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まいにち易経_0627【順調な時こそ慎重なリスク管理を】包に魚あり。咎なし。[44䷫天風姤:九二]

九二。包有魚。无咎。

九二は、つつむにうおあり。咎なし。


九二は陽、初六は陰。進もうとする陰を九二は包み込み、動かさない。まるで茅のつとに魚を包んだかのように包み込むことで、九二が陰(小人)と接しても問題はない。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

ビジネスが好調な時こそ、気を引き締めなければなりません。周りからさまざまな甘言や投資の勧誘が寄せられるからです。そうした「うまい話」に心を奪われ、うかうかと大きな罠に嵌ってしまう愚を冒してはなりません。

ここで易経は「包む」と教えています。つまり、その誘惑的な話に完全に心を奪われるのではなく、ある種の距離を保ちながら、うまく取り扱うことが賢明だというわけです。

これは、成功や繁栄の時に注意すべき陰の存在、つまり潜在的なリスクについて述べています。「魚」というのは、潜在的な問題やトラブルの象徴です。成功している時ほど、甘い話や誘惑が増えるものです。しかし、それらを無闇に広げず、慎重に対処すれば大きな問題にはならない、という教えです。

この教えを現代のビジネスシーンに当てはめてみましょう。例えば、ある会社が新製品を開発し、大ヒットしたとします。その成功に乗じて、多くの投資家やパートナーが集まり、さらなる拡大を提案してくるでしょう。ここで注意すべきなのが「好事、魔多し」ということわざです。うまい話には裏があることが多いのです。

この状況での「包むに魚あり」とは、外部からの誘惑やリスクを適切に管理することです。新しいビジネスチャンスや投資話を全て受け入れるのではなく、リスクを評価し、慎重に対処することが求められます。魚は包んでおけば安全ですが、包み方を間違えれば臭いが漏れ、問題が表面化します。ですから、慎重な判断が必要です。

リーダーとして皆さんが学ぶべき重要な点は、成功の時ほどリスク管理が重要であるということです。私の経験からも言えることですが、会社が順調な時ほど内部の油断や外部からの誘惑に対処するのは難しいものです。例えば、かつて私が経営していた企業が急成長した時、多くの投資家が集まりました。その中には、一見すると非常に魅力的な提案もありました。しかし、冷静にリスクを評価し、一部の提案を受け入れずに慎重な姿勢を貫いたことが、長期的な成功につながったのです。

天風姤の九二の教えは、成功の裏には常にリスクが潜んでいることを忘れず、慎重な判断と対処が重要であるということを示しています。皆さんがこれからリーダーとして歩む道の中で、この教えを心に留めてください。成功を収めることは素晴らしいことですが、その時こそ冷静な目で周囲を見渡し、潜在的なリスクに対処することが求められます。

成功とリスクは表裏一体です。うまい話に乗せられることなく、冷静に判断し、慎重に行動することがリーダーとしての重要な資質です。これからの皆さんの活躍を期待しています。


参考出典

天風姤の卦は勢いが盛んな時にも陰が忍び寄ることを説き、禍の要因への対処法を教える。たとえば、事業が好調な時は、「好事、魔多し」で、うまい儲け話に乗って失敗しやすい。こういう時ほど、慎重に判断し、的確に対処すべきであるとする。
「魚」は禍の要因となる陰を表す。うまい話を受け容れたとしても、包むようにして、それ以上、大きく広げない。つまり、外に影響を及ぼさない程度につきあう。そうであれば咎めは受けないといっている。

易経一日一言/竹村亞希子

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