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ロシア留学

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ことばを学ぶ

ことばを学ぶ

この場にロシア語への関心がある方がいらっしゃるかどうか分かりません。さあロシア語を学んで!だなんて押し付けがましいこともしません。

ロシア語は、少しでもロシア語を知っていると、ロシア語話者には心から喜ばれます。簡単な挨拶ひとつでも喜ばれるのです。一見意外に思われるかもしれませんが、ある意味、当たり前のようにも思ってしまいます。ほら、私たちだって、外国の方が日本語を少しでも知っていると嬉しくないで

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3月4日〜ロシアを去ったあの日を想って〜

3月4日〜ロシアを去ったあの日を想って〜

モスクワを去ってから今日でちょうど1年。トラブルに巻き込まれることなく、無事に帰国できたことを、今では喜ばしく思う。しかし1年前、成田空港に着いたときに私が発した最初の言葉は、「日本に着いてしまった」だった。

2022年3月4日。この日は、長い冬の終わりから春の訪れを祝う、マースレニッツァの真っ只中だった。

マースレニッツァとは、バターと小麦をたっぷり使って薄く焼き上げたブリヌィという円い形の

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ウクライナ侵攻から1年 〜1年前、モスクワにいた日本人の独り言〜

ウクライナ侵攻から1年 〜1年前、モスクワにいた日本人の独り言〜

あの日の朝は、晴れていた。雲ひとつなかった。澄み切った青空に雪をかぶった木々の白はよく映える。窓から差し込む朝陽はキラキラしていて、春の訪れを密かにお祝いしているかのようだった。

Доброе утро(おはよう)! 窓から見える優しいタッチで描かれた水彩画のような空(неба)は、добрая(優しい)という言葉がぴったりだった。

2時間前、隣の国で何が起きたのか、君は知っている。それでも、

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2月24日を前に思うこと〜1年前、モスクワにいた日本人の独り言〜

2月24日を前に思うこと〜1年前、モスクワにいた日本人の独り言〜

2022年2月22日、20時頃だっただろう。こびりついた汚れでくもった窓から覗く無愛想な縦長の建物、足元からはセントラルヒーティングからもわぁとした熱気、狭い机にパソコンを置く。注目の的は、右手にある加湿器の残りの水量。1時間程度遅れて始まった老害の話は、ロシア帝国の話から始まった。老害、だるい。聞き流していく。まって、これを本気で話していたら。ふと背筋が凍りついた。

翌日は穏やかだった。いつも

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生きづらさ

生きづらさ

今日も天気は曇り模様。気温がマイナス2桁の日々が続く。こんな天気のせいで毎日ずっと頭が痛い。だけどこの日は、心も痛かった。

カフェを出た。30分後に授業が始まるから急がなくちゃ。除雪作業が行き届いていない歩道は滑りやすい。ツルッと滑りそうになりながらもゆっくりと足を下ろして寮に向かう。5分ほど歩いた頃だろうか、信号が出てきた。ロシアの赤信号はとても長い。青信号が点滅しているのは40秒ほどだという

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С новым 2022 годом!

С новым 2022 годом!

なんでこんな時に限って信号に引っかかってしまうの!タイミングが悪い。間に合わないじゃないか。

青になるまであと23秒。時計の針は23時59分を指している。変わった瞬間に飛び出した。と同時に、ドドンドドン、花火が上がり始めた。あやと私にとって、ロシアでの年越しは、今回が最初で最後かもしれない。ゼーゼー息を上げて横断歩道を走りながら、あけましておめでとうを意味する、ス、ノーヴィンゴーダン!を叫んだ。

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空っぽの銀行

空っぽの銀行

雪が降り始めた。夕暮れ時が近く冷え込みが厳しくなった。寮に戻るような時間。それでもこの日は一心不乱にATNを巡り続けた。

どこのATMにも長蛇の列ができている。30分以上待ってようやく辿り着いた先には、ルーブル紙幣はなかった。代わりに待っていたのは、「残高不足のため引き出し不可」と書かれた取引画面。「そんなことある?」思わず動揺してしまう。現金を引き出せなかったことを思うとくらくらした。ふと周り

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コロナに戦争。それでも選んだ道に悔いはない。

コロナに戦争。それでも選んだ道に悔いはない。

昨年9月、2年半憧れていたモスクワ生活が始まった。

ロシアでは、欧米のワクチンが認められない。夏にワクチン接種を2度した私は、ワクチン未接種者として、行動を制限される生活を強いられた。

10月下旬に初雪が降り、長い冬が始まった。そんな冬が終わりを迎えた頃だった。「露、ウクライナ侵攻」そして「露、SWIFT排除」。留学生活は突然の終わりを告げた。

横浜の実家でオンライン授業を受ける生活が始まっ

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北のカメレオン

北のカメレオン

果てしなく広がる青い空。生い茂る緑の木々。土地を贅沢に使う道路。夏の終わりを楽しむ人々。壮大な空間に日常が溶け込んでいる不思議な感覚。初めてモスクワの街を散歩した日を思い出す。ここにこれから10ヶ月暮らすんだ!モスクワっ子になれているかな。念願の留学生活の始まりに胸を躍らせながら、この街の壮大な空間を楽しんでいた。

秋休み。コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウンの真っ只中だ。最高気温は1桁

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戦争と平和

戦争と平和

 8時を知らせるアラームで目を覚ます。窓から遮る太陽の光は眩しい。モスクワの空は絵に描いた様に美しかった。眠い目を擦りながらスマホの機内モードを解除。【露軍、宇へ軍事侵攻】。いつも通り眠りについて目を覚ましたら、戦争が始まっていた?意味が分からないし、分かりたくもない。空に目をやる。美しい。スマホに目を落とす。物騒な写真や動画が転がり落ちている。YouTubeでニュースを見る。どのメディアも「特別

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