鳥居れな

はじめまして 曲を作って歌っています。 小さな記憶の欠片と、日々のつぶやきエッセイ。 …

鳥居れな

はじめまして 曲を作って歌っています。 小さな記憶の欠片と、日々のつぶやきエッセイ。 各SNSリンクはこちらからhttps://lit.link/renatorii

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44.鼓動

子供の頃、母の背中に耳をくっつけて 大人のよくわからない会話を聞くのが好きだった。 話を聞いていたというよりは、音。 母の体の中で鳴っている声を聞くのが好きだったのだと思う いつも聞いている声よりも、深く共鳴して聞こえる音と体温、かすかな鼓動とがセットになって、心地よいのであった。 私が5歳の時に両親は離婚した。 それから母は美容関係の店を開いた。 私にはふたつ年上の兄がいるので、当時2人の子供を抱えて店を立ち上げるなんて、相当の覚悟と裏の努力があったはず。 朝から夜遅く

    • 68. kuulei

      あたしのおでこに落ちかけて来たお月様 今日はいつもより寂しそう なんだか堪らなくって 窓を開けてこんばんはと呟いたの 何も言わずにただ見つめてくるから 貴方も寂しいのかなと思って 電話をかけたわ すぐに受話器から 今かけようとしてたって嬉しそうな声 あたしが泣いていると思ったなんて言うから きっと貴方もお月様を見ていたのね

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      • 67.うれしい通知

        今日は珍しく、5分おきに鳴る 大音量のアラームより先に目が覚めた。 普段なら片目をうっすら開けてアラームを止め、 直ぐにまた目を閉じるのだが 今朝は両目を開けてアラームを解除し 天井に伸びる光の筋を眺めながら 天国みたいだなと思った。 何か夢を見ていたはずなのだが、 あんまり綺麗な天井のせいで忘れてしまった。 起床後すぐに朝日を浴びると幸せホルモンが分泌されるという健康オタクな思考が急に呼び起こされてベランダに出てみると、まだ涼しい秋めいた朝の訪れにスキップしたくなった。

        • 66.追憶

          忘れないでいてほしい。 この身ひとつで生まれて この身ひとつで死ぬけれど あの世に持っていけるものがある。 それは思い出だと、教わった。 けれど この世にはそれすら奪っていく悪魔がいる。 大好きな貴方は、私のことをいつか忘れてしまうかもしれない 会いたい時に会っておかなくちゃ 次に「ただいま」を言う時「おかえり、よく来たね」ではなくて、 「どこの人かいね」と返されてしまうかもしれない。 そんなの冗談でも耐えられない 少しずつ分からなくなっていく。 貴方の作る野菜で私が

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          65.わがまま

          君のすべてが欲しいだって、 ずるいよね 奪えないよならないよ 心全部は渡せない 切り取って レンズ越しに 瞳の奥は何色 誰にも見せない正体 絶対なんてどこにもないじゃない わたしこれまで生きてきて それくらいのこと知ってる 信じたいだけ貴方のわがままを つま先だけで立っている 恥ずかしい 奪えないよできないよ 貴方全部はもらえない 急き立って わたし越しに 心の奥は何色 貴方だけが知っている 隠してばかりの正体 永遠なんてどこにもないじゃない 貴方もこれまで見てきた

          65.わがまま

          64.突き刺す詩

          先日友達と下北沢で飲んだ夜 音楽を聴く時、何を重要視しているのだろうかという話になった。 互いに好きな曲のメロディーやBメロのココのコードが…とか 思い思いに述べ合った後、 最終的にどの曲も、この歌詞が刺さる。というところに落ち着いた。 ライブハウスでブッキングイベントに出演して 出会わせていただいた方々で、この人の音楽が好きだと気付く時は 「この歌詞まるで自分に言われてるみたいだな」といつも思う。 それは書き手が自分に向けた言葉だったり、 もしかしたら、特定の相手に向け

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          63.泣いている

          ぼくの幸せのうらがわで 今日は誰かが泣いている ぼくの悲しさのうらがわで 今のあなたが幸せになるなら 望むことばかり叶ったり 思い通りが愛ではないと 小さな不幸のおかげで気づくのかしら もしも明日が来なくても 遠くで誰かが笑顔なら ぼくは何も欲しくはないと 今は思う。 少しヒリヒリする心に あなたがくれた思い出をぬりこんで あと少ししたらまた歩いてみる だいすきだよ 泣いている 泣いている 心が 誰かが 泣いている 泣いている 嬉しくて 誰かが 泣いている

          63.泣いている

          62.たぬき公園

          きのう揺らしたブランコは雨で濡れてしまったよ。 今日は何をして遊ぼうか。 と平気な顔で話しかけられたらいいけれど、 本当は言いたかったことがあるの。 悲しさのわけは分からないけれど、 君が泣くのは嫌だから 代わりに僕の痛みに変えて泣いておく。 僕は君じゃないのにね。 ごめんねも言えないまま帰っていく僕らは あのたぬき公園のブランコと同じ。 いつまで経っても 僕らは交互に揺れて どこまで行っても 平行線の空の下 一個の夜を超えて 雨に降られたブランコは 僕らの跡を洗い流

