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チェロレッスン記録

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習っているチェロのレッスン記録です。
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#チェロ

24.6月チェロレッスン②

24.6月チェロレッスン②

「今日何時に帰ってくる?」

仕事から家に帰り、すぐにレッスンの準備をして再度出掛けようとしたとき、ダンナに聞かれた。

「んー、たぶん18時?センセの気まぐれで延長することがあるかも。」

前回のレッスンは2時間半だった。

ダンナ、何か悟ったような顔。
「あー、あの人めんどくさいからなぁ。
わかった。帰るとき、連絡ちょうだい。パラグライダーの大会でもらったビールでBBQしようよ。」

センセ…

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24.6月チェロレッスン①

24.6月チェロレッスン①

「センセ、私また、センセを怒らせるようなこと、しました?」

そう言いながら、私はおずおずとレッスン室に入った。

先生、キョトンとした。
「なんで?」

「だって…メールに返事がなかったから。」
私は先日の所属オケ定期演奏会の翌日に先生へ『おかげさまで無事終わりました。』と長文メールを送っていた。

「ああ…!」
先生、思い出したように頷いた。
「ゴメン!メールは読んでいたんだけど、返事するタイ

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24.5月チェロレッスン②:おしゃべりばかりだった。

24.5月チェロレッスン②:おしゃべりばかりだった。

「夜の職場、大丈夫なの?」

レッスン室へ入るなり、先生にそう言われた。

私の職場の事故?事件?が県内版トップニュースになったのは、今週初めのことだった。

その時私は千葉へ短期出向していた。
報道の随分前に、私には連絡があった。
何せ、当事者の一人だったから。

「大丈夫ですよ。だって、事故なんて最初からなかったんですから。」

「どういうこと?」と先生が訝しむのは無理もない。

ここに具体的

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24.5月チェロレッスン①:「聴きに行けるかも。」

24.5月チェロレッスン①:「聴きに行けるかも。」

先生には先日会ったばかりだが、レッスンは1か月ぶりだ。

私が楽器を準備して椅子に座るなり、先生が話し始めた。

内容は、レッスンと関係ないことばかり。
仕事のこと、親戚のこと、最近のニュースのこと。

先生のお喋りが途切れたタイミングで、私は言った。
「今の時間、センセにとっては休憩時間になってるんでしょう?」

先生は一人で30分も喋っていた。

私の前には4人、後ろには1人、レッスンが入って

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24.4月チェロレッスン①:ちょっとしんどい時期。

24.4月チェロレッスン①:ちょっとしんどい時期。

レッスンを行うビルのエレベーターが改装工事中だった。
仕方がないので、チェロを背負って階段で5階まで上がる。

レッスン室に入ると、
「階段、大変だったろう。」
と先生が労ってくれた。

「いいえ。貧血治ったから、楽勝ですよ♪」

しまった。口が滑った。
案の定、先生の表情が険しくなった。

「なに、お前また貧血になってたの?」

幼少期からの栄養不足が祟って、私は栄養の吸収が悪い体質である。

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24.3月チェロレッスン②:次のステップへ。

24.3月チェロレッスン②:次のステップへ。

「夜、久しぶりだなぁ。3週間ぶりか。」

レッスン室に入ると、開口一番先生にそう言われた。
3週間ってそんなに久しぶりでもないと思うのだが、なんだかんだで先生とは毎週顔を合わせていたからな。

「確定申告は終わりましたか?」
私が聞くと、
「15日には終わったよ。年明けから少しずつ書類揃えるようにしていたからね。」
先生、得意げにVサインしてみせる…かわいい。
先生の家、物が多いからなぁ。
「えら

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24.3月チェロレッスン①:無伴奏チェロ組曲の楽譜

24.3月チェロレッスン①:無伴奏チェロ組曲の楽譜

扉が半開きになったレッスン室から“バッハ無伴奏チェロ組曲3番サラバンド”が聴こえる。
この華やかで軽やかな演奏は先生のものだ。
すぐにわかる。

「なつかし〜。」
そう言いながら、私はレッスン室に入った。
私が2年前の発表会で弾いた曲。
(私のサラバンドは重っ苦しい。低音を効かせたがるからだ。)

