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「あたり前」のクオリティが高すぎる街。〜りんご音楽祭主催・dj sleeperと歩く松本〜 【りんごよりみち】

 野外音楽フェスなのに、「街」に近いフェス、りんご音楽祭。りんごをきっかけに松本を訪れる人たちに、松本の街をもっともっと楽しんでもらうための本連載「りんごよりみち」。松本在住のりんご音楽祭出演アーティストと街を歩きます。

dj sleeper:長野県松本市で、2004年6月よりパーティーハウス『瓦RECORD』のオーナーを務めながら、DJとして活動。松本在住歴は20年以上。2009年秋、26歳からりんご音楽祭を始め、今年で15年目。 

 第一回のゲストは、りんご音楽祭の主催者であり、DJとしても活動しているdj sleeperさん。普段から出演アーティストのアテンドをするというsleeperさんと一緒に、松本の街を歩いてみました。


1.長野の名物を食べるならココ!大人数でも入りやすい「木曽屋」

dj sleeper アーティストのアテンドはだいたい木曽屋にするね。県外から来るアーティストに「何食べたい?」って聞くとみんな蕎麦って言うんだけど、蕎麦屋さんってあんまり大人数は入れないし昼しかやってなかったりするでしょ? ここは広いし、夜でも営業していて、メニューの種類も豊富だし、なによりおいしいんだよ!

萩原さん うちは創業が明治20年くらいで、木曽出身の方が開業したお店です。松本は城下町なので、街道筋のご飯屋さんとしてずっと営業してきました。昔は洋食なんかも出していましたが、今は、鯉やドジョウなどの川魚を中心に、蕎麦や馬刺しなど長野の名物を出しています。 

sleeperさんもいつも食べるという、信州味噌を使った田楽

dj sleeper 俺はいつも柳川定食(ドジョウ)と、鯉のあらいを頼むね。うちの子が小麦アレルギーなんだけど、木曽屋ならだいたいのメニューが食べられるからうれしいな。あとね、店員の方が折り紙がすごく上手で子供が喜ぶんだよ!

萩原さん 最近は海外からの観光客の方で、ベジタリアンの方やヴィーガンの方もちょくちょくいらっしゃいますね。

ーーりんご音楽祭の期間中は、お店に影響はありますか?

木曽屋さん うちは普段年代層が高めなんですが、若い人が増えますね。「今日はなんだか若い人が多いな、あぁそうかりんごの時期か」なんて思いますよ。前乗りしたり、りんごに行った翌日に観光がてら来てくださる方が多いです。

dj sleeper  せっかく松本まできたら、お客さんにはりんごに行くだけじゃなくて松本の街を楽しんでほしいんだよね。松本はいいお店がたくさんあるし、おいしいものが多いから。でもりんごの時期はどこも混んじゃうから、ほんとはりんご以外の時期にも松本に遊びに来てほしいなぁ。

2.セレクト古着の販売からリメイクまで。ビンテージストア「Monique(モニック)」

dj sleeper 「Monique」では、服を買うことも多いけど、お直しをよくしてもらってるんだよね。このパンツ、買ったばっかりなんだけど、ポケットのサイズを大きくしてもらえるかな? 携帯とかがよく落ちちゃうんだよ。

和泉澤さん うーん、これはアウトポケットだから直すのは難しいな。内側についていればなんとでもできるんだけど……。

dj sleeper がーん。俺の買う服って、だいたいかわいいけど機能性が低いんだよなぁ。「Monique」で直してもらえばいいやっていつも買っちゃうんだけど、これはだめかぁ。

ーーお店で扱っている服も、リメイクしたものが多いんですか?

景山さん 買い付けしてきたものもあるし、自分たちでリメイクしたものもありますね。

りんご音楽祭のリメイクTシャツの試作品。

dj sleeper 今、過去のりんごのグッズを「Monique」にリメイクしてもらう計画を立ててるんだよ。これが試作なんだけど、かわいく作り直してみんなに着てもらえたら最高だよね。今年のりんごで早速販売できたらいいなぁ。

ーーりんご音楽祭の開催期間中もお店は営業されていますよね。りんごっぽいお客さんは結構来ますか?

