがそれにあたる。

なぜ私がこれを問題だと感じているかというと「権威バイアス」が強いと社員が「指示待ち型になる」「自分の頭で考えようとしなくなる」「許可がないと動くことができない」といった反応をしてしまうからだ。

例えば会社の中で自分が何かいいアイデアを思いつき、それを実行したいと思ったとしても「上司はどう思うかな」とか「勝手なことすると怒られるから止めておこうかな」と考えてしまい、消極的になってしまう。

これがたとえば新規事業開発を行う担当者の場合、最終的に社長がOKを出さなければ実行に移せないとなると、社長の顔色をうかがって企画内容を変えてしまうということが起こってしまう。これではせっかくの新規事業のアイデアも骨抜きにされてしまい、結局玉虫色の企画になってしまうに違いない。これではイノベーティブな商品やサービスが生まれてくるはずがない

私はこういったことが日本の会社の至るところで起きているのではないかと考えている。その一端を垣間見たのが、私が研修の依頼を受けて行った大手メーカーの社員研修でのできごとだった。

女性に対するバイアス

私はこの企業から「うちは女性管理職の数が極めて少ないので、現場の管理職に対して意識を変えるような研修を行って欲しい」と依頼を受けた。

詳しく話しを聞いてみると、全社で「ダイバーシティ&インクルージョン」を進めていくことが決まったのだが、その一番の目玉である「女性活躍」が現場では全く進んでいないというのである。人事が管理職にヒアリングをすると、特に部長クラスが相変わらず昭和のような発想で「社内結婚をしたら女性が異動すべきだ」「結婚したら女性は子育てをするものだ」「男性は仕事で成果を出すべきだ」「管理職の仕事は時間的にもハードだから女性には難しい」というようなことを、面と向かっては言わないが内心ではそう思っていそうということが分かったのである。

これを聞いたときにはさすがに私も「今の時代でもまだそんな考え方をしている人がいるのか」と思ったが、こういった考えを少しでも変えられる研修をしようと試行錯誤し、実際に行うこととなった。

実施にあたっては100名の管理職を「部長クラス」「課長クラス」「リーダークラス」の3つに分けてそれぞれ別々の日に行うこととなった。年齢もおおよそ部長クラスは50代、課長クラスは40代、リーダークラスが30代となっていた。

この研修は、直接的に女性管理職を積極的に登用しようというような内容ではなく、自分が知らずに持っている「バイアス」に気付いてもらい、特に女性に対して持っているバイアスをできるだけ取り除いてフラットに人材登用について発想してもらうという内容にしていた。

というのも管理職に対して「あなたたちの考え方は古いから改めてください」というような直接的な言い方では、間違いなく反発が出ると思ったので、自分たちが知らずに持っているバイアスにはどんなものがあり、それによって自分たちの思考がどれだけ凝り固まってしまっているかを気付いてもらうことで、女性に対するバイアス的な見方を変えてもらおうとしたのである。

実際に研修を行ってみると、どの回もとても好評で、特に自分たちが持っているバイアスの話しになると「ああ、確かに自分にもそのバイアスはある」とか「いや~、これは恐いですね」といった反応が管理職の方々に見られ、当初の狙い通りの結果となったことに私はホッとしていた。

ところが一つだけ当初の狙いとは全く異なる反応が見られ、私も企業担当の人事も驚いたことがあった。

自由な発想ができない?

実は今回の研修では自分のバイアスを取り除いて自由な発想をしてもらうというワークを入れていたのだが、これをやったときに「部長クラス」の管理職の方たちは、自分の考え方を変えられず苦戦するのではないかと予想していたのだ。そして自分たちが発想を変えられない現実を直視してもらい、そこで自覚を促すということが大きな狙いだったのである。

ところが結果的には一番自由な発想をしたのが「部長クラス」で、最も考え方を変えられなかったのが30代の「リーダークラス」だったのである。

これには正直私も驚いた。年齢が若い層の方が柔軟な発想をしやすいのではないかと予想していたのだが、結果としては全くその逆になったのである。
なぜこのような結果になったかというと、実はここに「権威バイアス」が大きくかかわっていたのではないかと私は仮説を立てた。

50代の部長クラスの方々は、この会社がまだ小さかったころに、自由に仕事をやらせてもらった経験があり、上司の言うことよりも自分が発想した企画を実行することができたという経験をしていた。そのため、部長クラスの人たちは社長がどう思うかとか、会社の判断を抜きにして自由に発想してみてくださいというワークを難なくこなすことができたのだ。

ところが若手の管理職たちは、会社が大きくなって組織のヒエラルキーがしっかりした後に入社した世代だったため、自分が自由に発想して企画を実行するという経験をしたことが無かったのである。そのため常に上司におうかがいをたてて許可がないと実行することができない環境で育ってきたのだ。そのため研修で自由に発想してくださいと言われても、困惑してしまい、当たり障りないアイデアしか出すことができなかったのである。

もちろんこの研修の中でも「権威バイアス」のことは伝えていて「上司がどう思うかは抜きにして発想してください」ということは伝えていた。それにも関わらず、若手管理職は上司の指示がない中では考えることができなかったのである。

これは私が見た一つの事例だが、実は多くの企業で同じ現象が起こっているのではないだろうか。そしてこれが日本の会社にイノベーションが起きず、時価総額が伸び悩んでいる理由の一つではないかと感じている。

令和における家族の在り方

しかしこれは企業内だけでない。

実は「権威バイアス」が最も強く影響するのは親子関係だということが分かっている。

子供が何かを決断するとき、実に8割近くが親の考えていることを子供も考えているというデータがあるのだ。

この背景には少子化により親が一人の子供に対して関わる時間が長くなっていることや、親自身も自分が子供のころから受験や親が敷いたレールを歩いてきた経験から、それを自分の子供にも強いているという可能性がある。

日本の生産性が低い本質的な理由に、家庭内での親と子のかかわり方が関係しているというのはかなり衝撃的なことである。私も一人娘の親として子供可愛さについ子供がやっていることに口を出してしまうことがあるが、これは子供に「権威バイアス」を植え付けていることになるのかもしれない。

令和の時代において、もしかしたら最も重要なことの一つが、親が子供に「権威バイアス」を与えないことなのかもしれない。そのためには、親は子供に自分の言うことを聞かせようとしていないか、子供の自主的な発想を親の意見に置き換えさせていないかに常に気を付けなければいけない。

そして親が子供にできる最高の接し方は、親が子供の夢を叶えるために「ドリームサポーター」になることだ。間違っても子供の夢を「お前には無理だ」なんて言う「ドリームキラー」になってはいけない。

親が子供の「ドリームサポーター」になることがゆくゆくは日本人の生産性を上げることに繋がるのだ。

これは令和の家族において最も重要なことではないだろうか。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。もし今回の記事が参考になったと思っていただけましたら「スキ」「フォロー」いただけるととても励みになります!!

また一対一のコーチングをご希望される方は下記フォームから「コーチング希望」とお書きいただきお問合せください。折り返しご連絡させていただきます。

現在ご希望者の方には「無料の30分プレセッション」を行わせていただいております。コーチングを受けるうえでの不安点など、ぜひこの機会をご利用いただければと思います。

#毎日note #毎日更新 #note #人生 #日常 #毎日投稿 #コーチング #ビジネス #自己紹介 #生き方 #note毎日更新 #仕事 #働く #やりがい #幸せ #お金 #私の仕事 #子育て #教育 #マネジメント

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?