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筋肉に効率良くエネルギーを貯蔵するための「カーボ・ローディング」の方法まとめ

この記事では筋肉に効率良くエネルギーを貯蔵するための「カーボ・ローディング」の方法についてまとめています。


そもそも「カーボ・ローディング」とは?

「カーボ・ローディング」の「カーボ」とは、簡単に言えば「炭水化物」の事であり、特にこの「カーボ」は「糖」の事を意味しています。

つまり「カーボ・ローディング」とは「糖を補給する」という事であり、特に糖の一種「グリコーゲン」を筋肉内へ補充するために行う、「ごく短期的な調整法」の事を言います。別名「カーボ・アップ」、あるいは「グリコーゲン・ローディング」とも呼ばれます。

例えばボディビルダーの場合、筋肉量を増やす「増量(筋肉を大きくするために、脂肪もある程度蓄える必要がある)」を行った後、規定となる体重を目指すための「減量」を行います。

特にこの「減量」では、単に脂肪を落とすだけではなく、筋肉も一緒に落として、規定となる体重まで減らす必要があります。また減量は期間も長く、増量期の倍以上の時間をかけ、ゆっくりと脂肪を落とす必要があります。これは何故かというと「一気に脂肪を落とすと筋肉も一気に落ちてしまうから」です。つまり「減量」とは言っても、一般的なダイエットとは似て非なるものです。

しかし増量期において、あまりに脂肪や筋肉を増やし過ぎた場合、このままのペースだと、期日までに規定の体重に到達できない事があります。その場合、人によっては非常に過酷な減量を行わなければならず、特に減量末期、すなわちコンテスト前の数日間には、食事量の減少に伴って筋肉内のグリコーゲンが枯渇し、筋肉が大きく萎んでしまいます。

そのような時に、数日という短期間で、筋肉内へグリコーゲンを貯蔵する方法が、この「カーボ・ローディング」という調整法です。これによって筋肉内のグリコーゲンを補充する事ができれば、その時のできる範囲で、可能な限り筋肉を膨らませる事ができます。

尚、グリコーゲンは単純に「筋肉を動かすためのエネルギー」です。つまりここではボディビルダーを例にしましたが、ボディビル以外の様々なスポーツにおいても、試合前の数日間にこのカーボ・ローディングを行う事で、パフォーマンスを向上させる事ができます(筋肉を落とすほどの減量が必要のない場合、食事の内容は大きく異なる)。

特に「調整法」と聞くと難しいように思ってしまいますが、カーボ・ローディングは個人レベルでも行う事ができる簡単なものです。まずは基本的な方法だけでも覚えておき、慣れてきたら、少しずつ自分に合わせた方法に改良していくと良いでしょう。


カーボ・ローディングの基本的な方法

ここではカーボ・ローディングの方法の中でも、最もオーソドックスな方法について紹介します。特にカーボ・ローディングは前半と後半に分ける事ができます。

・前半では「糖質制限+高蛋白+高脂肪」+高強度の運動

まず前半の2~3日では、食事において糖を極力制限し、敢えて激しい運動を行って、筋肉内の糖を一旦ほぼ全て使い切ります。そうして糖が枯渇した状態になると、筋肉は次の消費に備えるために、より多くの糖を蓄えようとすると言われています。後半の2~3日ではそれを利用し、運動の強度を下げると共に、糖を大量に摂取する事で、速やかに筋肉へ糖を補充します。

ただし前半ではそのように糖を摂取できない状態で、運動量が大きく増える事になるため、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れやすくなります。特に摂取エネルギーが足りず、消費エネルギーが大きく上回ると、筋肉が分解されやすくなってしまいます。このため前半では運動量に合わせ、蛋白質と脂肪を意識的に摂取する必要があります。そうして筋肉をなるべく維持する必要があります。

尚、球技スポーツのように規定となる体重がない場合、そのように筋肉が落ちないよう、エネルギーとして脂肪を摂取する事ができます。「1日に必要なエネルギー」まで余裕があるので、食事自体はそこまで苦痛なものではありません。

一方、ボディビルダーのように規定となる体重がある場合、減量を続けながら、その中でカーボ・ローディングを行う必要があるので、余分なエネルギーは摂取できません(必須脂肪酸は最低限摂取する)。その場合、カーボ・ローディング中も脂肪を殆ど摂取する事ができなくなります。

つまり糖だけでなく脂肪も制限し、最低限の蛋白質だけを摂取する事になります。ごく短期間とは言え、人によってはかなりの苦痛を強いられる事になるでしょう。そのためこの期間に至る前までに、規定となる体重付近まで体重を減らしておく必要があるでしょう。


