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(中) バックパッカー料理人 第2便

幻のチーズと至高のヘーゼルナッツ...


旅の荷物は極力少ない方がいい
機内持ち込みできるサイズのスーツケース1つに包丁と砥石、コックコートと着替えと全部入れて、スーツケースの半分は旅路、気になった掘り出し物や調味料を買って帰るために空っぽに。それと、リュックサックには愛用のマックブックとノートと歯ブラシ。
どこを歩いていても、いつも荷物の少なさに驚かれる。
これが旅上手のやり方だ

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ミラノ中央駅から、ブラという街で乗り換えアルバへと向かった。
名物のトリュフ祭までは早かったけれど、町中のショップにはトリュフの文字や絵があふれている。
1泊€13のホステルに荷物を置き、颯爽と街へ繰り出す。
夕飯までまだ時間が少しある、路地好きの僕には嬉しいことにアルバの閑静な街並みは、田園調布のような高級住宅地よりもオクターブ低い、どこか不協和音響く街並みが逆に心地いい。

メインの広場近くにあるトラットリアのカウンターに座り、アルバ産のスパークリングで喉をうるおす。
メニューには、やはり。やっぱりトリュフ...と。
初めてのアルバ。ヒースローで変えたユーロは¥30,000だけ。
でも、初日のディナーは旅の始まりとしても大事だ。

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気付いたら白トリュフを目の前でかけられた子牛のタルタルを頬張り、オススメされたポルチーニのリゾットで初日は腹7分目で満足に終えた。

翌日、約束していたピエモンテでトリュフの売買を専門にやられている方が僕が泊まっている丘の上にあるホステルへ向かいに来てくださり、そこからもう1人、名古屋のイタリアンで働かれているという女性の料理人を迎えに向かった。
迎えに行ったホテルは5星の立派なホテル。いつかそういうホテルに泊まれるようにと気合が入る。

トリュフハンターの方が僕らが料理人ということで気を使ってくださり、ピエモンテ名産の食材の中でも最高の作品を作られている、イタリアきっての職人さんのところへと連れていただくこととなった。

最初の目的地は、ピエモンテ名産品であるヘーゼルナッツ職人
Nocciole d' Elite

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こちらは、世界中の中でも最高峰のヘーゼルナッツと加工商品を作られている。
アルバの街から車で走ること2時間と少し、山を登った緑豊かで見晴らしのいいところに工房はあった。
車をおりると、すぐさまヘーゼルナッツの香りに包まれる。
誘われるかのように工房へ入ると、黙々と仕事を続けるおっちゃんが笑顔で待っている。
イタリアのI.G.P(保護指定地域表示)という、限られた地域内で原材料から生産、加工が行われている商品にのみ付けられる商標に認定されている。
ラベルを一枚一枚手作業で貼っているご主人に商品を味見させていただいた。
まずは、生のヘーゼルナッツを...
カリッ・・・、豊潤な油分とともに香りが広がる。
ヘーゼルナッツペーストは絨毯のように柔らかで高級感溢れるコクと旨味の余韻がいつまでも続く。
ロースト加減や油分の量をカスタマイズすることもできる。油分に香りと旨味が含まれており、ここのヘーゼルナッツは、その油分保有量が他と比べてかなり多いことも世界一と称される理由の1つでもある。
扉の奥へと進むと、そこは工房になっていた。
収穫し、太陽の下で十分に乾燥させたヘーゼルナッツを洗い、子供たちが選別し、2段階に分けられたロースターでローストしていく。
ローストされる前の生のヘーゼルナッツ、第一ローストを終えたもの、そして完成品、さらには温度やロースト具合が違うものと様々なヘーゼルナッツやペーストを味見させていただいた。
たった数分ローストの時間が変わるだけでも仕上がりはものすごく変わり、使用用途や好みに別れるところだ。
目の前に、ヘーゼルナッツの姿形、色、香り、コク...と駆け巡りインスピレーションが湧き上がる。
好みのヘーゼルナッツとペーストを購入し、次の現場であるピエモンテの山のさらに上へと目指す... 

山の頂で作られている幻のチーズ
CASTELMAGNO DA ALPEGGIO

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ピエモンテ州クーネオの山頂の教会が名前の由来であるカルテルマーニョ・ダルペッジョ
今でも年間2トン程度しか生産されていないカステルマーニョは、一時期作る人たちがいなくなり幻のチーズと呼ばれるようになった。
イタリアのD.O.P(原産地名称保護制度)に認定されているチーズで最も少ない。
僕らが、3時間以上もかかってたどり着いた山頂の工房への道中、比較的低い地域でもチーズは作られているけれど、実質味も別格である。
山頂の工房で職人さんは昔ながらの製法を守り続け、放牧されている牛の乳のみで作っているのに対し、山の下の方では、牛舎の牛と羊やヤギの乳も使われていたりする。
それだけじゃない、山頂まで曲がりくねった柵もない細い山道を登り切った工房近くには、カステルマーニョを使った伝統的料理を食べさせてくれる食堂がある。
ここで、カステルマーニョをふんだんに使ったニョッキを食べさせていただいた。

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僕はいてもたってもいられず、食堂のおっちゃんに料理してるとこ見せてくれと頼むと、割腹のいいおっちゃんは笑顔でキッチンへと入れてくれ、料理を1から見せて教えてくれた。
冷蔵庫から粉に下されたカステルマーニョをさっと一口味見してみる、草原の香りが広がるリッチな味わい。目の前に壮大な風景が広がる。
鍋で牛乳を沸かしたところに、これでもかと贅沢にふんだんにカステルマーニョを入れ溶かしていく
「ケチケチしないで、どっさり入れるのがコツなんだ」
おっちゃんは意気揚々と惜しげもなく教えてくれる。
まとめて作っておいたのだろうニョッキを冷凍庫から取り出し、サッと茹でたらカステルマーニョがふんだんに溶け込みトローっと濃度がついたソースに加え、塩を少し加えたら和えていく。
同時進行で作っていたポルチーニのトマトソース煮込みもうまそうだなぁと見ながら、お皿を持っていこうとしたら、これは他のお客さんのだった(笑
他のお客さんのとこへ僕が運んで、キッチンへ戻ると僕らの分もできていて、ポルチーニの料理もサービスで食べさせていただいた。
壮大な景色のなか、チリンチリンっと牛さんたちの鈴の音を聞きながら食べる地元の料理は、どんな3星レストランよりもおいしい。

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おっちゃんと別れを告げ、店の裏へ周り少し上ると、そこにはカステルマーニョの名前の由来になった教会がそびえ立ち、近くには山の水が流れている。
透き通り凍えるほど冷たい水は、足の爪の先まで浸透していくようにおいしかった。

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お腹もいっぱいになったところで、山をくだりワイナリーへと向かっていく...

To be continued...

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