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#創作

35ミリ

きっと誰でもいいのだろう
嘔吐しきれなかった憂鬱を
一緒に噛みしめてくれるのなら
きっと誰でもいいのだろう
優しく溢れる陰鬱を
一緒に舐めあってくれるのなら

苦し紛れで歩みを続けて
鋭く虚栄をまき散らす
さすような冷雨に似た黒髪
永久凍土のなれの果て
君と僕は同じだね
なんて言ったら怒るかな

どこ吹く風で歩みを続けて
漂う虚構に身を任せる
酔ったまなこで見つめる街は
いつか観た35ミリの淡い夢

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質量

その張りつめた君の魅力が
どこから来たのか知ってるよ
たらふく飲みすぎた泥水は
飽和点なんかとっくにこえて
君のバランスを崩すわけだけど
ぷっつり糸が切れる前の
最期の痙攣が伝わって
背筋を伝う憎悪の甘みと
奈落の吐息で身罷る快感
舌でころがし脳汁すすって
同族嫌悪でしめつける
裏腹の優しさと
滑らかな憎しみを
今日も非生産的に抱きしめようか

かじりとった憐れみの
果汁がしたたり鎖骨を濡らす

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マシュマロの町

ここに来て得たのは退屈だった
認めたくはないけれど
きっと張り合いがなくなったんだ
今の僕は死んでいる
殺される直前ほど
生きたいって思うのは
やっぱり当たり前のことみたいで
甘い香りが一面漂う
マシュマロみたいなこの町は
僕の気力を奪うだけ

排水溝に飛び込めばいい
淵めがけて飛び込めばいい

でも今の僕には
願うだけで何もできやしない
最低限の興味すらも
最低限の気力すらも
マシュマロみたいな

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羅刹

羅刹になりきり不幸を喰らう
どうせ有限その他大勢
はき違えの個性で優劣つけようと
無我夢中で貪り尽くし
嚥下し消化し血肉にし
覚悟もないのに踏み入れた

ぬかるみ冷たく腐臭を放ち
気づいた時には空まで覆った
汚泥の天井光は届かず
目隠しされた百鬼夜行が
本能のままに踊り狂う
求め続けた退廃と
広げられた空洞で
羅刹になりきり不幸を喰らう

見知らぬ苦悩は羨望し
馴染んだ苦悩は忌み嫌う
羅刹になりき

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いつかの夜

傷口から溢れる優しさを
必死で舐めとろうとした君と
傷口から溢れる優しさに
必死で夢を見出そうとした僕は
世界の隅っこの湿気だらけの部屋の中
お互いの憂愁を天秤にかけ
危うい綱渡りに身をやつした

背負った重みの優劣を
比べる必要はなかったけれど
脆くて頼りない砂の城を
なんとか守りぬけたのは
比べて蔑み同情し
絡んでもつれてこじらせて
憤怒と慈愛と嫌悪なんかをないまぜにした
強固な城壁を築くこと

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深く、深く

壊れるあなたを見てみたい
パンケーキみたいな甘い香りに包まれて
小さな幸せを謙虚に永続させて
パンケーキの油みたいにじわじわと
あなたの脳に侵蝕するそれは
脳のシワをいつのまにか溶かしちゃって
あなたは惰性の幸福を
それとしらずに食み続けるんだ
だからあなたに壊れてほしい
何十年もどんよりと輝き続けるよりも
一日だけ目も眩むほどの輝きを
蛍の光が綺麗なのって
きっとそういうことなんじゃないかな

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日陰生まれすみっこ育ち

すでに来世に期待しちゃってる
コールド確定消化試合
見込みがないなら見られてもない
そんならさっさと踊ろうか
開き直ってとんたたた

子宮の中からこんにちは
すでに10点ビハインド
どうしてこんなになっちゃったかな
コウノトリさんの方向感覚
狂ってふらふら無差別爆撃
そうだそうに違いない
自意識過剰で被害者意識
棚に上げすぎフェードアウト
どうせ人間八十年
科学者さんたちちょっと待ってね
日々精進

