魔法の扉と不思議な冒険(後編)
※物語は無料で読めます(*'ω'*)
第2章:扉を開こう
ドンドンと響く、冒険の鼓動と一緒に僕は扉を開いた。
今まで見たことがない世界に触れられる興奮と行ってもいいのかな、という不安が入り混じるけど、目の前に広がる世界を見たらそんなことは吹っ飛んでいった。なんてきれいな世界なんだろう。これは僕が夢見ていた世界そのままだった。
猫に兎にリスもいる。翼を持っていたり、色が虹色に輝いていたり、僕の心をワクワクさせてくれるなんて美しい世界なんだろう。森たちは歌を歌い、キノコたちは踊りだし、お星さまとお月さまは空から満面の笑みでこっちを見ている。いつまでもここに居たい、僕の理想の世界。
なんだか小さな声がするぞ。目の前にあった雲に声をかける。
「雲さん、誰かが泣いているような気がするんだ、連れてってくれない?」雲は眠そうな目をこすりながらいいよーって僕をのせてくれてゆったりとのんびりと運んでくれた。
リスが泣いていたんだ、なんで泣いているんだろう。声をかけようと思ったらさっきのどんぐりをたくさんあげたリスがひょっこりやってきた。
どうやらどんぐりを拾うことが出来なくて泣いているみたいだ。ほっぺにたくさんのどんぐりを詰めたリスはどんぐりを丁寧にほっぺから出して彼女のほっぺに詰めてあげている。彼女は喜んで抱き着きリスたちはひっくり返っている。だけどリスは照れた様子で喜んでいた。それを見た僕は心を打たれた。そんなことしてもらったことがない。でも、なんだか嬉しい気持ちになるんだなって一つ感情を理解した気がした。
今度は近くにいたうさぎが被っていた帽子が風にぴゅーっと飛ばされてしまったみたいだ。帽子は高く舞い上がり、高い木の枝に引っかかってしまった。僕は雲に頼んで帽子を取ってもらった。それをうさぎに渡してあげる。なんだかとっても大切にしていた帽子なんだよと多分そう言っていることがなんとなく分かった。兎はお礼に赤色と青色のリボンをくれた。使い道はなさそうだけど優しい兎の心に触れてまた一つ感情を理解した気がする。
雲に乗ってゆらゆらと風の赴くままに揺れ動く。このまま雲に同化して僕も雲になれたらいいのに。今度は少し遠くからペシペシ何かが当たる音が聞こえた。僕は雲とともに音の鳴るほうへ行ってみる。
その音の正体は2匹の蛇だった。蛇は全く同じ色の同じ柄で二匹は絡まってしまっていた。ほどきたくてもほどけなくてどっちがどっちのしっぽなのかもはや分からない。僕は雲から降りて蛇のところへ行き、しっぽを丁寧にほどいていく。優しく痛くならないように、二匹の顔もちゃんと見ながら「大丈夫だよ」って声をかけながら。彼らはあんなに絶望したかのような顔をしていたが、次第に安心ししっぽの絡みがとれるまで転寝をする始末だ。僕はそんな二匹の蛇をとてもいとおしく感じた。僕を信頼してくれてる姿に心から豊かさを感じた。
彼らは2メートルはある体をくるくると上手に撒いてベロをペロペロ出し入れしている。僕はさっき兎からもらった赤と青のリボンをそれぞれのしっぽに優しく結んであげた。彼らは体を寄せ合い向こうへ行ってしまった。時折こちらを見ては下をペロペロ出し入れして別れの挨拶をしているようだった。僕はまた一つの感情を理解した気がする。
ただ傍観していた僕は、彼らを見て感じて触れてみて湧き出す感情にニヤついてしまう。これが感情というものなのかと。
やらなくちゃいけないから、お母さんがそういう顔をするから、周りの人が嫌そうだから僕はずっとやってきた。やらなくちゃいけないって縛っていた。だけど今日は違うんだ、「僕が」してあげたいんだ。喜んでくれると僕も嬉しいんだ。その単純な気持ちに気づけてこれが優しさなのかと感動した。
すごく、いい気分だよ。
