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月(25)

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最近の記事

“カメラを趣味にしたい”のハードルを下げたい

「カメラ始めたいんだよね」と思っている人も 「カメラって難しそうだけど興味はあるな」という人も なんとなくその‘カメラ’はデジタルの一眼レフを指している気がする。ここで、必ずしも一眼レフ=デジタルではない、ということを、初めて聞いた人もいると思う。しかし、そういった細かいカメラの種類や性能さらには歴史やテクニックなんか、どうでもいい。早くカメラを手にしてみてほしい。そんな気持ちで、カメラ選びの第一歩「結局どんなカメラがいいの?」を見ていきます。  カメラ、と言ってもその内に

    • 可愛く歩いてる子が強いんだよね

      「ねえ最近始めたんだけどさ、」 深夜1時 土曜日になったばかり 平日はお酒を飲まない彼女が 唐突に連絡してくるのはもう慣れた 休みの前日は何だかそれを待っている自分もいて 何で待っているかは明確にしたくなくて 彼氏にだったら「ごめん」を付けるようなことを 彼氏にしかしない温度感でやってのける そんな彼女がある意味羨ましかった 他所ごとは考えないようにして 今日も話が3周するまで付き合おうと決めた 「それで今週の日曜日はね、あもう明日だ、明日はね3歳の馬が出るやつなんだけど

      • 梨があるところがいちばん安全です

         ダウンジャケットの潰れたフードが なんだか可愛くみえた 新幹線の2人席と3人席の間 まんまるの坊主頭を 100キロはありそうな大きな体にくっつけて 見かけよりも速いスピードで進んでいく その知らない後ろ姿を見送りながら 内心では 他人のフードを思考に入れる余裕があるのかと 余裕があると認識すると なんだか全部大丈夫な気がした _______いつまで保つだろうか 次に不安が押し寄せてくるのは いつだろうか。  好きな本に 又吉の「劇場」があるけれど その中の台詞を思い出す 

        • 6年って小学生も卒業するよ

          いつか 全部忘れるんだろうか 離れて分かるとかそんなことはないけれど 意外とこんなにも忘れないのか、とは思う 一緒に食べたものも 毎年行った場所も ルーティンやノリも 生活の一部だった 別れると決めて 同棲していた家から出るまでの1ヶ月 それまでと大して変わらず ただ物理的な距離だけはあるような 不思議な時間だった ごはんどうするかの連絡も 映画やゲームも変わらなかった 仕事への憂鬱と未来への不安で 月曜がいちばん情緒不安定だった 朝起きて泣きながら支度する どうしたのなんて

        “カメラを趣味にしたい”のハードルを下げたい

          うちのおじいちゃん頭ん中で娘の友達と孫の友達混ざってるんだよ

          「ねえ高校の時いたあのカヌー部の子、結婚するんだって」 そんなほぼ知らない人の顔が思い浮かぶはずもなく、適当に返事をした  冬はこたつでミカンだと言うから買ったけれど 暑がりでじっとしていられない彼女はあまり入らない 入らないのに猫のために付けっぱなしだから 外から帰ると吸い込まれるようになった くすぐったい背中も言葉も全部ここにあるようでないし くすぐられた足も気持ちもそのままもって行きたいと思う 高校の記憶か中学の友達か混ざることも増えたし いまさら誰の話をしても大

          うちのおじいちゃん頭ん中で娘の友達と孫の友達混ざってるんだよ

          黒と金のアレ

          七夕は毎年雨が降るのに今日みたいな日が晴れるのは珍しいな、と残業後の働かない頭の奥の方で考えながら、まだ今日が月曜日であることに堂々と絶望した 1年に1度しか会えないなんてたまったもんじゃないだろうなんて趣もない感想を抱きながら、まんまるの月の奥に思い出すのは、もう会うことのない彼女のことだった 大学生の頃はこんな縁もゆかりもないイベントに乗っかりたかった 「月みに行こうよ」 そう言った彼女になんて返したのか 今ではもう覚えていない 月を見るのか 月見をするのか そんなの

          黒と金のアレ

          2023の夏

          やたらディレクターを取り上げるバラエティを眺めながら、明日の職場を想像する 何をしないといけないのかというより、何をしてはいけないのかをしきりに考える 帰りの電車で先輩の言葉を思い出した ちょうどいい自己肯定感の高さとレスポンスの早さで人気のある先輩だ ときどき気になる言葉の強さはあるものの、ことあるごとに誘ってしまうのは好きだからだろう 強い言葉をさらさら使いこなすおかげで、本心はうまく隠れている 気付くのが遅すぎたようなずるいような誰がと言われたら困るような 人と人の掛

          マジックアワー

          「走りたいですね、逃げるんじゃなくて追いかける感じで」 「何を?」 「わかんないです、でも走りたくないですか?」 真意は全くわからないけれど、これ以上は野暮な気がして黙って速度を上げた 彼女が好きだと言うものは良いものなんだと思ったし 独特の好き嫌いもセンスだと思った 彼女にしか似合わないような洋服を纏う姿に その世界観の中で生きる姿を生きづらそうだとも思った 「生きづらいくらいがちょうどいいんですよね」 「あんま聞かないけどね」 「なんか生きてるって感じがする、生きやす