・前半の簡単な食事内容

まず蛋白質の必要量を考えてみましょう。健康を維持する場合、つまりカーボ・ローディング中ではなく、通常の食事の場合、蛋白質の必要量は1日最低でも体重1kg当たり1g以上必要になります。これが筋肉を大きくしたい場合になると、体重1kg当たり2g必要、筋肉量が多い人だとこれが体重1kg当たり3gになる事があります。

一方、カーボ・ローディングの前半では、そのように糖を摂取できません。そのため単に体重1kg当たり1gの蛋白質とすると、脂肪の必要量がかなり増えてしまいます。それを防ぐために、まずは蛋白質の量を増やす事を考えます。筋肉量に関わらず、とりあえず「1日体重1kg当たり2g」の蛋白質を摂取するようにしましょう。例えば体重80kgなら160gになります。

続いて脂肪についてです。過去の記事では何度も言っていますが、脂肪は「1日に必要な摂取エネルギー(基礎代謝+運動量)」から考えると分かりやすいと思います。

例えば基礎代謝が1300kcalある場合、運動量が多い人だとその2倍のエネルギー、すなわち1日に最低でも2600kcalのエネルギーが必要です。前述のように蛋白質は体重1kg当たり2gなので、体重が80kgあるならその80かける2で160gです。また蛋白質は1g当たり4kcalのエネルギーがあるので、160かける4で640kcalです。これを2600から引くと1960kcalになります。更に脂肪は1g当たり9kcalなので、この1960を9で割って約217g。つまり1日に蛋白質160gと脂肪217gが必要という事になります。そこから「それだけの量を摂取するには何を食べれば良いか」を考えましょう。

例えばナッツ類には100g当たり20gの蛋白質と60~70gの脂肪が含まれています。また脂肪が豊富な魚には100g当たり20g前後の蛋白質と20g前後の脂肪が含まれています。1日にナッツ200g、魚300gを食べると、合計で100gの蛋白質と200gの脂肪を摂取できます。プロテインは1食分で20gの蛋白質を摂取できるので、3回に分けて飲めば蛋白質は合計で160gになります。

まぁナッツ200gとなればかなり大変ですから、当然このままという訳にはいきませんが、それぞれの食品に含まれる蛋白質の量と脂肪の量をそれぞれ合計すれば、1日に何をどのぐらい食べれば良いのかが分かります。ネットで調べればそれぞれの量は出るので、まずは自分で考えてみましょう。オススメなのはブリ、サンマ、サバ、アーモンド、ピーナッツ、ヒマワリの種、カボチャの種、ゴマ、アボカドなどです。もちろん普通の肉や納豆なんかも構いません。


しかしボディビルダーのように、減量をしながらカーボ・ローディングを行う場合、エネルギーの大きな脂肪は殆ど摂取できません。つまり高蛋白・低脂肪な食品だけを食べる事になるでしょう(必須脂肪酸・ビタミン・ミネラルは最低限摂取)。しかし減量の進行度によっては、その蛋白質すらも制限する必要がある場合があります。これは人によります。

例えば体重が100kgある場合、体重1kg当たり1gだと1日100g、2gなら200g、3gなら300gとなりますが、それぞれエネルギーを計算すると、100gは400kcal、200gは800kcal、300gは1200kcalになっています。これ以上筋肉を落としなくないのなら、当然蛋白質の量は多くなりますし、まだ減量を行って筋肉を減らしたいなら少なくなります。この間で上手く調整しましょう。

この場合のオススメは鶏のササミ、砂肝、各種レバー、サケ、タラ、マグロ(赤身)、タコ、イカ、カニ、エビ、サザエ、ホタテなどになります。いずれも100g当たり20~30gの高蛋白が含まれる上に低脂肪です。1日100gの蛋白質が必要ならこれらを合計200~300gを食べ、プロテイン3回(蛋白質90~100g)を飲む事になります。

尚、蛋白質が豊富な食品、脂肪が豊富な食品については過去の記事『必須脂肪酸の摂取にオススメの「脂肪が豊富な魚類」まとめ』『ダイエット・減量中にオススメの「低脂肪な魚」まとめ』『ダイエット・減量中にオススメの「低脂肪な肉類」まとめ』『ダイエット・減量中にオススメの「魚と海藻以外の魚介類」まとめ』などをご覧下さい。