先生は私に気付かないようで、演奏を続ける。
いつものことだ。きっと、どこかの演奏会で弾く予定があるの

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24.2月チェロレッスン②:"絶望先生"からの、復活。

24.2月チェロレッスン②:"絶望先生"からの、復活。

自宅練習で時間があれば、オケで演奏するブラームス交響曲第3番のいずれかの楽章を、音源と合わせて通して弾くことにしている。

1楽章の最後の部分、弦楽器の嵐が去って、天から光が差し込むようなチェロのソロを弾く時なんか、チェロやってて良かった、オケやってて良かった、生きてて良かった!とさえ思えて泣けてくる。

           ★

前の生徒さんと入れ替わりにレッスン室へ入った。

「先日はお邪魔

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24.2月チェロレッスン①:音楽家のスポーツ障害。

24.2月チェロレッスン①:音楽家のスポーツ障害。

私のレッスンは、ほかの生徒さんが入っていなければ、なるべく一番最後にしてもらっている。
レッスン室の後片付け(ピアノの埃を払ったり、簡単に床掃除をしたり)を手伝うためだったが、最近は先生の話が長く、レッスン時間が大幅に延びるためだ。

今日も、私がチェロを持って椅子に座るなり、先生の話が始まった。
内容はレッスンのことではなく、日常のとりとめのないもの。仕事に遅刻しそうになったとか、昨日何を買って

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24.1月チェロレッスン②:あなたが私に未来をくれた。

24.1月チェロレッスン②:あなたが私に未来をくれた。

先週に引き続き、今週もレッスン。
今回は、私が一番最後だ。

「今日はセンセのお父さんの月命日じゃないですか。こんな遅い時間までレッスンしていていいんですか?」

楽器をケースから取り出しながら私が聞くと、先生がびっくりした表情をした。

「どうしました?」

「よく覚えているね。」

「…そりゃあ、そうですよ。」

先生の返事に私は訝しみながらそう言った。
先生はちょっと困ったように私の疑問に答

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24.1月チェロレッスン①:先生の涙。

24.1月チェロレッスン①:先生の涙。

年明け最初のチェロレッスン。
先生のご指名で私がトップバッターだ。

昨年末、先生は先生のお父さんを看取った。
私と話がしたいんだろうと思い、だいぶ早めに家を出た。

音楽教室に入ると、シン、と静かだった。
時刻はまだ午前9時を過ぎたばかりだ。

一番奥のレッスン室だけ、明かりが灯っていた。
教室の入り口の扉が私の背後でパタンッと閉まったと同時に、その明かるい部屋から「お入り。」と先生の声がした。

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12月チェロレッスン①:今日ぐらい、休んだら?

12月チェロレッスン①:今日ぐらい、休んだら?

激務が続いている。

この時ばかりは、非日常の時間が過ごせるレッスンの日が楽しみだった。

「こんにちはー!」

と私がレッスン室に入るなり、先生がポカンとした。

「雰囲気が変わった?発表会の時と違う…あ、髪切ったのか。」

さすが、おしゃれにこだわる先生。
私の家族、職場仲間は誰も気づいていない。
ここのところ、人前に立つ仕事(発表とか講師とか議長とか)が多いから、せめて身綺麗にしておこうと、

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11月チェロレッスン②:歳を重ねると病気の話題が多くなる。

11月チェロレッスン②:歳を重ねると病気の話題が多くなる。

「センセ、外は雪が舞ってますよ。」

言いながら、私はレッスン室に飛び込んだ。
室内は暖かい。

「うん。急に寒くなったもんなぁ。」
と、先生。

「風邪に気をつけてくださいね。」と私が言うと、先生「僕は今のところ健康なんだけれどね、」と言って、浮かない表情をする。

「何かあったんですか?」
「仕事仲間のヴァイオリニストがね。脈が遅いということで病院へ行ったら、あっという間に心臓に付ける電子機器

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7月チェロレッスン①:“happiness”

7月チェロレッスン①:“happiness”

「夜先生は頑張りすぎですよ。」
研究の進捗状況を報告した後、上司にそう言われた。
頑張りすぎ?私はやるべきことをやっているだけなんだけれど。

疲れが溜まっている自覚はある。
仕事に行くのが辛い。何か嫌なことがあるわけではないのだけど。

仕事の帰り道。
車の中でFMを聴いていた。
嵐の“happiness”が流れた。

学生時代、みんなで歌ったなぁ。
先が見えなかった頃、歌詞に励まされた。

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