和泉澤さん 「昨日りんごだったんだろうな」ってお客さんは結構来ますね。町歩きついでに古着を見に来る方は多い印象です。

ーー自分も旅先で古着屋に行きがちかも。旅先だと、「ここでしか買えない!」ってつい買っちゃいます。

和泉澤さん たしかに。古着屋さんって、どこの街で行っても楽しいですよね。

3.のんびりお散歩できる、ちょうどいい神社「四柱神社」と女鳥羽川

sleeperさんのお散歩コース、女鳥羽川沿いの道。

dj sleeper 俺、川がある街が好きなんだよね。松本は市街地に「女鳥羽川」って川が流れてて、川沿いを当たり前に歩けるのが最高なんだよ。これだけ街中にあるのに、夏は蛍がいるの。

ーー街中で飲んだ帰りに川沿いを散歩したら最高だろうなぁ。

dj sleeper 女鳥羽川の近くにあるのが、この「四柱神社」。仕事が煮詰まってどうしようもなくなったときに、よく散歩に来るんだよ。派手すぎなくて、普段使いにちょうどいい神社って感じ。

ーー神社の普段使い、初めて聞きました。

「今年のりんご音楽祭もよろしくお願いします」とお祈りするsleeperさん。

dj sleeper えー、言わない?でも逆に、松本の街中は公園が少ないかもね。公園に行くノリで、四柱神社と松本城にみんな行くんだよ。凄い贅沢じゃない?

ーー松本城も普段からよく行くんですか?

dj sleeper よく散歩しに行くね。朝に松本城のあたりを歩くの、気持ちいいよー。松本城もさ、地元の高校生たちが当たり前にふらっとしてるんだよね。散歩がてら行く場所のクオリティが高いのって、豊かだよね

4.dj sleeperさんの拠点:松本のパーティーハウス「瓦RECORD」

dj sleeper 「瓦レコード」は、もともと俺が信州大学の学生だったときに、松本で遊びたい場所がなくて、「じゃあ自分で作ろう」って作った場所なんだよ。最初は学生の溜まり場だったんだけど、レコード屋になって、パーティーハウスに改装して、もう19年になるね。

ーーお店の改装は自分たちで?

dj sleeper そうだね。防音工事はさすがに外注したけど、あとは自分たちで作ったよ。機材も実は世界最高峰のものなんだよ。やりすぎでしょ?(笑)でも、やりすぎくらいがちょうどいいんだよ。飛距離が全然変わってくる。遠くまで飛ばせる人は、近くまででも飛ばせるから。概念が雑だってディスられたりもしちゃうけどね。

ーーsleeperさん自身がDJとしてここに立つこともあるんですか?

dj sleeper  あるよ〜。毎週末パーティーを企画してて、俺が出ることも多いね。あとは箱貸しをしたり、りんご音音楽祭のオーディション「RINGOOO A GO-GO」の会場になったりもするね。りんご音楽祭の期間中は、最終日の「夜の部」の会場にもなるよ。

・・・

りんご音楽祭主催者であり、高校生の頃からDJとしても活動しているsleeperさん。松本の町を案内してもらったあとは、音楽活動についてもじっくりお話を聞いてみました。

タイムテーブルを組むのはプレイリストを作る感覚?DJがオーガナイズするフェス「りんご音楽祭」

ーーりんご音楽祭で、数百組を超えるアーティストをブッキングするのは相当大変だと思うんですが、sleeperさんはDJ的にプレイリストを組むような感覚でタイムテーブルを組んでいるんですか?

dj sleeper 
そうだね。アーティストの都合ももちろんあるけど、DJ的にしている部分はあるな。よく「変なタイムテーブルだね」って言われるんだけど、みんな実際に当日ステージを見ると「観たらわかった」って言うんだよ。

ーーDJ的に組むとなると、どういうことを意識するんですか?

dj sleeper DJとして考えると、無難さより「驚き」のほうが大事なの。流れは変じゃないけど、全然違う雰囲気の曲が来た方が展開が面白い。結構、他のフェスを見ているとタイムテーブルが無難なんだよね。お客さんとしてはそっちの方が分かりやすいかもしれないけど、りんご音楽祭はそういう作り方をしていない。

ーーたとえばどういう組み方をするんですか?

dj sleeper ほっこりした弾き語り系のアーティストのあとに、下ネタを組み込んだ打ち込み系のアーティストを入れるとか。全然違う流れに持っていくことで、脳内がバグってテンションがあがるお客さんもいるし、逆に合わなくてそそくさと去っていく人もいる。そのカオスのある展開がいいんだよね。