またここでは蛋白質と脂肪の事しか書いていませんが、最低限のビタミン・ミネラルは必要です。これに関しても過去の記事『八百屋やスーパーで手軽に購入できるビタミン野菜・果物まとめ』『各種ミネラルの補給にオススメの食品・食材まとめ』をご覧下さい。ただしこれらの記事の中にある食品の中でも「糖が豊富に含まれている食品」は除かれます。


・前半における簡単な運動内容

運動では「糖を大量に消費するような運動」が必要です。つまり高重量を扱うような筋力トレーニングを行いましょう。

特に普段と異なるのは期間です。カーボ・ローディングの前半は2~3日という短期間になりますから、短期間で効率的に糖を消費する必要があります。例えば午前は足と背中、午後は腕と肩・・・というように1日2回に分けてトレーニングを行うと良いでしょう。

また全身運動として「短時間で全力運動を繰り返すようなインターバルトレーニング」もオススメです。特にインターバルトレーニングの中では5~10分という短時間で、10~20秒の全力運動と10~20秒の休養をひたすら繰り返す「HIIT(ハイレベル・インターバルトレーニング)」という方法があります。これを行う事で短時間で爆発的に糖を消費できます(肉体的・精神的負担が大きいので普段だったら頻度を考える必要があるが、カーボ・ローディングは短期間なので問題ない)。

しかしこうして言葉で言うのは簡単ですが、それらの運動を糖を制限した状態で行う事になります。またボディビルダーの場合、糖だけでなく脂肪も制限した状態で行う事になります。ごく短期間とは言え、かなりつらいものがあります。

人によっては自律神経系がダメージを受け、食欲が落ちてしまう事があります。その場合、1回に口にする食事の量を減らして、1日の食事の回数を増やしたり(1日6回程度)、あるいは食材、味付け、調理法を変えるなどして、飽きさせないような工夫をしましょう。そうすれば前述した食事の例でも苦痛を軽減できます。

また精神的に落ちてしまうという事も十分に考えられます。どのような対策をすべきか、カーボ・ローディングに入る前に、あらかじめ想定しておくと良いでしょう。そもそも無理のない体重設定をしておく事も重要ですね。


・後半では「高炭水化物+最低限の運動」

続く後半の2~3日では、逆に運動を最低限の量にまで抑え、糖を大量に摂取する必要があります。これによって一時的にではありますが、カーボ・ローディングを行う以前よりも、筋肉内の糖の貯蔵量を上げる事ができると言われています。その状態で当時に臨む事こそ、このカーボ・ローディングの主な目的です。

しかし「大量の糖」とは言っても、この後半で摂取すべき糖の量は非常に多いです。人にもよりますが、1日に摂取すべき糖の量は、体重1kg当たり最低でも6gとなります。例えば体重が80kgなら480g、100kgなら600gにもなります。

特に胃の容量にはどうしても限りがありますから、それだけ糖の量が増えれば、自動的に蛋白質や脂肪の量は、最低限の量にまで減る事になります。なので、正しくは「高炭水化物、かつ最低限の蛋白質かつ最低限の脂肪(必須脂肪酸)」という事になります。

またそのように胃の容量には限りがある上、減量から抜け出したばかりでまだ食欲は戻っていません。なので、この後半では、1回の食事の量を減らして、1日の食事の回数を増やす必要があります。

つまり結果として「2~3時間おきに糖を豊富に含む食べ物を口に運ぶ」という作業をひたすら繰り返す事になるでしょう。まるで修行僧のようです。尚、糖を含む食品については過去の記事「バルクアップ・増量中にオススメの食品・食材まとめ」などをご覧下さい。

特にオススメなのが「餅」「バナナ」「カボチャ」「サツマイモ」「ジャガイモ」です(いずれも水分量が少なめで、後述の水抜き中でも利用できる。ただし加工食品を利用する場合、塩分には注意する)。例えば餅の場合100g当たり50gの糖が含まれていますから、1日糖500gが必要となると1kgもの餅を食べる事になります(マルトデキストリンなどを利用する場合、その量も考慮する)。もちろんビタミン・ミネラルも摂取しますが、そのように大量の糖を必要とするため最低限の量だけです。無理せず糖以外(必須脂肪酸・ビタミン・ミネラル)はサプリメントに頼っても構わないと思います。

尚、ボディビルダーなどのように規定となる体重がある場合も、基本的にこの後半は同じ内容になります。つまり糖を大量に摂取し、その上で運動量を減らす訳です。

しかし糖を大量に摂取する事による体重の増加で、人によっては規定となる体重をオーバーしてしまう事があります。それを防ぐためには、この後半に入る前までに、なるべく「糖の補充による体重の増加を見越した体重」にまで減らしておく必要があります。


