質量

その張りつめた君の魅力が
どこから来たのか知ってるよ
たらふく飲みすぎた泥水は
飽和点なんかとっくにこえて
君のバランスを崩すわけだけど
ぷっつり糸が切れる前の
最期の痙攣が伝わって
背筋を伝う憎悪の甘みと
奈落の吐息で身罷る快感
舌でころがし脳汁すすって
同族嫌悪でしめつける
裏腹の優しさと
滑らかな憎しみを
今日も非生産的に抱きしめようか

かじりとった憐れみの
果汁がしたたり鎖骨を濡らす
ぬめった善意に舌を這わせ
渇いた悪意に喉ならす
弧を描いた核心に
吸いつき飲みこむ魚介類
ひっくりかえした蛙の腹を
むさぼり散らかし血をすする
黄色い線の内側へ
プラットホームで綱渡り
胃からはみ出た憂愁を
舐めとる君を想いながら

君の質量の話だけれど
僕の質量でもあるらしい
朝陽が包む窓外に
憧れ望み手をのばし
触れた指先から真っ逆さま
崩れて溶けて腐臭をはなつ
縁に立っているくらいがちょうどいい
蒸れた裏路地でねずみと一緒に
慈愛に満ちた嫌悪感を
舐め合いすすり抱きあおう

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