さるやまさるきち

現在42歳の普通のサラリーマンです。大変ありがたいことに資産の状況が整ってきて数年後に…

さるやまさるきち

現在42歳の普通のサラリーマンです。大変ありがたいことに資産の状況が整ってきて数年後に早期退職のめどが立ったので、ちょっとはやい老後(苦笑)の楽しみにnoteを始めました。趣味の美術関連の記事を書いています。おしなべて、のんびり・まったりです。

マガジン

  • 美術館を訪ねて/つくる旅

    各地の美術館を訪ねて、そこから着想を得たハンドメイド作品をつくって遊んでいます。

  • 時計の歴史小説(1700年~1980年)

    私のささかやな時計コレクションを入り口に、時計とその周辺の歴史を小説で描きます。

最近の記事

目次「美術館を訪ねて/つくる旅」

 記事が増えてきたため、目次を作成してみました。とりあえず以下のように分類しています。皆さまのご興味のあるトピックが見つかったら、ぜひのぞいてみてくださいね。  【住宅】  住宅を転用した美術館です。著名人のライフスタイルや価値観の根底に触れられるかもしれません。ご自身の生活に取り入れてみるのも楽しいと思いますよ。  【庭】  歴史的な背景をもつ庭をご紹介いたします。屋外を歩く気持ちよさを味わえると思います。同じ括りでも振れ幅が大きいジャンルで、多様な美意識を楽しむことがで

    • 第15回 「USSコンスティチューション号」を訪ねて/「セイリング」を説明する

      歴史的建造物を保護・再現する難しさ 歴史的建造物を訪ねることは、多くの人にとって旅の醍醐味なのでないかと思います。私ももちろん大好きです。このような建造物はどうやって維持・復元されているのでしょうか。実は建造物というのは、文化財保護・文化財再現の観点では、その大きさゆえにまた人を招き入れるという特性ゆえに、固有の悩みがつきない存在だったりします。  例えばここに、奈良時代の木造寺院があるとしましょう。  礎石も順調に発掘され、おまけに文献資料もみつかり、正確な構造が推定でき

      • 時計史小説(4) 1900 model1899 BridgeModel /ウォルサム・「良いモノを上手に売る」の果てに

        良い事業とは何か 私(筆者)は某メーカーに会社員として勤めている。私の勤める会社は複数の事業をもっており、状況によって新規事業の開拓を試みたり、既存事業から撤退したりしている。私は幸運にも、これらの判断の理由について多少の情報を得られることがあるのだが、読者の皆様は、どのような時に会社が事業への参入(または、事業からの撤退)を選択すると思うだろうか。  自社製品の性能が、同価格帯の他社製品より、明らかに優れている(劣っている)としたらどうだろう。実はそれ自体は事業参入(撤退

        • 第14回 「町田市立博物館 東南アジア陶磁コレクション」を訪ねて/「江戸ガラスの振出」をつくる

           町田市立博物館は、2019年の「町田市立博物館最終展―工芸美術の名品」をもって現在閉館中です。今のところ新たな拠点に関する情報はありませんが、出張展示・出張講座などで活動を継続してくれています。後述の通り市民に愛され、良質な研究が行われてきた博物館ですので、ぜひ復活できるよう応援しています。 博物館の個性はどのように作られるか 博物館の個性はどのように作られるのでしょうか。まず、コレクションが集まれば研究者が集まって研究が進むという側面があります。そして、研究が進めば「こ

        目次「美術館を訪ねて/つくる旅」

        マガジン

        • 美術館を訪ねて/つくる旅
          16本
        • 時計の歴史小説(1700年~1980年)
          4本

        記事

          時計史小説(3) 1864 AT&Co. model 57 /ウォルサム・機械が機械をつくるとき

          蒸気機関で何を動かすのか 産業革命の華は、何といっても蒸気機関の実用化だろう。イギリス人、ジェームズ=ワット(1736-1819)の功績だ。産業革命以前も、人類は動力として、人力・畜力のほかに水力や風力を用いてきた。しかし、これらは使用できる条件が限定的だ。風は気まぐれの代名詞だし、水の流れはどこでも得られるものではない。対して蒸気機関に使う石炭は、火にくべればいつでもどこでもエネルギーを取り出すことができた。取り出されたエネルギーは水を水蒸気に変え、水蒸気はシリンダーの中で

