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もじゃの三つ巴1202

頭が2つ。あたかも頭が2つあるようなもじゃもじゃ頭のおじさんを見る機会があった。どこか天才バイオリニストを彷彿とさせる。
何故人間は一定数、もじゃもじゃへ行き着くのだろうか。私の不思議がモクモクと形を成す。とは言うものの、わたあめやポメラニアンの可愛さはわかる。
いずれ私ももじゃもじゃに辿り着けるのかな。

おじさんはベーシスト。おじさんが一味として参加しているバンドの公演を見に行ったのだから、「見る機会があった」は間違いではないはず。
またどこか森の番人を彷彿とさせ、バンドの核としておじさんとして素敵っぷりを魅せてくれた。
頭にその身にたくさんを詰め込んでいて、私の羨望はそこに吸収されてしまった。ここ数日の心の浮遊感はきっとそのせいに違いない。
決して取り戻さなくてはいいけれど。

そんな、またどこか自然発火しそうなもじゃもじゃのおじさん。の、横にいる歌う女性。おじさんとは相反する小ぢんまりした収まりの良さ。彼女もまた私の羨望を吸収していた。
家具やペットは白色で、愛着のある楽器や道具には名前をつけ、煮込み料理を好む。そんなただの想像は難くない。
彼女を想う度、品行方正かつ清廉潔白と感じる部分とそうでない部分に心を掻き乱される。恋心のようなこのこびりついた感情は一体何なのだろうか。ましてや、井戸の中から出られない蛙が抱くようなこの気持ちは何なのだろうか。今にも心臓から3本腕が出てきそうだ。

悶々とする日々を過ごすある夜のこと。あるクラシック音楽が私の余白を埋め尽くした。しかし曲名が出てこない。
まずは鼻歌で検索を試みるも失敗に終わり断念。次に仲間の応援を仰ぐため鼻歌を録音しチャットへ送信する。仲間が応援要請に気づくまで自力で調べることにした。
動画サイトを漁りに漁り、クラシック集をしらみつぶしに再生する。
…いた。私が出会いたかったクラシック。

セルゲイ・プロコフィエフ
『ロメオとジュリエット』モンタギュー家とキャピュレット家(第2組曲 第1曲)

思わずプレイリストへダウンロードする。
マイブームの一つ。カタカナは苦手だがクラシック音楽を覚えていくというマイブーム。一生のブームになりそう。一生のブームはもうブームではないな。

そういえば動画サイトのあの海に潜ったとき、天才バイオリニストのとある動画に鑑賞済みのマークが施されていたのが目に入った。
どこかもじゃもじゃのおじさんを彷彿させた。

私のモクモクが消滅したところで仲間からの応援要請の回答が来た。回答者は音楽を嗜む、心体の丸みが特徴的な男性だった。

彼には昨日、もじゃもじゃヘアを推奨したばかりだった。

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