マガジンのカバー画像

日刊うたうたい。

45
短歌らしきものを綴ってまとめていきます。 毎日七首、誰かの一週間を支えるうたになりますように。
運営しているクリエイター

#現代口語短歌

日曜日の歌 8週目

日曜日の歌 8週目

あかずきん パンとワインを 持ってって
道中寄り道しちゃダメですよ

花畑 教えてくれてありがとう
これは寄り道ではなくってよ

軽やかに木の戸を叩く音がする
娘か孫か? いやオオカミさ

生温く生臭く赤い肉の道
通って死んでたまるものか

すやすやと ネグリジェ、ナイトキャップまで
かぶりベッドで眠るオオカミ

黒い空 縦に裂かれて 血塗れの
生まれて二度目に腹からい出る

オオカミの血に濡れ

もっとみる
月曜日の歌 7週目

月曜日の歌 7週目

色のない世界の中でただひとつ
生きる喜びなの 赤い靴

信仰も涙もひとの涙さえ
赤い靴には勝てっこないの

「死して尚、踊り続けるのが罰だ」
綺麗な顔で天使が告げる

葬送の別れも祈りも涙すら
流せずにいる 踊ったままで

罪人の首を切るのが仕事なら
私の脚はつみびとですよ

穢れなき少女が踊り叫んでる
私の脚を切ってください

穢れある我が手にキスし礼を言う
「貴方の両手に祝福あれ」

連作「赤

もっとみる
木曜日の歌 7週目

木曜日の歌 7週目

夜ライブ気合いで定時に帰るぞと
カバンにペンラ入れて出勤

残業中 推しブロマイドが聞いてくる
仕事と僕とどっちが大事?