          時計史小説(3) 1864 AT&Co. model 57 /ウォルサム・機械が機械をつくるとき

          第13回 「メトロポリタン美術館 武器・甲冑室」を訪ねて/「レトロ火器ご飯セット」を組む

          最強の武器は何だろう 「最強の武器は何だろう」という素朴な疑問は、子供っぽい好奇心として、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。一方で、この質問の「的を得ていなさ」は、軍事の専門家ではない私でも、さすがにわかる気がします。  もし軍事が、「無力化した敵兵の人数を競う競技」あるいは「ぶんどった領土の広さを競う競技」であるなら、最強の武器という考えに意味があるのかもしれません。しかし現実の軍事は、目的が明確な競技ではなく、当事者たちが勝手に決めたてんでバラバラな目的

          第13回 「メトロポリタン美術館 武器・甲冑室」を訪ねて/「レトロ火器ご飯セット」を組む

          時計史小説(2) 1802 Litherland&Co /リバプール・産業革命と野心の行方

          無名の(ような)男 時計の歴史の中で、ピーター=リザーランド(1756–1805)という人物は無名ではない。懐中時計用の「ラック・レバー脱進器(ラック・ピニオン脱進器)」の発明者として認知されている。  脱進器とは、時計の歯車を一定のリズムで進める機構で、時計の性能の根幹にかかわる部分だ。17世紀を通じて、携帯時計の脱進器は「バージ脱進器」という形式の一辺倒だった。これに対して18世紀は、様々な形式の脱進器が発明される。精度向上、サイズ縮小、ロバスト性向上、コストダウン、様

          時計史小説(2) 1802 Litherland&Co /リバプール・産業革命と野心の行方

          時計史小説(1) 1700-1710 AlxWarfeild  /ロンドン・時計師ギルドの風景

          ごあいさつ 私の手元にはアンティーク時計の小さなコレクションがあります。1700年ごろから1980あたりまで、「それぞれの時代の普通の生活の中で使うシンプルな時計」をテーマに収集しました。凝った複雑時計やレアピースの類はありませんので、市場価値は大したことはないと思います。しかし普通だからこそ、それぞれの時代の「工業製品の普通」、「装飾工芸の普通」さらには「社会の普通」を映す鏡として機能すると思うのです。  このコレクションの時計について調べるうち、確認できた情報をベースに

          時計史小説(1) 1700-1710 AlxWarfeild  /ロンドン・時計師ギルドの風景

          平凡なサラリーマンがFIRE(経済的独立と早期退職)に至った経緯と現在の関心事

           40代前半でFIREを実現した(安全マージンと仕事への興味のため、もう少し勤務予定)という私の経歴に興味を持ってくださる方が時々いらっしゃいます。  一方で、仕事関係の知人には、なぜターゲットも定かでない美術関連記事を公開しているのかと尋ねられたこともあります。  このあたりの経緯について、自己紹介がてらプロフィールを作成いたしました。長い話になりますが、もしお時間がありましたら、ぜひお付き合いください。 ■ 会社のために、力いっぱい頑張り、落ちこぼれ社員になる 私は地方

          平凡なサラリーマンがFIRE(経済的独立と早期退職)に至った経緯と現在の関心事

          第12回 旧白洲邸「武相荘」を訪ねて/「夫婦茶碗」を繕う

          終の棲家をつくろう(予算無制限で) みなさんは、終の棲家について考えたことがありますか。私は今住んでいる安普請が気に入っており、ここが終の棲家になればいいなと思って暮らしています。しかしそんな私でも、もし青天井の予算で思い切り凝った家を誂えたらどうなるだろうと夢想することは時々あります。この凡夫の夢を実際に叶えたご夫婦がいます。白洲次郎(1902-1985)、白洲正子(1910-1998)夫妻です。  白洲次郎は、戦前からイギリス・ケンブリッジ大学への留学を足がかりに人脈を

