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人はなぜ戦争をするのか①要約編

 お久しぶりです。藤代です。
思い付きで私が読んできた本を紹介、考察していくコラムを書いていこうと思います。

題して、

「お手軽読書」シリーズ!!


昔の本より、今生きている人の作品の方が現代の考え方に合ってるよ。
小難しい言葉並んでいて、しかも長い。何が言いたいか分からない。
なんとなく作者や作品の名前は聴いたことあるけど知らないかな。
生きる上では必要ないと思うけど。             などなど。

そんな声が聴こえてきそうですね。
私もそう思っていたのでわかりますよ。

実際、現代の作家や哲学者の方が現代人にマッチするでしょう。
確かに小難しい言葉が並び、しかも長いです。
4行で書けるよね?と思う事は多々あります。

このあたりに関しては、その通りでしょう。
ただ、生きる上で必要ないかと言われると疑問に思います。
それ多分、人によるので。


正直、今まで読んできた中で微妙だと思った本はいくつもありました。
名著というけれど、どの辺が?と思う作品もあったり……。
(ルソーの『人間不平等起源論』とかね)


 皆さんもいろんな本を読んできたと思います。
私の場合は小説でもなければ、資格の本でもなく、語学の本でもありませんでした。(漫画は読みますよ。『3月のライオン』とか『東京喰種』とか

 大学を境に本を読むようになって、いくつかのジャンルを手に取って読んでみましたが、私の肌に合ったのは「古典」と言われる昔の学者や政治家が書いた作品でした。
情報量が多いので多くは読んでませんが、ゆっくりと消化しながら読むと結構、面白いこと書いてるんですよ。

現在でも充分使える考え方今では当然とされることがどういう理屈なのかを知ることが出来ます。
例えば、
なんで僕らの国では宗教や思想は自由なんでしょう?
自由ってどういう状況のことを指すんだろう?
正解ってどういうことなんだろう?
なんでストレスって貯まるの?               など



我々は読書を通して、昔の偉人と会話をすることが出来ます。
ビートルズを聴くのと同じ感覚ですね。(ビートルズは偉人です。
ご存知の通り。聴くということ、読むということは、相手と会話すること。

古典は面白い。
この面白さを知って欲しい。
そのためには何をすればいいのだろう。
どうすれば面白さを伝えられるのだろう。


考えた末、
わかりやすく要約して(解説して)、自分の考えを書いたコラムを創ろう。
ということでまとまりました。


「お手軽読書」シリーズは、
要約(解説)パートと考察パートの2部編成で書く新しいシリーズです。


気まぐれで書いていくので(主に小説が行き詰まったときの逃げ道)、投稿は多くしないと思いますが、読んで楽しんで頂ければ幸いです。



というわけで引っ張り出してきました。
はい、どんっ!

 これは光文社古典新訳文庫にて販売されたフロイトの作品集。
今回は、その一編『人はなぜ戦争をするのか』について紹介、考察していきたいと思います。

 1932年、国際連盟はアインシュタインに「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄をいちばん意見を交換したい相手と書簡を交わしてほしい」という内容で依頼しました。

彼が選んだテーマは「戦争」。
既に物理学の第一人者となっていたアインシュタインは、心理学の権威だったフロイトに対して「どうしたら人間を戦争のもたらす苦難から守れるのか」について「心」の視点から答えを求めたのです。

ここまでが『人はなぜ戦争をするのか』のあらすじになります。


 第一次世界大戦の最中、フロイトはひとつの論評を出していました。
それが本著内にある『戦争と死に関する時評』(1915年)です。
(第一次世界大戦は1914年~1918年)
推測ではありますが、私はアルバート・アインシュタインはこの時評を読んだのではないかと考えています。

 それから十数年が経った1932年。
アインシュタインは書簡を通して、フロイトへ戦争に対する疑問を投げかけました。
※アインシュタインの行いに対して憤りを感じる方もいらっしゃると思いますが、ひとまずは読んで頂けると幸いです。(第二次世界大戦は1939年に始まります。)

 この書簡は、3つの視点から『戦争について』考察しています。
『権利と権力』『人の破壊欲動』、そして『戦争に対する嫌悪』について。

今回は、『権利と権力』の視点について説明、要約していきたいと思います。

・『権利と権力』について
まず本編は『権利と権力』の話から展開されていきます。
フロイトは、まず権力を暴力と言い換えました。

 なぜ、暴力が起きるのか。(権力が産まれるのか)
簡単に言ってしまえば、それは利害や意見が対立した時の解決手段として最も原初的な手段だったからだ、と彼は言っています。

