さかさきかおる

作家。R6.3.27『噓つき姫』(河出書房新社)発売予定。「海岸通り」(文學界2024…

さかさきかおる

作家。R6.3.27『噓つき姫』(河出書房新社)発売予定。「海岸通り」(文學界2024年2月号)/「イン・ザ・ヘブン」(小説現代2023年10月号)/「ニューヨークの魔女」(スピン4号)など https://lit.link/kaorusakasaki

最近の記事

さかさ近況㊴

『嘘つき姫』発売から1カ月ほど経ちました 売れゆきはよくわかりませんが、とにかくいろいろな人に手にとってもらえていて、たいへんうれしく思っている。  書評やインタビュー記事についてもいくつか出ており、以下のページにまとめている。  概ね高評価で、「ノーベル賞待ったなしか…」と思わせられる。ノーベルはDMで連絡乞う。 SFカーニバルに行ったよ 初めてSFカーニバルに行った。  とにかく人間が苦手なので、こっそりうかがった。たぶん「リモート」の世界だったらぜったい生身の

    • 『噓つき姫』宣伝関連まとめ(5/11更新)

       書評やインタビューなど出てきているので、このページにまとめておきます。読んでみようかどうしようか迷っている人の参考になれば。イベント系なども(もし)あれば随時追記していきます。 『噓つき姫』河出書房新社作者による作品紹介 あとがきに代えて インタビュー①ナニヨモ(2024年4月5日) ②週刊文春4月25日号 ③小説丸「熱血新刊インタビュー」(吉田大助氏)5/11 書評①Kaguya Book Review特別編(堀川夢氏) ②読売新聞4月16日(川村律文氏)

      • さかさ近況㊳

        『嘘つき姫』発売から一週間ほど経ちました おかげさまで、多くの方に手にとってもらえている。毎日感想が読めるなんて、最高じゃあないですか…  インタビューや書評もぽつりぽつり出ている。  お好みの作品が人それぞれなのもうれしい。その中でも、書き下ろしの「私のつまと、私のはは」が評価されているのもうれしい。これは、初めは雑誌のスピン用に書いたのだが、理由は細かく書かないがボツになったものだ(その後「ニューヨークの魔女」を書いた)。それを大幅に書き直し、正直かなりよくなってい

        • さかさ近況㊲

          日本推理作家協会賞にノミネートされたよ 我ながらすごい字面だなと思うが、拙作「ベルを鳴らして」が、第77回日本推理作家協会賞の短編部門の候補作になった。  作品はこちらから読める。 https://amzn.asia/d/hs8oC8d  ツイートもしたが、「ベルを鳴らして」は、第14回創元SFコンテストの最終候補作でもある。高い評価を受けながら(と私には読めた)受賞には至らなかったので、その日はA5黒毛和牛をやけ食いしたものである。そういった経緯があるものだから、その

          作家がガチで自分の小説の入試問題を解いてみた(答え合わせ編)

          ダラダラ系前置き 前回、自分の小説が入試問題に出たので、答えを見ずに、制限時間も決めて解いてみた。  全体的には中略も多く(大事なところも飛ばされた…)、内容把握がそもそも難しいだろうなというのが所感であった。受験生には申し訳ない気持ちになる。  ということで、今回は各予備校の解答例を見ていく。今のところ、阪大の解答速報を出している予備校は3つ(リンクはPDFファイルです)。 河合塾 https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/h

          作家がガチで自分の小説の入試問題を解いてみた(答え合わせ編)

          作家がガチで自分の小説の入試問題を解いてみた(解答編)

          だらだらとした前置き(とばしてよい) 令和5年度の大阪大学文学部の二次試験の国語に、拙作「母の散歩」が出題されたそうだ。問題や解答はこちらから読める。  初出は2023年5月号の文學界で、「幻想短篇特集」のくくりで執筆をした。現在は『水都眩光 幻想短篇アンソロジー』(文藝春秋)に「いぬ」と改題して収められているものが一番読みやすいだろう。  ずいぶん最近の作品が入試に出るもんなんですね。受験生諸君、今後は坂崎かおるも入試対策で押さえてくれよな!  私は、いつか自分の小

          作家がガチで自分の小説の入試問題を解いてみた(解答編)

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          最近読んだもの、見たもの なんといっても今月は、エリザベス・ムーン/小尾芙佐訳 『くらやみの速さはどれくらい』(早川書房)が一番だった。今更読んだのかという感じだけど、二日で一気に読んでしまった。私はあんまりアルジャーノン味は感じず、どちらかというとカズオ・イシグロの作品群を思い浮かべたが、とにかくよかった。自閉症が「治療」できるようになった近未来、その治療の恩恵の受けられなかった最後の自閉症世代が主人公。そんな彼が、新しい自閉症の「治療」を受けるかどうか…というものだけど

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          単著が、来る! 念願の単著が、3月27日に、河出書房新社より発売される。  去年の夏ぐらいから徐々にお話を進めてきた感じなので、私にとってはようやく口にできる!という感慨もある。ちなみに私の作業はもう終盤だぜ(仕事が早い!)。  これから、収録作とかもろもろをお伝えしていければ、と思うが、今回のために書いた書き下ろし短中編2本をぜひ読んでほしい。どうしてだかよくわからないけど、短編集には既出作品の他に、書き下ろしを一編ほどつけるという風習がある(読者サービス?)。他の作家