          62.たぬき公園

          61.ビジートーン

          どんなに言葉でつなごうとしても、 埋まらない溝は 灯を消したままのこの部屋に ひとりぼっちでしか繕えない 寂しい時に優しかった人を あの時と同じような今、思い出してみても 何も慰めてはくれなかった。 優しいところが好きなんだと思っていたけれど それはどうやら違ったみたいね。 氷みたいに少しずつ固まっていく 電話の向こうから伝えて欲しかった熱も 欲しがった言葉も この先もう二度とあなたの声で受け取ることはできない。 白く覚めた愛がそこにとどまっているだけ。

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          60.林檎ジュースとシミ

          一生懸命ココにこびり付いているのは〝シミ〟 引っ張られちゃいけないと思いながら、 昨日の夜から降り出した雨と同時刻に この一人暮らしの家の、居心地の悪さを発症した。 お医者様へ行こうにも、 自分では何が原因かわかりませんので 気色の悪い夢を見たことしか話せません。 今日は大雨警報が出ているらしいが、 わたしは自他共に認める大雨女なので 逆に元気になるのではダメなのでしょうか… 兎にも角にも、 わたしはこの家から今日は早く逃げたくて、 予定より4時間も早く出た。 リュッ

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          59.愛おしさ

          爪が伸びる 少し傷んだ刃の爪切りで、 ネイルを落とさないままパチリと挟む。 昨日の三日月にそっくりだね。 と紙に乗せたイエローの、爪のかけらを拾って君が笑う。 危ないよと言ったけれど、 さっきまでわたしの指の先にくっついていたそれを 可愛いと言うからおかしい。 愛おしさがじんわりと押し寄せる 爪が伸びるってかわいい。

          59.愛おしさ

          58.秘密基地

          一緒に隠れよう。 誰かに見つかりそうになっても、息を潜めて、 ここは僕たちの安全地帯。 木漏れ日の中に花びらで落書きをしようよ 悲しみの一粒も持って入れやしない、 ここは僕たちの安全地帯。 激しい雨に壁を打たれて萎れそうでも 大きな風に屋根を飛ばされそうになっても 手を繋いで、合言葉を唱えるんだ コスモトリビア…コスモトリビア… 世界中のみんなが心躍を踊らせている。 みんな子供にもどっていく 誰にも内緒の僕らだけのアジト。 一緒に隠れよう。 どうしても逃れられない傷みか

          58.秘密基地

          57.所在

          私は今どこにいるのかな。 ° ° 東京の片隅、一人暮らしの小さなアパート 1080×1920ピクセルの画面の中を泳ぐシーラカンス ディズニーランドに吹き荒れる台風の目の中 国分寺クウフクで旧友と舐めるラフロイグ 18:56 SL広場の木の下と折り畳み傘 北参道で白いコンバースの靴紐をちょうど結ぶところ 満開の桜の花びらに触れる霧雨は夢現 明け方4時のピアノと揺れるトルコランプ 慣れないワインと繰り返し光る江ノ島の灯台 ° ° 私は今どこにいるの ゜ ゜ きみこ

          56.長距離走

          ふたつ年上の兄は小学校4年生まで、ふっくらとしていた。 ところが5年生になった途端、母と私に決意表明かのように 「おれは今日から、お母さんとも、れなとも、もう風呂には入らない。」と断言し、みるみるうちにイケメンへと転身したのだ。 その頃のことは下記の記事をぜひ。 イケメンになってしまった兄は、妹とは違って運動神経がよかった。 幼馴染のたつやくんのお父さんが、空手の先生をしていたこともあり 兄は小さい時から空手教室に通っていた。 実は私も一瞬だけ空手を習いに行ったのだが、

          56.長距離走

          55.静寂との約束

          静寂には静寂の音がある。 静寂の音がうるさい日は心がひとりぼっちな時。 人間朝起きてから眠りにつくまで、ずっと考え事をしている 何をそんなに考えているのか思い返してみると、そんなに大した事ではないのか、大半覚えていない。 ただ選択をしていることも多いのだろう。 外側が静寂を貫いている間も、 内側の私は喋り続ける。 テーブルを拭きながら私が何を考えているか知らないでしょう? 階段を登りながら私が何を考えているか知らないでしょう? 踏切待ちの横顔がどんな感情なのか分からないで

          55.静寂との約束

          54.肉まん

          子どもの時、毎週末 母方の祖父母の家に泊まりに行っていた頃がある。 母方の祖父母はガラス屋さんで、母の弟の哲也も後を継いで一緒に暮らしていた。 わたしは自分の叔父である哲也が、子供の頃から大好きだった。 ぽっちゃり……と言うよりは、ぶってん!と言った感じ。 怒らないでね。 大きなトラックの運転が上手だったり、 ぶてっと黒い手でありながらガラスに綺麗な線をピーと引いたり、 あんなに大きな体なのに声が低くて小さくてごにょごにょ。 笑うと肩が揺れて、髭がじょりじょりしていて、動き