原始の世界では腕力が、やがて武器が、そして武器を上手く扱える者が自分の意見を押し通すことが出来ました。こうした戦いの最終的な目的は、相手を傷付けて抵抗出来なくするか、要求を下げることでした。

やがて、人間は最も効果的な手段が暴力で相手を完全に排除すること(殺すこと)だと気が付き、更に力によって服従させることを見つけました。

これが原始状態です。力の強い者が、むき出しの力を使うか、才覚に支えられた暴力を使うことで、他者を支配するのです。

『人はなぜ戦争をするのか』P14参照

 私は、これが原始的な「支配」の起源ではないかと考えています。

 話を戻しましょう。
こうしたひとりの暴力や圧政に対して、支配された多数の弱者は次第に集まり、団結することで支配者の暴力に抗い、打ち勝つ力「権利」を確立しました。

要するに
フリーザvs悟空、ベジータ、ピッコロ(ドラゴンボール)
ビグザムvsアムロ、スレッガー、その他ジム(ガンダム)
鎧の巨人vsエレン、ミカサ、アルミン、リヴァイ、その他(進撃の巨人)

 こんな感じで大きな個の力に対して、数の力で自分たちの存在を護り、抗ってきたわけです。
 言い換えれば、集団が獲得した権利とは数の暴力によって出来たものと言えます。

 権利の確立は維持しなければ意味がありません。
維持しなければ、新たな支配者を生んでしまい、同じことを繰り返してしまいます。そのため組織を構成して、掟(法)を定め、共同体という枠組みの中で反乱が起きないようにルールの範囲内で皆が帰属意識を生み出しながら維持に努めること(共に暮らしていくこと)になっていきました。

このルール(法)を犯したものに対して、行使される集団の力が権力であるというのがフロイトの主張です。
権利の確立は、同時に権力という大きな暴力を創り出してしまった。

法はもともと剥き出しの暴力だったこと、現在でも暴力による支えを必要としていることを忘れてはならないのです。

『人はなぜ戦争をするのか』P23参照


 この『権利と権力』の点から、アインシュタインは予め戦争についての考えを書簡に記していました。(以下は、フロイトによる抜粋を私がまとめたものです。)

戦争を確実に止めるには、人類が1つの中央集権的な政府を設立することに合意して、すべての利害の対立を調停する権利を、この中央政府に委ねること。

フロイトは、アインシュタインの提案に関して賛同しています。
しかし、2点の条件を付けて補足をしています。

1.上位に立つような機構が設立されること。
2.その機構に必要とされる権力が譲渡されること。

 フロイトは片方だけでは意味がなく、当時設立した国際連盟に一定の理解を示していましたが、国際連盟には必要な行使できる権力がないと説明しました。

 また共同体の成立には、暴力による強制と団員たちの感情的な結びつきが必要であるため、連帯感や共感性のある理念がどれほど強いものかも重要であると考えていました。

 後の第二次世界大戦にも繋がる話になりますが、フロイトは国際連盟という取り組みに期待しつつも、現状は各国の国家主義が優勢であり、これが争いを生んでいるとして『権利と権力』についての説明を終わらせています。


 ここまでが『権利と権力』についての要約です。
※フロイトは、この視点の説明の中で侵略についても語っていますが、その点については説明しかねるところもあるので割愛させて頂きました。
理由としては、歴史の認識に齟齬があったためです。
翻訳者の所為ではありません。

まとめ

・権力とは、多数の弱者が自分の権利を獲得するために出来た数の力(暴力)のこと。

・権力の維持のために共同体というカタチを作ってルールを定め、今の国という状態が出来た。

・2人は各国の上位に位置する大きな共同体を作り、すべての国がその共同体に権力を譲渡すれば戦争はなくなるのでは?と考えた。


 今回、国家と国民のそれぞれが持つ『権力と権利』の面から戦争について両者の話は展開していきました。

フロイトの考える権力の定義が法であり、実は暴力だったという主張。
アインシュタインが考えた戦争根絶のための提案はどうでしたか?
これらに驚かれた方はいたんじゃないでしょうか。

 次回の考察編では、両者が同意した「中央集権的な政府による権力の強制的な行使」に焦点を当てて、私なりの考察をしていきたいと思います。

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