マシュマロの町

ここに来て得たのは退屈だった
認めたくはないけれど
きっと張り合いがなくなったんだ
今の僕は死んでいる
殺される直前ほど
生きたいって思うのは
やっぱり当たり前のことみたいで
甘い香りが一面漂う
マシュマロみたいなこの町は
僕の気力を奪うだけ

排水溝に飛び込めばいい
淵めがけて飛び込めばいい

でも今の僕には
願うだけで何もできやしない
最低限の興味すらも
最低限の気力すらも
マシュマロみたいな町の中に
ふわりとからめとられたみたいで
粘つく町の胎内で
綺麗さっぱり消化されてしまったらしい

大切な重みをなくした僕は
僕ではない誰かとして
糸のついた人形みたいに
今日もこの町のどこかを歩きわまる
救いを望んで手を伸ばした
痛みを忘れたその先に
待っていたのは不感の苦痛で
濡れもしなけりゃ勃ちもしない
新しい淵に手を伸ばそうとしたけれど
僕の身体はもう動かない
何十年も前に撮影された
フィルム映画の一コマみたいで
スクリーンの外側の傍観者として
僕だったものは
今日も座席に座り続ける
軽くなった体を預け
何度も何度もあくびをしながら

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