ちなみに球技スポーツなんかでは全く気にする必要のない事ですが、特にボディビルダーの場合、脂肪をより薄く見せるために、この後半でいわゆる「水抜き」も同時に行う必要があります。

水抜きでは水分の排出を促すために、例えばカリウムを多めに摂取したり、汗を意識的にかいたり(サウナ、半身浴、厚着、有酸素運動等)、塩分や水分が多く含まれる食品(特に加工食品。例えば饅頭やオニギリはカーボ・ローディングには良いが、塩分が多かったりする)を避けたり、あるいは人によっては飲料水までも避ける必要があります。その場合、食事の内容はもちろん、生活習慣についてもだいぶ勝手が変わってきます(水抜きの方法については後日記事にするかも)。


・後半における簡単な運動の内容

この後半での運動についてですが、球技スポーツなどの場合、運動量を減らしすぎてしまうと、体を効率良く動かすための技術や、試合に臨むためのモチベーションなどが低下してしまう事があります。

せっかくカーボ・ローディングをして、グリコーゲンを貯蔵させても、当日体の動かし方が分からない、気持ちが入らない・・・という事はあってはなりません。

肉体的な負担を減らしても問題がないような技術練習、あるいはモチベーションを高める方法(そういう映像を見るとか色々)をあらかじめ考えておきましょう。

これは体重の規定があるボディビルダーでも同じです。当日のイメージトレーニングをしたり、ポージングの練習をしたり、当日までの生活習慣を改めて確認したり、単純にその日に出かけるための準備をしておくなど、運動量を抑えていてもできる事はたくさんあります。

もちろんこれは格闘技やウェイトリフティングのように、体重の規定があって、球技スポーツのように体を動かす場合も同じです。運動量が多くなりすぎないように注意しながら、当日の体の動かし方を確認しておきましょう。


・前半の「糖質制限+高強度の運動」を行わない方法

前半であまりに激しい運動を行ってしまうと、後半でグリコーゲンを補充しきれず、当日までに間に合わなかったり、あるいは不意に怪我をしてしまったり、精神的に大きなダメージを受け、後半で食事量の確保ができなくなったり、あるいは睡眠が上手くできなくなったりする事があります。

それらが起これば、当日のパフォーマンスに大きく影響します。実は前半の「糖質制限+高強度の運動」を行う方法ではそれらのリスクがあるのです。

そのため別の方法として、前半の「糖質制限+高強度の運動」を行う期間を設けずに、そのまま今まで通りの食事と運動量を維持しておき、後半では運動量を低く抑え、糖の摂取量を増やす・・・というような方法も知られています。

つまり後半の「高炭水化物+低蛋白質(+最低限の必須脂肪酸・ビタミン・ミネラル)+最低限の運動」だけを行う訳です。この方法なら前述したリスクをある程度抑える事ができると思います。

もちろんその場合も、ボディビルダーのように規定となる体重がある場合、糖を大量に摂取する事による体重の増加で、規定となる体重をオーバーしてしまうリスクはあります。そのためこの後半だけを行う方法の場合も、やはりカーボ・ローディング入る前までに「糖の補充による体重の増加を見越した体重」にまで減らしておかなければなりません。


カーボ・ローディングの方法に正解はない

例えば毎日続けて試合があるようなスポーツの場合、後半を行う方法だけでも2~3日必要なため、試合の度にカーボ・ローディングを行うという事はできません。

そのような場合、「グリコーゲンをあまり消費しないように1試合を戦う」ような体の使い方も重要になってきます。つまりエネルギーを節約して「楽に勝つ」という事です。そうして試合をこなしていき、2~3日が空いた時に「後半だけ」を行い、グリコーゲンを再補充する訳です。

そうして1年を通し、安定的にパフォーマンスを発揮できるように工夫が必要です。チームスポーツの指導者であれば、それを考えたオーダーを組むという事も重要になるかもしれません。

最後になりますが、カーボローディングの方法に正解はありません。期間を確保できるなら、前述した「前半で糖質制限を行う方法」の方が合っている人もいますし、「後半だけの方法」の方が合っている人もいれば、ここで紹介している方法以外の方法が合っている人もいるかもしれません。

最初に決めた方法をそのまま続けるのではなく、自分にとってより確実な方法を常に探し、自分に合わせて改良していきましょう。



以上です。お役に立てれば幸いです。

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