寝なきゃとは思っているよ、思っては
23時からリアタイするけど

新しい服も新色コスメまで
推しの色です 推しの衣装です

何食わぬ顔で通勤ラッシュタイム
押しつぶされつつ推しの曲聴く

飯を食え 暖かくしてよく眠れ
舞台もライブも最高だったよ

恋人というよりむしろオカン目

もっとみる
土曜日の歌 6週目

土曜日の歌 6週目

あの日あの場所であなたにあった時
駆け出したくて仕方なかった

除光液 歪なネイル 派手なラメ
落として普通の私に戻る

胸いっぱい 冬の空気を 吸いきれず
噎せる大人と 走り出すきみ

満月を 一緒にみたい人がいる
綺麗と言いたい人がいる

たそがれの電柱裏にひとりきり
かつての怪異の頭領がいる

あの人へ渡す言葉を食べている
電子の海に漂うクラゲ

踊ってるシャワーと泣き出す洗濯機
歌う湯沸か

もっとみる
金曜日の歌 6週目

金曜日の歌 6週目

数分の電車の遅延のせいにして
一日早い休日迎える

歩いても快速乗っても追いつけない
等間隔のレールの向こう

構内の放送告げるさよならを
朝日に照らされ戻らない君

爆音の音楽の裏で鳴り響く
誰かの命が今日消えた音

背を向けて走り出す先終点へ
乗り継いだあとにまだ道はある

ランドセル背負い並ぶ雀らと
マフラーに顔 うずめて寝る僕

こねずみをはるか空から狙う鷹
背景の富士に茄子は添えるだけ

もっとみる
木曜日の歌 6週目

木曜日の歌 6週目

土踏まず 寄った靴下踏んづけて
なんでもない顔をして歩く

最安値 三百円で買える爪
剥げた塗装をそっと撫でる手

オーブンを開けようとした僕止める
指から香る バターと果実

流星を 繋げ束ねて 糸にする
紡いで君に届けるリボン

横たわる体の下に埋まってる
数多 星の数のつはもの

渋ってた君を誘って動物園
うさぎに埋まる君見て笑う

バイト代 たった7cmの背伸び
あなたの視界に入ってみたい

もっとみる
水曜日の歌 6週目

水曜日の歌 6週目

湖を作れる悲しい気持ちだけ
溢れるわずか15㎖

あたたかく しかくいへやを飛び出して
眠気と寝癖をはらう鋭い冬

憧れの君が隣にいるなんて
これ明晰夢 うん、明晰夢

国破れ山河と共に私あり
途方に暮れる裸足で歩く

スピカより 何光年先 どこにある
貴方の星へ 夢見て翔ぶ

一月の朝 短パンに半袖の君と
まんまる厚着の私

渋谷地下 ハコのスタンドから宙へ
お前ら連れてく推進力

2020/

もっとみる
火曜日の歌 5週目

火曜日の歌 5週目

いたいけな少女のようにあどけなく
笑って僕に傷つける君

じゃがいもを入れない主義の食卓と
牛より豚派のカレーが出会った

わりばしを9対1でまっぷたつ
呆れ顔するあなたが笑う

るり色のハワイの海を眺めてる
8K コタツで見るユートピア

ななくさを省きまくって台所
キャベツの入った粥がゆれる

かえりみち 商店街で受信する
「パン買ってきて」で終わる正月

よう、と声掛けられるまで気づかずに

もっとみる
月曜日の歌 5週目

月曜日の歌 5週目

100グラム前後の紙の束魅せる
手のひらの上 無限の世界

お財布と変えの下着と携帯と
いつもの文庫をカバンに入れて

「今買うの?すぐに文庫も買うくせに」
「ハードカバーは、別物カウント」

大切な1冊胸に生きていく
この身一つで生きてはいけない

特別な儀式 寝る前 頭を悩ませる
今日の最後に読む本はなに?

美しく生きる理由にはならねども
死ねない理由の未完の大作

ことのは 紡ぐ人と 紐解

もっとみる
日曜日の歌 5週目

日曜日の歌 5週目

カスタードの天鵞絨の上に敷き詰めて
食べる宝石 ショーケース並ぶ

全世界に今知れ渡る 焼き菓子は
遠い異国の誰かの思い

アルコール 苦さ 香りも わからずに
これが大人の味かと思う

赤緑 箱から取りだし日にかざす
ステンドグラスを覗く瞳

憧れと嬉しさ併せ蝋燭に
照らされる イチゴ 目に焼き付いて

故郷の初雪景色によく似てる
黒い大地に粉砂糖 降る

幸せを小箱に詰めて持ち帰る
甘さの前に

もっとみる
土曜日の歌 5週目

土曜日の歌 5週目

一番に見られ 見る場所 指先の
伸びた爪を 美しく塗る

ごく普通 地味め平日ローテーション
土日に纏う 本当の自分

ケアも無駄 死んだ細胞と言うけれど
なら何故みんな執着してるの?

食べたもの見たもので人は変わるらしい
貴方で私はどれほど変わるか

握りしめ 震える拳 殴るじゃなく
自分のリンパを流すために

鍛えるは 向かい風に倒れずに
追い風に乗り 走り出すため

無理やりに昨日の空気

もっとみる
金曜日の歌 5週目

金曜日の歌 5週目

箱根路を吹き抜ける風 吸い込んで
味方につけて 行く五十五里

病める日も健やかなる日もこの脚の
行けるとこまで行くだけですから

数秒間 枯れる気力を振り絞り
背を押し叫ぶ 頑張れの声

山の神 二十のなかの一人だけ
山の女神に愛された者

来る人と 諦めなかった待つ人を
別つ音と 乾いた襷

箱根山 神の道を駆け下りて
都で待つる 仲間の元へ

涙 汗 沁みる襷をそれぞれの
胸に道行く若人らよ

もっとみる
木曜日の歌 5週目

木曜日の歌 5週目

箱根路の 凍った空気を駆け抜けて
今年も我が家に 正月が来た

近況を 年に一度 伝え合う
これから一年 また会わぬひと

よろしくと 声をかけ合う人の波
君の手のひら そっと握るよ

初詣 神様よりも君に会うために
早起き罰当たりな僕

松の葉の先に凍った朝露に
光る初日を 飲み込んだひと

お雑煮もおせちの中身も違うけど
二人でだったら楽しいかもね

一日の夜に疲れて寝る君の
初めての夢のさ

もっとみる
年末年始の歌

年末年始の歌

「来年は毎日掃除するからな」
「去年も言ったよ 窓拭きながら」

待つ子らへポチ袋とピン札と
用意し始まる帰省支度

道中の混雑予想 手土産で
増える袋を計算に入れ

実の中のさらに小さなみかん見て
ぼくみたいだと笑う幼子

薄皮に栄養があるという母と
食いにくいだろとちまちま剥く父

武道館 実家に コミケ最終日
それぞれ過ごす この大晦日

走り去る月を追いかけ駆け抜けた
僕から僕へ襷をわた

もっとみる