          【千字戦②】肋骨レコード

           イリナの肋骨は開いている。  正確にいうなら、肋骨の数が足りていない。12対24本あるはずのそれは、右胸の部分が一本足りず、11本しか見えない。それは真ん中のあたりで、だから、胸がぽっかりと、扉のように開いて見える。私は彼女に会ったことがないので、その理由はわからない。名前だって、そのレントゲン写真の隅に小さく、「Ирина」と記されているからそう判断しただけで、性格も、年齢も、背格好も、なにもわからない。 「我がソビエトは、肋骨も足りないのね」と、ベラが言う。「男性のが少

          【千字戦②】肋骨レコード

          【千字戦①】前を向く

           僕が右斜め上を失ったのは、羽田空港の五番ゲートだった。  空港の職員は若い男性だった。高校生ぐらいに見えた。 「お客様」  金属探知をくぐったときに声をかけられた。いくつか棒状の機械で検査された後、その男性職員は、残念そうに言った。「こちらの方向はお持ち込み頂けません」  ホウコウ、という言葉がよくわからず、僕は「ライターあった?」と訊き返してみた。「禁煙してずいぶん経つんだけど」 「いえ、方向です。方角、矢印。お客様は、右斜め上ですね」 「右斜め上」 「ええ、右斜め上」

          【千字戦①】前を向く

          さかさ近況㉞

          文學界2月号に載るよ 2024年1月6日発売の、文學界2月号に、中編「海岸通り」が掲載される。  ニセモノのバス停がある老人ホームで働く清掃員の久住さん、という女性を主人公にした話だ。140枚ぐらいの長さなのだが、この量を書いたのが初めてで、今までの百枚チャレンジの効果が出ている、と思う。新年から坂崎はがんばってるので読んでね。 最近読んだもの、見たもの だいぶ期間が空いてしまったので、コンパクトに紹介する。  SFではチャイナ・ミエヴィル『都市と都市』(ハヤカワ文庫S

          第6回阿波しらさぎ文学賞を辞退しました

           私、坂崎かおるは、第6回阿波しらさぎ文学賞において大賞を頂戴しましたが、このたび、賞の辞退及び賞金30万円の返還を行いました。  経緯としましては、選考委員及び応募者など各種関係者への対応について、徳島文学協会及び徳島新聞社へ疑義があり、自身の作品を預けるに足る団体ではないと判断したためです。  阿波しらさぎ文学賞の一連の流れについては、当事者でもある小山田浩子さんのツイートが詳しいので、そちらをお読みください(リンクは張りません)。  私に関する経緯については以下のと

          第6回阿波しらさぎ文学賞を辞退しました

          渦とコリオリ

           水流は左に渦を巻いている。  市民ホールのお手洗いは時間にとり残されているようで、いまだに和式の個室が併設されたつくりだ。鏡の右下には小さく「お弁当のご用命は」という広告が入っており、市外局番から電話番号が示されていて、私は何となくそれを懐かしく見た。鏡の中にはばっちりと化粧をした自分が容赦なくうつっている。にっと笑顔をつくってみせると、目じりのあたりが罅われる。隣のシンクの蛇口も捻り、水を流す。左の渦。姉が死んでから、流れ出る水という水の渦という渦は、すべて左回りにな

          さかさ近況㉝

          異形コレクションに載るよ なんと井上雅彦先生のライフワークともいうべき『異形コレクションLVI 乗物綺談』(光文社文庫)に短編を書きおろした。  幻想怪奇のショートショートコンテストで優秀作として選出してもらった「僕のタイプライター」を井上先生が気に入ってくださって、お声がけいただいた。賞はとっておくものである。井上先生はもちろん昔から読んでいて、初めて手にとったのは、確か『世にも奇妙な物語』を観たからだった気がする。異形コレクションも中学生ぐらいから読んでいたものだから

          さかさ近況㉜

          最近読んだもの、見たもの『リバタリアンが社会実験してみた町の話:自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング/上京 恵 訳(原書房)  リバタリアン、というのはアメリカの自由主義者の名称だが、ある一定の勢力を誇っており、全体としては極小ながらも党派としては共和党、民主党に次ぐものらしい。ここらへんはちょっと日本ではピンとこない。  舞台はニューハンプシャーのグラフトン。土壌としてリバタリアンが住みやすい歴史があったものの、その関係の人たちが

          さかさ近況㉛

          最近出た短篇について 9月はいくつか出ているので、ちょっと解説してみる。私はスーパーインフルエンサーじゃないので、ちょくちょく宣伝しないと、「え、出てたんだ?」みたいな現象が起こるので、ご容赦願いたい。 「いぬ」(『水都眩光 幻想短篇アンソロジー』(文藝春秋))  文學界5月号の特集で書いたもの。「私」が、母の遺品を整理しているところにクリーニングの預かり証を見つけ、それをとりにいったところ、「架空の犬」を渡されるという物語。  こちらの掌編をベースにしている。  当