「パーティーはマラソンと一緒」盛り上がり続けるよりも、ゆるく楽しいまま長くいられるように

dj sleeper それに、把握しづらい場の方が参加した人も当事者意識が持てると思うんだよ。うちがいわゆる有名アーティストをあんまり呼んでいないのもそういう理由。「すごいアーティスト」と「私」だと、ステージとフロアの間に溝ができちゃうでしょ。でも、いろんなアーティストが混ざるカオスな空間だと、お客さんも「自分もフェスの一部として活躍できているかも」って思える。「なんでかわからないけど楽しい!」の方が俺は好きで。

ーーたしかに、りんごはステージもフロアも一体になっている感覚がありました。そういう意識で作っていたんですね。

dj sleeper 成功しない時もたまにあるよ、でもだいだいうまくいってるかな。これは毎週自分がDJをしているから、フロアの感覚がある程度つかめているんだと思う。フェスもパーティーも、1日に2〜3回くらいワッて盛り上がる瞬間があればいいと思うんだよね。あとは、居心地のいい時間をお客さんは求めてるはず。DJは、フロアがいい感じになってきたら落とすか上げるかするんだけど、俺は落とすことが多いんだよね。

ーー落とす?

dj sleeper ずっと盛り上げてたらお客さんも疲れちゃうでしょ?盛り上がったタイミングで、あえてゆったりした雰囲気の曲を流すの。そうすると、みんなフロアからはいなくなるんだけど、選曲が悪くなければドリンク持って戻ってきてくれたりするんだよ。俺的にはパーティーはマラソンと一緒で、完走できたほうがいいと思ってるんだ。「瓦レコード」も運営しているからわかるんだけど、ただわって盛り上がるより、お客さんが最後まで長くいてくれた方がいい。

ーーなるほど。ゆるく楽しいまま、ずっといられるように。

コロナによって、表現者としてのアウトプットができずにいた3年間を経て

dj sleeper でも、りんごはまだ無名のアーティストが多い分、一日中いるお客さんってそもそも少ないけどね。松本市内で蕎麦食べてから昼過ぎに来るとか、夕方5時ごろには街に降りて街で飲むとか温泉行くとか、みんなゆとりを持ってフェスを楽しんでるね。松本の街のキャパ的にも、そうやってお客さんが分散するのはいいことだと思う。でも、そうやって見逃したアーティストが数年後に有名になって、「えっ、あの年のりんご出てたの!?俺もその日いたのに、早めに帰っちゃったよ!」って悔やんでる人は結構いるね(笑)

ーーなるほど〜。これからくるアーティストを探すつもりで聴いて周るのも楽しそうです。最後に、もう少しsleeperさんのことを聞かせてください。sleeperさんは、現在DJとしての音楽活動はどれくらいしているんですか?

dj sleeper 子育てをしている関係もあって、昔よりかなり減らしたね。イベントの主催と、DJとしての出演、それぞれ月に4〜5回くらいかな。でも、DJとしての活動はもっと減らしたいと思ってるんだよ。

ーーえっ、それはどうしてですか?

dj sleeper 正直、コロナが始まってから諸々の事務仕事が増えすぎて、新しいことが全然できなくてね。表現者としてアウトプットが少なくなってきたなと感じていて。だから、いいアウトプットができるようになるまではちょっとセーブして、インプットを増やしたいんだ。オーガナイザーとしても、実はこの三年で数える程しか新しい企画が出せていないんだよ。でも、事務作業がようやくひと段落ついてきたから、これからまた新しい企画をもっと動かしていきたいな。

ーーすでに新しい企画のアイディアはあるんですか?

dj sleeper 一つ考えているのは、松本市内のテラスがあるお店で、平日に月一パーティをしたいと思ってる。それから、アルプス公園でもりんご以外の企画をしたいなと思ってるんだ。自分の子供たちが遊びたがってるから、大人も子供も一緒に遊べるイベントを松本の街で作りたい。そういうことから、今年は新しく始めていきたいな。

ーーsleeperさん、今日はありがとうございました。また松本の街で会いましょう!

dj sleeperさんの松本おすすめスポット
・木曽屋
・Monique
・四柱神社
・瓦RECORD

▽「りんごよりみち」オススメマップはこちら!https://goo.gl/maps/9mZRSz8qCBxFL9SHA

▽dj sleeperのHP


取材・執筆:風音
撮影:Naka Hashimoto


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