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【ショートショート】夏の匂い

 彼女は100円ショップが好きだ。目まぐるしく新商品が発売されるのが楽しいらしい。故によく100円ショップに赴いている。以前気になって数えてみたが、大体週一のペースで近所の100円ショップに通っていた。そんなに行って何を買うと言うのだろうか。全く分からない。
 どうやら、僕としては「必要な物がある時にだけ行く場所」と言う認識しかないそこは、彼女にとってはお手軽テーマパークに見えているようだ。

「あっ、やっぱりー! いぐさの匂いがしたと思ったー!」

 買い物かごを右手に、彼女がすんすんと鼻を動かす。掠めた匂いの正体は、目立つ棚に並べられた季節商品。いぐさを使用した枕だった。
 その匂いの正体に満足したのか、彼女は再度鼻をすんすんと動かす。そう言えば彼女は線香の匂いが好きだと言っていたっけ。ふと転がり落ちてきた記憶を拾って、ひとり納得をする。
 彼女は夏の匂いが好きなのだろう、と。

「渚ってそういうの好きだよな。線香とか」
「うん。なんか『夏ー!』って感じの匂いじゃん? それに、子供の頃の夏休みを思い出すんだよねー」
「もしかして実家?」
「そうそう。おばあちゃんちの畳の匂いとか、仏壇の匂いとか。そういうの嗅ぐと今でも『夏休みが来た!』って感じちゃう」

 ころんと買い物かごに入れられた枕が二つ。ああ、今年の盆休みには彼女と一緒に実家に帰ってみようか。


いぐさの匂いが好き過ぎる。
夏は嫌いだけど夏の匂いは好きなんだ。


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