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RENAの軌跡

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シンガーソングライター 鳥居れなさんの連載エッセイを、まとめました✨ 幼少期や10代の頃を、感じたままに綴られています⏳ 語り口がユニークで、一篇の物語としても楽しめます📖
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2021年8月の記事一覧

21.右目

21.右目

中学2年の視力検査で絶望した。

それまで両目1.5を維持して来たはずの鳥居は
原因不明で突如右目だけが0.3になった。

左目の検査では、機敏に答えていた私が、
右目の検査にうつった途端
上からふたつ目の割と大きな丸を「…見えません。」
と答えると、
先生は「真面目にやりなさーい」と言ったが。
私は大真面目に「ん〜…見えません」なのでした。
何度やってみても、
あの黒い円のどこが欠けているのかが

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20.サリー

20.サリー

一緒に登下校していた のんちゃん ありちゃん
休み時間も、こっそり授業の時間も
いつも一緒にふざけていたクラスのスクワード、
昔からよく遊んでいた幼馴染のしゅんしゅん、
同じ班のお調子者、あんでぃー。

みんな面白くてだいすきだけど、
今も連絡を取ったり、
会ったりする仲の子はほとんど居ない
どこで何をしているかも分からない子の方が多い

小学3年生の鳥居れなは、兄が通い始めると同時に
どうせなら

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19.始発

19.始発

もう、くたくた に どろどろ に 
疲れ切って、前へやる自分の足の一歩一歩が
信じられないほど重たい時

ホームに滑り込んでくる救世主
人のいない、それにようやく乗り込んで
半ば落ち葉が枝から落ちるように
シートへと腰掛け、最寄りまでをただ揺られ待つ

人生で初めての始発は、少しの優越感と達成感
あとは、初めてピアスを開けた時のような
喪失のような悲しさがあった

帰るつもりでいたのに、逃した終電

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18.兄妹と襖

18.兄妹と襖

子供には開けるのも閉めるのも、
少し力のいる襖だった。

子供部屋の6畳和室と、
テレビの置かれた居間とを仕切る襖

大人のお話と、子供の眠りとを仕切る襖

クリーム色の戸襖で横に一本くすみ緑の帯が入っていた
23歳の今、子供時代を過ごしたあの平家を思い出すと
「あの家好きだったなぁ」としみじみ感じる。

果たして何歳頃の記憶だか、思い出されるものは
バラバラに散らばっているので、それぞれ時期が

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17.私のオレンジ

17.私のオレンジ

5歳 竹組 のびのびと成長していますが
クレヨンのピンクは私の背が伸びるほど、
どんどん短くなってゆきます。

お絵かき帳のまっしろなページには、
何を描いてみても不思議と必ずピンクが入っている。

12色入りのクレヨン。
オレンジ色はいつ蓋をあけても長いまま。

幼少期、オレンジが嫌いだった。

なぜかオレンジだけが気持ち悪くて、
男の子に交換してもらった。
もちろん、オレンジを渡して、ピンクを

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