るな@ドール

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如雨露

プロローグ 私はあなたの如雨露。 あなたは乾いた植木鉢。 水を欲して、水を欲して、私に向かって手を広げる。 私はあなたの如雨露。 あなたに水を注ぐと、 あなたは柔らかく、優しくなる。 必要としてくれる。 ずっと私を必要でいてね。 私を必要でいてね。 私のこと、好き? うん、好きだよね? その表情は確かに私のことが好き。 甘やかにとろけるみたいな目の光。 潤いを与えましょう。 私はあなたの如雨露だから。 (続く)

    • フルチョ体験レポ(n番煎じ)

      0 前書き 私はお人形大好きドールオタクです! 書いてる小説にもドールが登場する話があるくらいなのですが、なぜか今まで「ボークス社製のドール」とご縁がありませんでした。 というのも、私は1/6縮尺のドールさん専門マニアなんです。 大きさを想像していただくとしたら、リカちゃん人形のサイズです。 大きい子で全身で30cmくらい。 ボークス社、というのは日本のドールメーカーさん(というかホビー用品のメーカーさん)なのですが、ドール界隈ではここのドールを持っていない人は他に好き

      • 私はあなたのお人形

        1 心残り 死んだのだと思う。 もともと血圧が高かった。ここのところ急激に上がったので、何かなって思ってた。 まさか死のうとは。 気がつかないうちに私は死んでいた。 気がつく間もなくあっという間にポックリと。 それはそれでありがたいことなんだと思う。そう、最高。ポックリなんてなかなか逝けない。 でも。 心残りがあるんだ。 私は一人暮らし。夫はとうに死んでしまっている。70歳、死ぬにはちょっと若いかなって思う。 その私が愛していたものがある。 もの、ではないな、者…。

        • 鉢かづき

          【序章.漂泊の姫君】 その日はたまたま台風が来ていて、山村裕二と息子の彩介は、近所の有志とともに河川敷で見回りをしていた。 幸いにも、行方不明になって心配されていた山村家の三つ向こう側に住むおじいさんは、木陰でブルブルと震えているところを発見された。 認知症を患っているおじいさんは、台風が来ると昔の記憶が呼び起こされるらしく、「用水路」の様子を見に行ってしまう。離農して長いおじいさんの家族は捜索してくれた近所の人間に頭を下げつつも、「うちのお父さんは、いつか川に浮いて人生

          どうせ死ぬなら (2)

          藤崎さんの人となり 「吉田絵美ちゃん、いるか?」 授業が終わった頃、見慣れない人が私を教室に訪ねてきた。 黒い短髪に、パリッとした詰襟の制服を着た男の子だった。 「…あの、藤崎さん?」 「これでどうだ?」 その姿は、昨日までの様子と一転して、若々しく見えた。不良ってなんか、不貞腐れて見えるせいか、老けてるんだよね…。 「こっちの方がいいです!断固こっち!」 「やった!」 ガッツポーズをして見せる藤崎さんは…あっけらかんと、明るかった。にっこりと笑う。クラスの

          どうせ死ぬなら (2)

          どうせ死ぬなら (1)

          「もったいない」 私は、歩道橋の上で、車のテイルランプをじっと見ていた。 夜の車道はキラキラと美しくて、オレンジ色と赤と白がピカピカしていて楽しかった。 楽しんでいる気分ではなかったのだけど、綺麗なものは綺麗だ。 私の身長で、この柵を乗り越えることはできるんだろうか? 138センチ、クラスでは一番前。歩道橋の柵は、私の顎のあたりまでしっかりとあって、通行人を守っている。 守らなくてもいいんだけどな、今だけ。 うん、乗り出すだけでもいいんだよね。頭は重くできている

          どうせ死ぬなら (1)

          太め姫様と魔族の王 (後編)

          その6 太めな魔王の妃と国境のいくさ 寝屋で疲れた私は、人の形をしたフロード様の御胸に寄り添ってうとうととしておりました。 温かくて、わずかに獣の匂いのする、安心する御胸です。 幾度か寝屋を共にさせていただきました。 私には…そして、フロード様にとっても初めての体験は、痛かったり気を遣ったりで、正直しんどうございました。 しかし、気を遣ってくださるフロード様の気高いお心を傷つけてしまうことは、妃たる私の意図するところではありません。 「どうすれば其方が気持ちよくい

          太め姫様と魔族の王 (後編)

          太め姫様と魔族の王 (前編)

          その1 太め姫様、覚悟する 「そういうわけでな、リーリン」 お父様はなんと残酷なことを言うのでしょう? 「お前に行ってもらうしか、この国を守る方法がないんだよ」 私が歓迎される存在ではないことは知っていましたわ。 だって、ジェナスお姉様に比べてなんとも太っていてみっともないんですもの。 この国の次期当主はシュミルお兄様。残念なことにお父様には子供が3人しかいません。お兄様以外の子供は私とお姉様の女が二人。外交に使える手駒は私達だけなのです。 ジェナスお姉様は私と

          太め姫様と魔族の王 (前編)