するとぶわっと突風が吹いた。砂ぼこりで目が開けられない。ゆっくり目を開けるとそこには最初に見た翼の生えた猫がいた。あの青空を飛んできたようだ、羨ましい。すると猫は、とても眠たくなるような柔らかく優しい声色で「もう帰れる?」と声をかけてくれた。僕はその言葉の意味をちゃんと理解してうんって答えた。猫は小さなカギを渡してくれた。
「出口のカギだよ。鍵穴はどこにあるか分からないから自分で探してごらん」そう言って猫は大きく羽ばたいてどこかへ飛んで行ってしまった。
僕は扉を探す、もう充分この世界を味わったから未練はなかった。不思議と背筋が伸びる。見渡す限りの森で扉らしいものはどこにも見えない。だけど僕は進んだ、大丈夫ってわかってるから。森の奥へ進むとそこには扉があった。僕は言われた通り鍵穴を探す。ドアノブにカギ穴がなかった。それならばと上かな、下かな、ここかな、こっちかなとカギ穴を探す。僕は扉を隅々まで調べたがこのカギがはまるカギ穴は見つからない。どうしてだろう、不安がよぎる。焦って手が震える、声も出せなくなった。
どうしよう、やっぱり僕には無理なんだ。自分一人では結局何もできないんだ。「やっぱり」という呪縛がまた僕を縛り付け僕は丸まった。また閉じこもってしまった、ずっとこんな自分が嫌だったのに。気づけば僕はそのまま眠ってしまった。もぅこのまま一生眠りについてもいいくらいの気持ちだ。
「お母さん、こんな僕でごめんなさい」一粒の涙がこぼれる。
「・・さ・・・さ・・・・ばさ・・・・・・つばさ!!」
僕は目が覚めた。お母さんの声だ。僕は起き上がると周りにはさっきの動物たちが心配そうに見ていた。「ありがとう、みんな。僕は大丈夫」
僕はまた扉の前に行く。ドアノブにはないカギ穴・・・そうか、カギなんて最初からかかってなかったんだ。僕が自分で自分を縛り付け扉を閉めていたんだ。本当はいつだって開けることができたのに、全部人のせいにして弱い自分を作ってた」
僕はカギをささずにドアノブを回す。
眩しい光が僕の視界を奪う。それと同時にあたたかい何かが僕を包んだ。
お母さんだ。人目もはばからず泣き散らしている。
「母さん、恥ずかしいよ俺」
ちょっと大人になった僕は照れている。
どうやら木陰で倒れていたみたいだ。周りにいる知らない人たちが拍手をしている。僕は何が何だか分からなかったけど、照れた。
僕が俺になった瞬間のお話し。
あとがき
このお話は、人見知りで自分で選ぶことができない彼が幻想的な世界で成長する物語です。こちらは後編となっています
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ここから下はこの物語の解説です。
彼はどう成長するのか。出てくるメタファーの意味とは。
それらを私なりに、私の感性で解説しています。
SAIの頭の中を綴っているだけです。
興味のある方のみお入りください(`・ω・´)ゞ
物語りを読むだけでも十分楽しめます♡
では解説をどうぞ↓
途中から有料部分となっています
※可愛いイラストも載せています♪♪合わせてお楽しみください
このお話は前編の続きとなっています。彼はまだお母さんがそばにいるくらいの年齢です。彼は極度の人見知りで、一人で行動することができません。いつも一人で過ごすため、頭の中ではさまざまなことを想像して遊んでいる子供でした。そんな彼は周りの人を怒らせないように、変なことを言わないように自分から発することはなくお母さんの言う通りに動きます。自分で決めたり発信したりすることが苦手です。
その彼が、自分で新しい世界へ踏み出そうとするシーンです。彼の成長と変化を象徴しています。彼がこれからどう変わっていくのかとても大切な転換点です
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