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17.私のオレンジ

5歳 竹組 のびのびと成長していますが
クレヨンのピンクは私の背が伸びるほど、
どんどん短くなってゆきます。

お絵かき帳のまっしろなページには、
何を描いてみても不思議と必ずピンクが入っている。

12色入りのクレヨン。
オレンジ色はいつ蓋をあけても長いまま。

幼少期、オレンジが嫌いだった。

なぜかオレンジだけが気持ち悪くて、
男の子に交換してもらった。
もちろん、オレンジを渡して、ピンクをもらった。

でも、絵を描いて色を塗ろうとクレヨンの蓋をあけて
オレンジの居場所に長いピンクが収まっていると、
これはこれで何だかおかしくて気持ちが悪かった。
2列もピンクがあるとバランスが取れないのだ。

でも、5歳 竹組 鳥居れなには
一度追い出した、私のオレンジを
オレンジの好きなあの子にあげた、私のオレンジを
「やっぱり返して」とは言えなかった。

私のオレンジを引き取った彼は
あの12色の箱を開けても
何とも思わなかったのだろうか…

はじめて自分の絵の具を手に入れた時も、
やっぱりオレンジだけが何だか気色悪くて
一度もチューブの蓋をあけなかった。

今はどうかというと、
オレンジ色のお財布を大切に使っているし、
ぷつっとしたボブの髪色をオレンジに染めて
みかんのような見た目にしてみたり、
部屋の明かりは暖かなオレンジ色にこだわっている。

消え落ちた、オレンジを好きになる瞬間を
思い出せずにこれを書いている。

あの頃、はじいてしまった私のオレンジに
ずっとごめんねを言えずにいた。

あなたがいなくちゃ、この世界は描けないね
大きな夕陽も 春のポピーも 嬉しい気持ちも

ごめんね、ありがとう

私のオレンジ。

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