          ぼくはいい子じゃない

          「なんでこの子は」 遥子は、座り込んで自分の息子を見上げていた。 ひょろっと背の高い、それでいて、どんな靴下を履かせても靴下の中で脚が泳ぐほど細い、真っ黒な髪をした子供。それが彼女の長男、聡太である。 彼はニコッと笑い「ママ」と遥子を呼ぶと、正面から抱きついてきた。 「ダメよ、赤ちゃんがお膝にいるじゃない」 聡太の足は結果として、母の膝の上にいる弟の修二を蹴っ飛ばす形になってしまった。生まれて半年の修二は、それを避ける術を持たない。泣き出す。 「ほら、泣いちゃった

          ぼくはいい子じゃない

          「ラブリー」 6

          終章 ラブリー・ウェイ 「何それ」 みはるんが瞳を輝かせた。 「めっちゃくちゃ可愛いんだけど」 私は、みはるんとみのりんの双子の前で、サファイアの指輪を披露していた。 「ダイヤじゃない婚約指輪も、いいものね…」 みのりんが楽しそうなため息をつく。 「まさか、おんなじ頃に結婚することになるなんて思わなかったわ」 「さすがに、兄弟が同じ時期に結婚なんてお父さんとお母さんが大変だから、ちょっと時期をずらすけどね」 「式、やるの?」 「うん、うちのパパがどうしても

          「ラブリー」 6

          「ラブリー」 5

          第5章 コーンフラワー・ブルー 授賞式の時を除けば、久しぶりにスカートを履いた。 何しろ、高級ホテルのレストランだ。いつもの通りのスニーカーにチノパンというわけにもいかない。 そういえば、パンプスも久しぶりだ。ちょっとつま先が痛い。背筋が伸びる。少しだけ視線も上がる。 白ブラウスに黒のスカート姿で、会社では「お、藤崎今日はデートか?」って聞かれるくらいには普段と違う格好なんだけど、それでもあまりにもこの場ではそっけないので青いシフォンのスカーフをふわりと首に巻いてみた

          「ラブリー」 5

          「ラブリー」 4

          第4章 祝福 「そういうわけで、私、小説家になりました」 会社で社長に報告をすると、社長が目をまん丸にした。 「藤崎、小説なんか書いてたのか…」 「ええ、将来の夢ですから」 「すごいね」 木之内さんが、スマホで情報を調べてつぶやく。 「○○出版の賞とか、デカいな…」 「銀賞ですけれどもね」 もちろん謙遜で、私としては会心の出来だと思っているし、すごい賞をいただいたと思っている。 「17日は授賞式があるので、会社休みます」 「おう、それはいいが」 社長は

          「ラブリー」 4

          「ラブリー」 3

          第3章 結婚ってなんですか? 私とみはるんは、時々私の仕事帰りに待ち合わせをして落ち合うことがある。 みはるんは大学院で勉強したあとだから、私の仕事が早く上がれる時にはちょうどよく会うことができるのだ。 「毎日暑いよねえ」 みはるんは長い髪をくるりと夜会巻きにまとめて、首筋を扇で仰いで涼を取っている。 「それ、色っぽいね」 「女の子に言ってもらうと余計嬉しいな、ありがとう。…ただの暑さ対策だけどね…」 そうは言っても、扇ぐたびに髪留めのクリスタルが揺れるのはとて

          「ラブリー」 3

          「ラブリー」 2

          第2章 無理ですそれは 私はお酒は好きだし、飲める方だと思っている。 いいことだとは思わないけど、中学生の頃からパパの晩酌に付き合っていた。パパは家でも日本酒とか焼酎とか飲む人だったから、私もそういうのを普段から飲むようになっていた。 だから、「甘いのしか飲めない」っていう若者女子らしさを私に求められても困る。 「藤崎さん、見た目と違って飲むねえ」 今日は会社の納涼会で、あまり気が進まなかったけれども仕方なく出てきた。プライベートの時間はプライベートとして使わせてい

          「ラブリー」 2

          「ラブリー」 1

          第1章 指輪狂想曲 みのりん、というのは、仲良しの斉藤実里のあだ名だ。もう高校1年の頃からずっとそう呼んでいるので、7年間は呼んでいることになる。 そのみのりんの左手の薬指に、この度真新しい、傷ひとつないダイヤの指輪がはまった。 「おおー」 私…藤崎瑠璃は、腹の底から感激の声を上げた。っていうか、変な声が出た、というのが正しいかもしれない。 「うふ」 みのりんはニコニコしながらそれを眺める。 「私、4月生まれだから、ダイヤが誕生石なの」 それを羨ましそうに眺め

          「ラブリー」 1

          Jake (5)

          第5章 帰国 1 灯子と春斗 僕の帰国の日が迫った。明後日には飛行機に乗っていないとならない。 スーツケースとリュックに詰め込んできた荷物をまた仕舞い直さないとならないし、家族に買ったお土産もなんとかまとめないと。 家族には大したものは買っていないけど、多分サトルが喜ぶマンガの書いてある文房具とか、日本にしかなさそうなお菓子とかは買い込んだ。そうしたら案外嵩張るもので、入り切らない分はこちらで大きなエコバッグを買った。 灯子の両親からは、斉藤のおばあちゃん(つまりは

          Jake (5)