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RENAの軌跡

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シンガーソングライター 鳥居れなさんの連載エッセイを、まとめました✨ 幼少期や10代の頃を、感じたままに綴られています⏳ 語り口がユニークで、一篇の物語としても楽しめます📖
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#子供

50.ささきのじいさん

50.ささきのじいさん

小学生のころ、通学路に交通安全のおじいさんがいた。
みどり色のキャップをかぶって
時々、登校時間だけでなく
学年によって下校時間もばらばらなのに
帰り道にも子どもたちを見守っている時があった。

幾人か見守り隊はいたけれど、
ランドセル時代のれなちゃんには
1人だけ仲良しのおじいさんがいた。
何度も聞いたし、呼んでいた
あのおじいさんの名前を、
いま思い出せないのが悲しい。

思い返してみても本当

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44.鼓動

44.鼓動

子供の頃、母の背中に耳をくっつけて
大人のよくわからない会話を聞くのが好きだった。
話を聞いていたというよりは、音。
母の体の中で鳴っている声を聞くのが好きだったのだと思う

いつも聞いている声よりも、深く共鳴して聞こえる音と体温、かすかな鼓動とがセットになって、心地よいのであった。

私が5歳の時に両親は離婚した。
それから母は美容関係の店を開いた。
私にはふたつ年上の兄がいるので、当時2人の子

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18.兄妹と襖

18.兄妹と襖

子供には開けるのも閉めるのも、
少し力のいる襖だった。

子供部屋の6畳和室と、
テレビの置かれた居間とを仕切る襖

大人のお話と、子供の眠りとを仕切る襖

クリーム色の戸襖で横に一本くすみ緑の帯が入っていた
23歳の今、子供時代を過ごしたあの平家を思い出すと
「あの家好きだったなぁ」としみじみ感じる。

果たして何歳頃の記憶だか、思い出されるものは
バラバラに散らばっているので、それぞれ時期が

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