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エッセイ・思い出

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「生産性」というやっすい言葉

「生産性」というやっすい言葉

「生産性」という言葉は馴染みがある。
少なくともその概念自体に直接触れていなくても、社会が示す指標みたいなものだと受け止めていた。ほとんど無自覚に。だから私は20代、「生産性がない」「創造性がない」自分に対して後ろめたさを持っていた。それらは何も出産の有無の問題だけではなくて、社会に対して何も生み出せていない、寄与していないという意味で。どこかで役立たず、無価値だと思っていた。振り返ると胸が痛く、

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声

気づいたら私は「声」で人のことを判断している。見た目だけで人を判断することはあまりない。なぜなら声を聴けば、だいたいどういう人なのかわかるから。
いつも感動するのは幼児の声で、泣いていようが笑っていようが、どんなことを話していても、ものすごく清々しく聴こえる。うまく言えないが舌足らずなその声はとても真っ当な感じがある。人間の赤ちゃん(しかも他人)を正直そんなにかわいいと思わない。他人の子供に向かっ

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味方

味方

明日から職場に行くのが嫌で嫌で仕方ない。ノートに罵詈雑言を書き殴らなくてはおさまらない。この状態は、キャパのない頭にどんどんどんどん怒りが溜まり無秩序のまま混乱している状態。明確な理由がわかっているからこそ辛い。気持ちが晴れない。夕方頃から遠出してショッピングモールに向かう。空いてきたコーヒーショップに入り、本を読む。気持ちが落ち着いてきたら罵詈雑言を書く殴る。書いたり記すことは、美辞麗句であろう

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日記 ギラギラ

日記 ギラギラ

どうもこんばんは金曜日。金曜日の夜は好きだけれどまた夢の中を漂うように寝まくる休日が来る。バランスよく、とか、バランスが取れているってどういう状態なのだろう。自分にはよくわからない。とても疲れている。どうしてこんなに疲れているのに朝、起きていられるのだろうと思う。毎朝毎朝、憂鬱の繰り返し。
やっぱりどこかおかしいのだろうかと思いながら意地でも現実を生きているのだ、生きてやると思う。500円玉を握っ

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記録について

記録について

平素はサラリーマンなので1日の大半は賃金のためにこなさなくてはいけない仕事のことで頭がいっぱいである。スマホを見て情報を得ると、えっなにそれ、と感じることが多い。しかしそれらはものすごい速さで目の前を通り過ぎていく。なるべく記録しようと思っても、もう次の情報に揺れる自分がいる。目まぐるしすぎる。せめて端的にでも記録しようと思っている。忘れていくことは仕方ないとわかっているが、どうも瞬間を切り取ろう

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名前について

名前について

私は集団に属するとどうしても落ち着かなくなる。小学校高学年頃には既にグループ行動の居心地の悪さに気づいていた。移動教室などは10m先が目的地だとしても誰かと一緒に行動しなくてはいけない。「今日誰と遊んだか、行動したか」を親に毎日尋ねられるのはものすごくストレスだった。もともと詮索されるのが身内であろうと大嫌いで、子供らしくない変わった子供ではあったので親なりに心配していたのかもしれない。「移動教室

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打ってない 日記

打ってない 日記

FXとか全く興味ない。

仕事が予定通りに進まず、落ち込んだが冷静に考えてみると4月から変わったばかりだしそんなに目標高くやらなくて全然良い、と思う。「どうしてできない」の「どうして」という気持ちは自分を責めている。「自分を責めない」ことを目指しているのに反している。毎日苦手な朝に起きて歯を磨き職場に行けているだけでかなり頑張っている。しかし気分的にもウジウジ塞ぎ込みやすくなると大事な時にデータ

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Iくん

Iくん

中学生の時に衝撃を受けた文章があって、それはIくんの文章だった。論文かなにかそれらしきものを書かなくてはいけない課題に対して、文脈が広がるだけの物語が書いてあるIくんのそれは、要するに無茶苦茶なものであった。出題者の問いは完全に無視、全く答えになっていない。勝手気ままに自由な創作物語が書かれている。脈絡も何もないし脱線しまくっている。しかし伸び伸びと書かれたフリーダム過ぎる作り話に、私は衝撃を受け

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勧誘の子

勧誘の子

ドキュメンタリー映画ばかり見ていた時期があった。映画は長時間集中しなくてはいけないので気合いが要る。たくさんは観られない。だけどドキュメンタリー映画だけは積極的に観に行っていた。何がそんなに好きなのだろう。知りたいこと、知らなかったことが少しでもわかるからだろうか。上映後は時間があっという間に過ぎる。監督が抉りたい問題、登場人物のリアルな表情がストレートに映し出されるから好きなのかもしれない。

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