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無免許講師が往く、ドラム講義②<練習環境整備編>

説教くさい導入・ガイダンス編を耐え抜きよくぞここまで辿り着いて下さいました、本当にありがとうございます。あんたは偉い。第2回まだまだ本編は始まりません。そもそもドラムを始めるとは一体どういうことか、経験則を元に世間話から進めていきましょう。野球はグラウンド整備から始まる、練習環境づくりが全てを決めるといっても過言ではありません。

この世には、生まれ落ちた瞬間から音楽室を手にできる層の存在がある。

恐ろしい話です。主宰は文字通り、音楽一家の先生にレッスンを乞うておりました。一族が一人残らず全員音楽の道に進むということ。主宰よりずっと幼い娘さんも、既に英才教育の最中におりました。可愛いねえなんて言って近付こうものなら袋叩きに遭うような、そんな緊張状態がありました。個別レッスンという異空間。保護者の居ないブラックボックス。

物心つく前から楽器に触れる機会を享受される、なんという幸せか。芸事の世界に没入していくってこういうことなのだなあと感じたこともまた事実。住宅密集地に生まれ、昼夜問わず好き勝手音が出せるわけではなかったですから、そもそものスタートラインが全然違います。だけど、出自だけで全てが決まるわけではない。以下、主宰が歩んだ試行錯誤の歴史です。

ガムテープでぐるぐる巻きにした週刊誌を積み上げて、練習台代わりに。

今でこそ練習パッドってお求めやすい価格に落ち着いてきた感ありますが、主宰の頃はまだまだ無茶苦茶高価な買い物だった。消音機能なんてナニソレ状態でしたし、「お前はどう足掻いたってプロにはなれない」「金の無駄、時間の無駄」「ジャズなんて20世紀の音楽なんだから21世紀にやるな」等々信じられないような罵声の数々を浴びたものでした。

今だからこそ話せる逸話ですが、両親は大のジャズ嫌いでした。全部一緒に聞こえるそうです。そんな二人をどうにかこうにか説き伏せてライブ会場へ足を運んでもらうのに足掛け10年を要しました。長く険しい道のりだった。それなりに音楽好きな家庭に生まれ落ちたはずだったのにここまで苦労するわけですから、ドラムを始めるってのは並大抵のことじゃありません。

屋内での練習が難しいなら、屋外でやれば良い。

至極当然の論理ですが、なかなか火中では冷静な判断って難しいものです。音の進行方向を意識して、壁を前にするのではなく広い空間を前にして練習するのが吉だと主宰は考えます。「響きを意識する」ってのはそういうことです。可能であれば、反響が多い場所と少ない場所を交互に使い分けられるとかなり練習効率は高まるような気がしております。

逆説的ではありますが、壁を前にした練習も時には効果大です。シンプルに鏡やガラスといった「自分を俯瞰できる」環境選び。ダンスサークルが鏡に向かって練習しているのはなにもナルシズムの極致などではなく、「動きを客観視できる」からに他なりません。ドラム教室が壁一面、鏡だらけなのもそれが理由です。常に、第三者の目線を忘れない。

大切なのは、この異なる二つの視点を「並列」に持ち続けることです。

ドラマーはついつい練習台と1対1になりがち。それだけ没入度の高い楽器、という裏返しでもありますが。常に「主観」と「客観」の両方を意識の下に置くこと。鏡やガラスに対して斜めに立ったり、横に立ったりすることで、フォーム分析を3D化できます。音を出すということは人間工学と密接に結び付いている、「叩き方が音になる」と声高に叫ばれるのはそういう理由。

言わずもがなですが練習台選びにも正解がありません、逆説すれば無限に正解がある。敢えて跳ね返りの強いパッドを選ぶのも良し、跳ね返りゼロの代名詞といえば「ふくらはぎ」。身体の一部だって、練習台代わりになる。とはいえ、最初の買い物は「なるべく大き目な練習パッド」にしておくのが安定だと考えます。「なるべく大き目」というのが味噌です。

「大は小を兼ねる」という言葉があります。

この先、無免許講義の最重要キーワードたり得るかもしれません。携帯性や消音性に気を取られるあまりつい見落としがちな観点ですが、そりゃ練習台も大きい方が良いに決まってる。だって、標的は大きいほど射抜きやすい。初学者がいきなり、小さい的を射抜けない奴は才能がないなんて言われたら心が折れちゃいますよ。的を絞るのは、上達してからで全然OKです。

「広い打面を意識できる」ことも後々バッキバキに効いてきますから、今に見てろよってな感じでとびっきりデカいのを買っちゃいましょう。パッドと台座が切り離せるモデルを選ぶと、場所を問わず練習環境が確保できてなおよろしだと思います。少年ジャンプを積み重ねて叩くのも勿論良いですが、せっかくですから「自己投資」の意味も込めて。

次回は「スティック選び」編を予定しています。

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