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命儚き笑えや乙女

恋に恋する十四歳
臓器に恋する殺人狂
二人はプリキラ正義のヒロイン
今日も俗世にふれまわる
人生やっぱり諸行無常
狂喜乱舞の一夜の悪夢
どうせ悪夢だすべからく
歌えや踊れや細胞諸君
さあさあお席にお座りなさい
間もなく上映始まります
マナー違反はさらし首
良い子のみんなはおめめをひん剥け
大人たちはご退出
まもなくまもなく本編へ
あかりが消えたら逃げられない

私は恋を、したいのです
純粋潔癖神経

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眠りたい

生きてんのかな
死んでんのかな
生ぬるいな
感じないな

味がしないな
匂いもしないな
色は薄くて無機質で
痛くないな
喉も渇かないな
勃ちもしないな

笑わないといけなくて
驚かないといけなくて
喜ばないといけなくて
悲しまないといけなくて
どれもこれもふりして切り抜け
人間ごっこに四苦八苦
どんなお面を被っても
心の底では少しだって
何かを感じることはないのに
涙だけはどうしてだか
いつだって

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ポーズ

ごっそり根こそぎまるまると
気づいた時にはもう遅く
すでに脳内膿みはじめ
濁った蜜が腐臭を放つ

あの頃きいた音楽を
あの頃よんでた小説を
あの頃みていた映画やアニメを
そうだあの頃僕はきっと・・・

研ぎ澄まされた憎悪や嫉妬
張り裂けそうな孤独感
突き抜けるような自己嫌悪に
無鉄砲な愛情も
みんなどこかで落っことしたのか
それとも自分で削ぎ落としたか
ぽっかり空いたおおきな穴を
埋めようと必死に

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空はどこまでが空なのだろう
僕たちが見ているあの青い空を
空というのなら
飛行機はぐんぐん高度を上げ
空に向かっていくけれど
それに乗った僕たちは
どこからここが空なんだと
確証を得ればいいのだろう

空はどこまでが空なのだろう
試しに辞書を引いてみた
曰く空とは地上をとりまく
広がりのある空間のこと
じゃあ地上と空の境目って
僕の頭が颯爽と
通過しているあの空間を
なんて呼べばいいんだろう
ふっ

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地球人Aで何が悪い

教室の片隅の日陰のあたりの
机上に広がる妄想性交
穴ぼこチーズの物知りさんは
すかすか頭と体を抱きしめ
よだれを飛ばしてまくしたて
曰くあの子は云々あいつは云々
キラキラお目々で群衆興奮
辟易Aさん小さくなって
そらした視線に光はない

大衆娯楽を提供します
私の望みはみんなの望み
あなたの望みは知らんふり
教室の真ん中でふんぞり返る
王さま衣服は着ておられない

首から下げたドッグタグ
英数字の

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2・5

境界線を隔てた先に
広がりすすむ独自の針
触れることは許されない
負を排除した甘美な虚構と
部外者の僕とをつなぐ接点は
愛と呼ぶべきものだろうか

そのものになりたかったわけじゃない
ただ美しくなりたかった
ただ近づきたかった
そこには性別の違いなどはるかに超えた
生命の理をくつがえす力が存在した
窓外に広がる理想郷と
籠りよどんだ現実が
混ざり溶けあい浸食し
輪郭を失った境界の果てで
僕はあたら

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憂鬱キャラバン

高架下をくぐり抜け
フィルムの中にひとっ飛び
井の頭線はスタッカート
跳ねて響いて過ぎていく
池のほとりを過ぎてみて
水の香りの残る道
川沿い歩いて久我山へ
憂鬱振り切り逃げてみよう
現実振り切り逃げてみよう
ふかした煙が漂って
消えていくのはお空の彼方
逃げよう逃げよう目をつぶろう
耳をふさいで鼻をつまんで
でないと近道したくなる

逃走劇の結末の
終点意外と早かった
北に逃げると聞いたけれど

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