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音楽のはなし

〈Saucy Dog〉
「またいつか、またいつか、あなたに会えますように」
そう締めくくったあの優しい声を思い出しながら、カラオケでいつも、そこまで込みで真似してたあの声を思い出す。顔の似たYouTuberを見るだけで、緊張するとちょっと走るところとか、態度の悪い人に怒るところとか、全部を思い出す。好きなだけじゃ一緒に居られないって、現実はそんなことも言えないまま終わったりするけれど、新曲を好きだと言えるくらいになった。古参の顔してライブに行くこともできる。できるのに、泣きながら歩く。


〈クリープハイプ〉
「あー今の、あとで世界観カワイイとかって呟かれるんだろうな」
あのバンドが好きな女はやめとけ、なんて言われたあたりでどうでも良くなった。深夜から明け方にかけてを唄うのが上手すぎるのか、時間帯がそうさせるのか、どっちでも良かった。朝になったら恥ずかしくなるように、朝になったらまた都合よく会いに行ってしまう気がする。不機嫌丸出しに背を向けたことも、呼び止められなかったことも全部、どうでも良くなる気がする。


〈My Hair is Bad〉
「名前だけでも覚えて帰って下さい、なんて口が裂けても言わなかった」
夏のような冬のような春のような秋のような、そんな感覚だった。季節を選ばないのか人を選ばないのか、答えは分かっているようで分からないふりをした。自分だけじゃなくても、口だけでも、未来が見えなくても、そんなところさえブランドのように纏う彼には一生敵わない。500円の飲み放題はもう行かないけれど、美しくなった記憶は、時々ものすごく絶妙なタイミングでやってくるから、そんな自分を好きなだけだと言い聞かせた。


〈Hump Back〉
「青春終わったなんて思うなよ」
強くて優しいってこういうことなんだろうなと思った。こういう人が、彼の横に立つのだろうとも思った。大体何を聴いても思い出すのは一人で、その時点でもう、理想とは違う気がした。このエネルギーを、半分でも持って帰って、毎日浴びれば何か変わるかと本気で思った。忘れたころに青春だったと気づくように、失ってから気づくように、失う前に手に入れてもないような、そんな関係が青春だった、そう思いたい。

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