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まいにち易経_0611【機微を観る】先王もって方を省み、民を観て教えを設く。[20䷓風地観:象伝]

象曰。風行地上觀。先王以省方觀民設教。

象に曰く、かぜ地上を行くは観なり。先王以てほう、民を、教えをもうく。


観の卦は、風が地の上にある。風が地上を吹くとき、あまねく万物にゆきわたる。昔の聖王は、この卦に法とって、四方を巡視し、民の風俗を観察し、それぞれに適した政教を設ける。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず『観』とは何か。その象徴的な意味は、風が地上を広く吹き渡る様子を示しています。風は目に見えず、耳に聞こえないけれど、その存在を感じることができます。これは、リーダーが持つべき洞察力と似ています。リーダーとして、目に見えない兆しや細かな変化を見逃さず、状況を適切に判断する力が求められるのです。

古代の王は、四方の諸国を巡り、民の様子を観察しました。彼らは、法律や規則を定める際に、民の生活ぶりや仕事ぶりを細かく観察し、その地に適した施策を行ったのです。これは、現代のリーダーにも通じるものがあります。リーダーは、部下や社員の表情や仕事ぶりを観察し、問題の兆しを見逃さないようにすることが大切です。

会社を船に例えるなら、経営者は船長にあたります。船長は、乗組員一人ひとりの様子を見逃さず、些細な変化にも気づく必要があります。表情の雲行きが怪しければ、何か問題を抱えているかもしれません。作業が手伝っていれば、モチベーションが下がっているサインかもしれません。そうした兆候を見逃さず、適切な対応をすることが肝心なのです。
リーダーには、こうした洞察力が求められます。人や物事の表面だけでなく、隠れた本質を見抜く力です。それには、日頃から注意深く観察する習慣が大切になります。

洞察力とは、まさに風を観ることに他なりません。風は常に流れ続け、時に強く、時に穏やかに吹きます。私たちもまた、時間の流れを感じ取り、その変化に適応していく必要があります。時の流れは目に見えず、耳に聞こえませんが、周囲の変化を注意深く観察することで、その方向性を知ることができます。

では、具体的にどうやって風を読む力を磨くのか。まず、現場に足を運ぶことが重要です。デスクの上で報告書を読んでいるだけでは、得られない情報があります。実際に現場を訪れ、社員と直接話をし、彼らの声を聞くことで、リアルな状況が見えてきます。

また、リーダーには大局観も求められます。木を見て森を見ずにならないよう、常に全体像を意識しなければいけません。個々の事象だけでなく、それらがつながった大きな流れを読み取る力が必要不可欠です。

ただし、洞察力や大局観を身につけるのは簡単ではありません。日頃から社会や業界の動向に目を配り、データを収集し、分析する習慣を持つことが重要です。そして何より、周りに素直な心を持ち続け、批判的な目で物事を見る賢明さが求められます。思い込みにとらわれず、偏見を排して、オープンな心で現象を観察することが肝心なのです。

さらに、過去の経験や事例を参考にすることも大切です。歴史を学び、過去に同じような状況でどう対処したのかを知ることで、現在の問題に対するヒントが得られることがあります。易経もその一つで、古代の知恵から現代に通じる洞察を得ることができます。

風は気象学的にも興味深い存在です。例えば、風の向きや強さは、気圧の変化や地形の影響を受けます。これは、ビジネスの世界でも同じです。市場の動向や経済の状況、競合他社の動きなど、様々な要因が絡み合って変化を生じます。リーダーは、この複雑な風の流れを読み解く力を持つことが求められるのです。


参考出典

古代の王は四方の諸国を巡幸し、そこに住む民の様子を観察した。そして、今何が必要かを察して、法律や規則、慣習を定め、教えた。
家庭や会社組織においても、リーダーは、人の表情や、仕事ぶり、生活ぶりのわずかな機微を観て、荒廃や乱れの兆しがないかと洞察することが大切である。

易経一日一言/竹村亞希子

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