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rjm怪奇数奇譚

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怪奇数奇譚を集めました。
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#読書

怪奇数奇譚(其の拾)ー焚き火の蜃気楼ー

怪奇数奇譚(其の拾)ー焚き火の蜃気楼ー

塾の帰り道、一本の細い道路を歩いていると、焚き火をしているおじいさんがいました。

僕は、珍しそうにしながら横目で見て通り過ぎようとすると、おじいさんは手招きしてきました。

なんだろうなぁと思いながら近づくと、おじいさんは焚き火の中からアルミホイルで包まれたアツアツの焼き芋を渡してきました。

びっくりしながらも小腹をすかしていた僕は、喜んでおじいさんと半分こに分けて食べました。

そのうち玄関

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怪奇数奇譚(其の玖)ーお月見日和ー

怪奇数奇譚(其の玖)ーお月見日和ー

穏やかでよく晴れた夜の日、僕が望遠鏡を覗くと月が二つあった。

実際に見ると一つしかないはずなのに、望遠鏡の中では寄り添うように二つの黄色い月が並んでいた。

月にはちゃんとウサギもいて、杵と臼で餅をぺったんぺったんとついていた。

できあがった餅は、またうさぎがコロコロと手のひらで転がし一口ほどの餅を作った。

それを大きなお皿に乗せて、なんと月でお月見をしていた。

お互いの月を眺めながら、あ

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怪奇数奇譚(其の捌)ー人形人間ー

怪奇数奇譚(其の捌)ー人形人間ー

人間は大抵、生まれてすぐに名前をつけて貰う。
その名前を好む、好まざるに関係なく、当たり前のように生涯、何処へ行くにも持ち歩いて、初めからその名前が当たり前であるように振る舞い続ける。

話は横道に逸れるが、子供の頃、誰もが一度は手にしたことがある人形、これを手にした日、この人形につけられた名前を何の躊躇もなく口ずさむ。

名前ってなんだろうか?
人間は、自分を何かの枠に嵌められたり、決めつけられ

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怪奇数奇譚(其の陸)ー月に届かないー

怪奇数奇譚(其の陸)ー月に届かないー

夜、決まって月を眺める。
街灯の少ない僕の街は、星の降る街と言われている程、夜には満天の星が見える。そして、大きな月が空高く昇るのだ。
僕は生まれた時からここに住んでいるから、これが普通のことだと思っていた。でも、ここから離れている都会は街灯も人も多く、夜に空を見上げてもここまで多くの星が見えないそうだ。月もここより小さく、月明かりも薄いらしい。

先日ニュースになっていた変わった満月の日も、僕は

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怪奇数奇譚(其の伍)ー回る世界ー

怪奇数奇譚(其の伍)ー回る世界ー

世界が回る

僕も回る 回ってみる

さらに回る 世界が回る

あー

このまま回れば自転は僕を中心に回るかもしれない

夏の暑さが遠のき 冬が来るかもしれない

でもそろそろ気持ち悪い

反対に回ったら治るだろうか

春になった

桜 チューリップ 名前の知らない草花

モンシロチョウがひらひらと飛び 暖かな日差しが頬に当たる

夏をやり直すとは 如何様な

ああミステリー

怪奇数奇譚(其の肆)ー僕と天気決定士ー

怪奇数奇譚(其の肆)ー僕と天気決定士ー

明日は、雨になるだろうな。

開けた窓から流れる湿っぽい空気を感じながら、僕は夜空を眺めた。

ぼんやりと星が見えるが、雲が空を隠している。

夜空から、一本の糸が垂れてきた。
よく見ると白い物がぶら下がっている。

紙コップだ。

僕は背伸びして、それを手に取った。

「もしもし、聞こえますか?」

紙コップを耳に当ててみた。

「はい、聞こえます。こちらは空の天気決定士です。」

「天気決定士

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