          マジックアワー

          音楽のはなし

          〈Saucy Dog〉 「またいつか、またいつか、あなたに会えますように」 そう締めくくったあの優しい声を思い出しながら、カラオケでいつも、そこまで込みで真似してたあの声を思い出す。顔の似たYouTuberを見るだけで、緊張するとちょっと走るところとか、態度の悪い人に怒るところとか、全部を思い出す。好きなだけじゃ一緒に居られないって、現実はそんなことも言えないまま終わったりするけれど、新曲を好きだと言えるくらいになった。古参の顔してライブに行くこともできる。できるのに、泣きな

          音楽のはなし

          熱々が好きなのにすぐ冷ましてしまう

          ティーバッグで淹れた煎茶が熱いうちは集中できる気がした。紅茶の日はあまり捗らない気がした。同じ言葉で違う意味を出したり、似たような言い回しを思いつくことがセンスだと思っていた。熱々を口に入れて、中の上の方が沁みる。昼間の味噌汁で火傷したことを思い出した。 「先週、シンガポール行ってきたんだ」 そう言って渡された黄色いパッケージの紅茶は、有名なお土産なのだろう。あとこれと、これね。そう言って出されたマーライオンの形を模したチョコと、赤い象柄のタイパンツ。タイってどこだっけ、そ

          熱々が好きなのにすぐ冷ましてしまう

          お酒のはなし

          〈黒ラベル〉 「先にお飲み物お伺いします」 席について早々にそう言われて、目の前の彼女と目が合う。ボリュームのあるBGMに人の話し声で、声を出すことを諦めたのか、ゆっくり頷くその仕草に、一瞬メニューを見てビールを2杯頼んだ。マスクをとりながら、すごいよく分かったねなんて、道で猫を見つけた時の目でこっちを見る彼女が可愛かった。大体の人が一杯目はビールじゃないの、と言いながら、だって黒ラベル一番好きでしょとは言わなかった。 〈レモンサワー〉 「今日って誰が来るんですか?」 残業

          お酒のはなし

          今週のこと〔2〕

           木曜日、仕事を休んだ。よくいる土日休みの社会人、1週間の4日目。仕事を休んだ。普通に生理痛だった。ちなみに2日目。  でもその日は、職場で年に1度のボーリング大会の日だった。その後の打ち上げも見越して、自転車で行かない方がいいなとか、お昼は軽く済まして残業もしないようにしないととか、朝起きた瞬間色んなことがよぎった。重い身体にお腹の痛みにぼんやりとした不安、ぼんやりしていたけれど、なんとなくここで休まないといけない気がした。  年齢層の高い今の部署は、同世代同士のような感

          今週のこと〔2〕

          甘いもののはなし

          〈ブッシュドノエル〉 「結婚、しない?」 学生時代から一緒にいて、うちの親とも仲の良い彼女は、今更言うまでもないくらい家族だった。今更言うまでもないくらい、一緒になると思っていた。恋人らしいことをしなくても、夫婦になれると思っていた。特別なことは要らないと思っていた。キラキラ光る、昼のような夜の街の雰囲気にあてられて口走った言葉は、思いのほか緊張を帯びていた。明日にでも指輪、買いに行こう。「ねえクリスマスだよ。ケーキも指輪もないのに。」機嫌を損ねた。夫婦になるにはとっておきの

          甘いもののはなし

          今週のこと〔1〕

           ゴキブリが出た。 一人暮らしを始めて1年とちょっと、なんの対策もしてなかったのに、なんとなく大丈夫な気がしていた、出た。  火曜日の19時、仕事を終えてご飯とお風呂も済ませて洗濯を待っていたとき、たぶんTwitterで好きな漫画の本誌のネタバレを調べて、来週新刊出るしなんて考えながらソファーから腰を上げたときだった、子供だった。色は薄かった。小さかった。  お化け屋敷なんかでもそうだけれど、自分より怖がっている人がいたら大丈夫な気がしてしまうアレで、いけるんじゃないかと思

          今週のこと〔1〕

          甘いもののはなし

          〈ショートケーキ〉 「ドはドーナツのド、レはレモンのレ」 高速道路。下りのSA。トイレの前。 父親の腕の中で呟くように歌うその子は、ポケモンより鬼滅の刃が好きなのだろうか。変わらないものはなんだろう。誕生日が苺のショートケーキなことくらいだろうか。 〈プリン〉 「花見は嫌い、花粉症にとってあんな辛い行事はないよ」そう言う彼女は、1日2回の薬を朝だけ飲んで外に出たがる子供みたいだった。 インスタで鶴舞公園を検索しながら僕が買ってきたなめらかプリンを食べる姿は、花より団子な子供

          甘いもののはなし