声
気づいたら私は「声」で人のことを判断している。見た目だけで人を判断することはあまりない。なぜなら声を聴けば、だいたいどういう人なのかわかるから。
いつも感動するのは幼児の声で、泣いていようが笑っていようが、どんなことを話していても、ものすごく清々しく聴こえる。うまく言えないが舌足らずなその声はとても真っ当な感じがある。人間の赤ちゃん(しかも他人)を正直そんなにかわいいと思わない。他人の子供に向かっては一応社交辞令で「かわいい」と言うが(でもよく考えたらそんなに言ってないかもしれない)私は赤ん坊の動きや造形より、声の清々しさ、その「真っ当さ」に感動することが多い。本当しかない世界を見ていて本当しか言わない、その声。
仰々しく嘘を話している人の声はいくらその人が大声で話していても覇気のようなものが全く感じられない。取り繕っているとわかると途端につまらなくなる。他者を脅す声音は最悪である。内容は入ってこなくても不快さが残る。
みんな本当の声で話せたら、この世からノイズと呼ばれる類がなくなるのではないか。
頭の中の声と話している声が一致したらとても嬉しい。叶わないことなのかもしれない。頭の中の声、そこにたどり着けば私は元に戻っていると言えるのかもしれない。私は前へ前へ進みたくない、内に内に戻っていきたい。
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