          第12回 旧白洲邸「武相荘」を訪ねて/「夫婦茶碗」を繕う

          第11回 「六義園」を訪ねて/「煉瓦の蹲」をつくる

          「建築」と「庭」は二つで一つ 日本の建築は多くの場合、庭と切っても切れない関係にあります。たとえ都市の真ん中の狭い町家でも、内露地を設けて坪庭を作らずにはいられないのが日本人です。古く平安時代には寝殿の庭がありましたし、中世の庭については下記の記事で禅の庭の一例をご覧いただけるかと思います。  そんなお庭大好きの日本人が園芸ブームに沸いた江戸時代にあって、日本の庭園のある種の極致をみせているのが「大名庭園」です。  江戸時代の大名の邸宅が、私的空間である「奥」と、公的空間

          第11回 「六義園」を訪ねて/「煉瓦の蹲」をつくる

          第10回 「東京国立博物館 東洋館」を訪ねて/「紫檀木画槽『匙』」をつくる

          博物館のあけぼの 博物館の起源は「驚異の部屋<ヴンダーカンマー>」にさかのぼると、西洋ではよく説明されます。「驚異の部屋」とは、個人が自分の趣味で集めたコレクションを自分の美意識で飾り立てた、陳列室のことです。自分で楽しむだけという場合もありましたが、こういったものは他人に自慢したくなるのが常ですよね。  このような文化が洗練されてくると、好き嫌いで集めた珍品自慢ではなく、学問的な見地からテーマを決めて、系統立てて事物の収集・陳列が行われるようになってきます。更に、収集のアド

          第10回 「東京国立博物館 東洋館」を訪ねて/「紫檀木画槽『匙』」をつくる

          第9回 「報国寺・竹の庭」を訪ねて/「青磁碗」をつくる

          鎌倉のお寺 鎌倉というのは数ある日本の観光地の中でも、他と違う独特な雰囲気をもっています。それは、この街がどこか「中世」を感じさせるからだと私は思っています。  中世とは圧倒的な自助努力の世界です。「力で奪われて死ぬまで、力で奪う」という人生観に、現代では考えられないくらいのリアリティがありました。どんな組織に属していても、自分の人生を好転させたいなら、自分でチャレンジしてその結果に自分で責任を負うしかありません。現代も本質は同じなのかもしれませんが、敗北のペナルティは今より

          第9回 「報国寺・竹の庭」を訪ねて/「青磁碗」をつくる

          第8回 「氷川丸」を訪ねて/「新式日本図案の調味料入れ」をつくる

          氷川丸が生まれた時代 港町、横浜には重要文化財に指定された二つの船があります。  一つは「日本丸」。見た目は大航海時代さながらの帆船ですが進水は1930年、昭和に入ってからです。実はエンジンも備えており、動力航行も可能です。船を操作する操船技術の訓練を行うための船として生まれました。  そしてもう一つが「氷川丸」。こちらの進水は1929年、日本丸とほぼ同時期で、生まれた場所も同じ横浜船渠です。氷川丸は、当時最新鋭の商用船舶として生まれました。今でこそ、日本丸のバーク船のよ

          第8回 「氷川丸」を訪ねて/「新式日本図案の調味料入れ」をつくる

          第7回 「プラネタリウム技術史講座」を受けて/「手乗り三球儀」をつくる

          技術史を知ることの意味 突然ですが、みなさんは、いわゆる発明家がどのように「特許」をとっているかご存知でしょうか。国によって多少の差はあるものの、「いいアイディア」を思いついた発明者が、特許庁に自分のアイディアを説明する方法は、実は本質的に同じです。発明者は「三つのステップ」で特許庁に自分のアイディアを説明しています。(特許法上は「発明家」ではなく「発明者」という呼び方をされています)  (1) 自分のアイディアの元になった技術、「先行技術」を説明します。  (2) 先行技

          第7回 「プラネタリウム技術史講座」を受けて/「手乗り三球儀」をつくる

          第6回 「三渓園」を訪ねて/「蓮の花瓶」をつくる

          コレクションすることの創造性 モノを集めるという行為は、現代の社会ではあまりクリエイティブな行為として見られていないような気がします。確かに、「良いモノが私の手元にある」ということは、私にとっては気分のいいことかもしれませんが、私が何か世の中に貢献したことにはならない、というのはそのとおりかもしれません。一方で日本の伝統的な芸事、たとえば茶の湯には、「取り合わせ」の考え方があります。雅やかな仕服から素朴な井戸茶碗が取り出されたとき、驚きとともにテーマが明らかになって互いの魅力

          第6回 「三渓園」を訪ねて/「蓮の花瓶」をつくる